神奈川県内科医学会 幹事、糖尿病対策委員、大和市医師会内科医会 会長、横浜市立大学医学部 臨床...
金城 瑞樹 先生
鶴間かねしろ内科クリニック 院長
朝倉 太郎 先生
医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授
内門 大丈 先生
2017年3月19日、現役医師・医大生で構成されたAVENUE Educationの皆さんが主催されたイベント『医学を志す』が、聖光学院にて開催されました。
これは現役の医師が、医学部を目指す中学生・高校生とともに講演やグループワーク、質疑応答を通じて医学とは何かを考えていくイベントで、第1回目となる今回は100名を超える参加者が集まりました。本記事ではこのイベントをリポートします。
AVENUE Educationは医学部を目指す中高生に対し、医師の持つ価値観を共有し、医師になるための明確なビジョンを持った教育を提供する、現役医師と医大生(主に横浜市立大学の学生)からなるグループです。SNS を使った医療情報の提供から、講習会・家庭教師指導による受験指導まで、医学部を目指す中高生をサポートしています。
今回のイベント『医学を志す』は、「医師や医学部について知ってもらい、明確な動機をもって医師を目指してほしい」というAVENUE Educationの想いから企画されました。
今回の会場となった聖光学院の中教室には、当初の予定を大幅に超える100名あまりの医学部を目指す中高生が集まりました。
はじめに、東林間かねしろ内科クリニック院長の金城瑞樹先生、鶴間かねしろ内科クリニック院長の朝倉太郎先生による開会の挨拶・イベントの趣旨の説明が行われました。
続いて今回のイベントのメインとなる、武部貴則先生(横浜市立大学)による講演が行われました。
父親が脳卒中で倒れたことがきっかけで医師を志すようになった武部先生は、横浜市立大学医学部に入学後アメリカに渡ります。現地で臓器移植を学ぶうちに、臓器そのものを再生する方法について興味を持ち、再生医学の研究の道へ進みました。
以下、武部先生の講演内容です。
小学生のときに父が脳卒中で倒れたことがきっかけで、医師になって人の命を助けたいと思うようになりました。横浜市立大学医学部に入学し、勉強を続けるなかで臓器移植に興味を抱きました。現代医学では対処できない臓器不全症(臓器の故障が元に戻らない状態)で亡くなる方も、臓器移植をすれば助けられるかもしれないと考え、移植手術を学ぶためにアメリカへ留学したのです。
しかし実際にアメリカの病院で、医師たちが脳死の若い女性の体からものすごいスピードで次々と臓器を取り出す様子を目の当たりにしたとき、私は非常にショックを受けました。
大きく切り開かれた臓器提供者の体から、臓器移植は死人が出なければ成り立たないという当たり前の現実を突きつけられたのです。
私は、臓器移植は「待ち」の医療であって、攻めの医療ではないことに気づき、なおかつ臓器移植に代わる治療法の開発が急務であると確信しました。
2006年に京都大学の山中伸弥教授率いるチームがiPS細胞の開発に成功したことを契機に、私の研究テーマである肝臓再生の分野においても、世界中でiPS細胞を用いた肝細胞の作成および移植に関する研究が行われました。
3つのプロジェクトを同時に行っていた私は、ある日それぞれのプロジェクトで余った3種類の細胞を培養皿に播いてみました。すると翌日、培養皿に視認できるモコモコしたものができていたのです。
これを顕微鏡で観察すると立体的組織ができていて、体内で実際に臓器ができるプロセスだということがわかりました。そこから私たちは実験を繰り返し、ついに肝臓の芽である肝原基をつくり出すことに成功しました。
しかし、細胞を実際に機能的な肝臓に育てるためには、非常にたくさんの肝原基が必要で、かなりの人とお金が必要になります。そこで私たちは現在、横浜市や様々な企業と連携してロボットシステムの導入を進めており、肝原基を大量生産できる体制を整えています。
今後も私たち横浜市立大学の研究チームが拠点となって企業や研究者と協力し、日本全体再生医療の実現を目指していきたいと考えています。
私は再生医学の研究のほかに『広告医学』という分野の普及も行っています。
病気のほとんどは生活習慣病です。そこで、人々の生活に密着した方法で人間の行動を変え、その結果病気を防ぐという活動をしていこうと考えました。
たとえばメタボリックシンドロームの方が着用することで現在の体型とその変化を可視化できる「アラートパンツ」を開発したり、ユニークなデザインを施した「上りたくなる階段」を設置したりと、自然に生活習慣が改善できるような取り組みを行っています。
今後も広告医学という新しい医学を日本全国に普及させていきたいと考えています。
参考:デザインの力で医学を伝える―第5回広告医学研究会(ADMEDCAFE)イベントレポート
さて、皆さんは『セレンディピティ』という言葉をご存知でしょうか?
セレンディピティとは、偶然みつけてきた幸運を掴みとるという意味です。セレンディピティという幸運の産物によって、私はiPS細胞からミニ肝臓(肝芽)をつくることができたといえるかもしれません。
しかし、ただじっと待っているだけではセレンディピティには出会えません。そこで私はセレンディピティに出会うため、「バックキャスティング」と「ラディアルシンキング」という方法を大切にしています。
バックキャスティングとは、未来に目標を設定し、そこから逆算して現在すべきことを考える方法です。たとえば皆さん(中高生)の場合、医学部に合格するという目標を設定して、今何をすべきかを考えますね。医学部合格ももちろん大事ですが、できるだけ、さらに大きな目標を設定してください。
一方、ラディアルシンキングという考え方は、バックキャスティングと相反するかもしれません。ラディアルとは『放射状の』という意味です。つまりラディアルシンキングとは、軸がぶれても構わないので、幅広い視点を育みながら多面的に物事を考えることを指します。
皆さんもぜひ、バックキャスティングとラディアルシンキングというふたつの考え方も意識して、セレンディピティに出会ってほしいと考えています。
武部先生の講演後、中高生が6、7人ごとのグループに分かれ、『iPS細胞を再生医療以外でどのように活用できるか?』をテーマにグループワークを行いました。
グループワークでは、参加者の皆さんが話し合ってテーマを決め、時間をかけて様々な意見を出し合いました。その後、グループごとに模造紙に意見をまとめ、全体で意見発表を行いました。グループワークの経験もなく、ほとんどが初対面という中高生達でしたが、活発に議論は進んでいきました。
発表では、『iPS細胞で古生物を再生させる』『介護ロボットをつくる』『新たな臓器を開発する』など、斬新な意見が出されました。武部先生をはじめ医師の皆さん、医大生スタッフの皆さんも、中高生の柔軟な発想による意見に驚いていました。
グループワーク後は、内門大丈先生(湘南いなほクリニック院長)、井上祥先生(株式会社メディカルノート)、米澤将克先生(災害医療センター)の3名の現役医師からお話がありました。
それぞれの先生から、医師としての働き方、これから医師を志すにあたって大切な心構えについて講演があり、参加者の皆さんは真剣に聞き入っていました。
医学部を目指す中高生にとっては有意義な時間になったのではないでしょうか。
内門先生『なぜ医学部を目指しているのか、なぜ医師になりたいのかをしっかり伝えられるようになってほしいです。』
井上先生『常に好奇心・探究心をもち続けてほしいと思います。受験勉強は努力するマインドを身につけるよい機会になるので一生懸命取り組んでください。』
米澤先生『医師として働くことは皆さんが思っている以上に大変なことです。どんな医師になりたいのかを考え、しっかりとした目標を持ってほしいと思います。』
最後に参加者の皆さんがAVENUE Educationの現役医大生と交流する時間が設けられました。
AVENUE Educationは横浜市立大学の学生が中心となって運営していますが、今回は東京医科大学、東京慈恵会医科大学などの学生も参加しました。
参加者の皆さんは医大生に大学でのキャンパスライフや受験勉強について熱心に質問していました。
第1回目の『医学を志す』では、参加者の中高生が現役医師・医大生と交流し、医学や医師という職業について深く考える貴重な機会となりました。
今回講演を行った武部先生は『夢に向かって一直線に進むことよりも、若い時期にリスクを恐れずいろんなことに挑戦してほしい。』と中高生の皆さんにメッセージを送りました。
『医学を志す』イベントは8月20日(日)に同じく聖光学院で、第2回の開催が決定しています。次回は今回参加された内門大丈先生の講演、現役医師・医大生が交流できるプログラムが予定されています。興味のある中高生の方々は参加してみてはいかがでしょうか。
お問い合わせはAVENUE education まで
電話: 070-5556-7266 電子メール: education@avenue-jp.co.jp
神奈川県内科医学会 幹事、糖尿病対策委員、大和市医師会内科医会 会長、横浜市立大学医学部 臨床教授、東林間/鶴間 かねしろ内科クリニック 理事長、杏林堂クリニック 院長
鶴間かねしろ内科クリニック 院長
医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授
金城 瑞樹 先生の所属医療機関
朝倉 太郎 先生の所属医療機関
医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授
日本精神神経学会 精神科専門医・精神科指導医
1996年横浜市立大学医学部卒業。2004年横浜市立大学大学院博士課程(精神医学専攻)修了。大学院在学中に東京都精神医学総合研究所(現東京都医学総合研究所)で神経病理学の研究を行い、2004年より2年間、米国ジャクソンビルのメイヨークリニックに研究留学。2006年医療法人積愛会 横浜舞岡病院を経て、2008年横浜南共済病院神経科部長に就任。2011年湘南いなほクリニック院長を経て、2022年4月より現職。湘南いなほクリニック在籍中は認知症の人の在宅医療を推進。日本認知症予防学会 神奈川県支部支部長、湘南健康大学代表、N-Pネットワーク研究会代表世話人、SHIGETAハウスプロジェクト副代表、一般社団法人日本音楽医療福祉協会副理事長、レビー小体型認知症研究会事務局長などを通じて、認知症に関する啓発活動・地域コミュニティの活性化に取り組んでいる。
本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。
なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。