神奈川県内科医学会 幹事、糖尿病対策委員、大和市医師会内科医会 会長、横浜市立大学医学部 臨床...
金城 瑞樹 先生
鶴間かねしろ内科クリニック 院長
朝倉 太郎 先生
医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授
内門 大丈 先生
2019年3月24日(日)に、医学部を目指す中高生のためのイベント「医学を志す」が、聖光学院で開催されました。5回目の開催となった今回は、福井大学 医学部第二内科准教授/認知症医学推進講座准教授で、日本神経学会が認定する神経内科専門医である濱野忠則先生の講演会と、グループワーク、医学生との個別相談会などが行われ、医師という職業について理解を深める一日となりました。
本記事では、このイベントの様子をお伝えします。
前回の「医学を志す」のレポートはこちらをご覧ください。
はじめに、AVENUE Educationの朝倉太郎先生から開会の挨拶がありました。
朝倉先生:
本日のイベント「医学を志す」は、医学部を目指す中高生を応援する私たちAVENUE Educationという団体が主催しています。私たちは「患者様は私達と同じ家族の一員」という理念を掲げています。その理念に共感し、よりよい医療を共にめざす医療従事者を増やしたいと考えています。
さて、日本で医師になるためには医学部に入学する必要があります。つまり、大学受験のときには、医師になることを決断していなければいけません。しかし皆さんは医師がどのような仕事をしているか、さらにはどのような思いで仕事をしているかご存知でしょうか。
私たちは、皆さんに医師という職業についてより深く理解してもらい、医師への志を具体的なものにして欲しいと考え、この「医学を志す」というイベントを始めました。
開会の挨拶に続き、AVENUE Educationの代表を務める金城瑞樹先生から医師になりたいと思ったきっかけについて、内門大丈先生からどのような医師を目指して欲しいかということについて、お話しいただきました。
金城先生:
AVENUE Educationの代表を務める金城です。私は、東林間・鶴間・小田原にある3つのクリニックを休みなく巡回し、診療しています。
私は、子どものころ小児喘息を患っており、医師にたくさんお世話になりました。そうした経験から、医療に憧れを抱き、将来自分が恩返ししたいと考えたことから、医師になることを目指しました。
内門先生:
私からは、本日の講演会の講師でいらっしゃる濱野忠則先生をご紹介します。
濱野先生は「メイヨー・クリニック」 というアメリカの病院で、神経科学部門客員研究員として研究に没頭され、現在は福井大学の医学部第二内科准教授と、認知症医学推進講座准教授を併任されている先生です。診察と並行して、アルツハイマー病タウ蛋白の研究をライフワークとされています。
僕は、皆さんに濱野先生のような医療に対して熱意のある医師になってほしいと思っています。医者になるからには、臨床も、研究も欲張って、自分が目指す医療を実現させることに全力で取り組んでください。
濱野先生:
私は脳神経内科医です。今日は私が医師を志した理由や、私の仕事の内容をお話したいと思います。
私は高校2年生のときに司馬遼太郎の「竜馬がゆく」という本を読みました。「竜馬がゆく」には、幕末の医師は、医療にあたるだけではなく、文化人や政治家としての役割も果たしていたことが書かれてありました。そこから医師という仕事に興味が湧きました。
大学に入学してからは、医学の勉強よりも軟式野球部の活動に奮闘する日々を過ごしていました。ようやく医学に目覚めたのは、大学4年生のときです。病気の遷移を勉強して形態学的に学習する病理学の教授が、「ひとつでも知らない病名があったら、それはちゃんと授業を受けたことにならない」とおっしゃっていました。病理学の試験に頭を抱えていた私でしたが、あるとき漫画「ブラックジャック」を床屋さんで読む機会がありました。すると「ブラックジャック」を読んだおかげですべての病気の説明ができるようになり、これまで以上に医学に興味を持つようになりました。さらに診療に入ってからは、医学の面白さに覚醒しました。
脳神経内科を選択したのは、脳神経内科の診察で行う視診・打診*などの医学的他覚所見**が面白いと感じたからです。また、脳神経内科は手技的な要素が少ない診療科であり、不器用な自分に合っていると感じたからです。
打診…医者が患者さんの胸や背などを指先や打診器でたたき、その音で診察すること
*医学的他覚所見…医師が視診、打診や画像診断、理学的検査、神経学的検査などによって症状を裏付けることができる異常所見のこと
私の仕事の一つは臨床です。脳神経内科医として患者さんの診療にあたっています。脳神経内科は、意識障害、頭痛、めまい、失神、力が入りにくい、手が震える、などのさまざまな症状の患者さんがいらっしゃる診療科です。脳神経内科にいらっしゃる患者さんで一番多い病気は脳卒中、次に認知症です。また、パーキンソン病や脊髄小脳変性症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)といった指定難病の診療も行います。
脳神経内科の診断では、まず患者さんのお話を聞いて診察をします。さらに画像診断などを行い、最終診断が出たら治療を行います。慣れてくると患者さんの顔を見ただけで、ある程度診断の予測をつけることができます。たとえばパーキンソン病の患者さんは、無表情でまばたきが少なくなる仮面用顔貌という特徴がみられます。筋強直性ジストロフィーの患者さんは、頬がこけて上まぶたがさがり、首の筋肉が痩せているなどの特徴がみられます。また、筋の腱を叩いて反射をみることで診断することもあります。
このようにして患者さんに正確に診断をつけ治療を行うことが、私の一つ目の仕事です。
私は臨床の傍らに、アルツハイマー型認知症の基礎研究を行っています。日本では高齢化が著しく進行し、認知症の患者さんが増加しています。認知症の患者さんのうち、およそ半数はアルツハイマー型認知症の患者さんといわれています。今後もさらに増えるであろうアルツハイマー型認知症の患者さんを、なんとかして救いたいと思い日々研究にあたっています。
現在は、アルツハイマー型認知症の一因となるタウ蛋白という物質を、薬物療法によって抑制する方法について研究しています。このような研究活動が、私の二つ目の仕事です。
福井県は、2011年から「福井県低年齢認知症検診」という取り組みを行っています。これは65歳以上の福井県民に対して、認知症を簡易チェックする用紙を郵送しチェックの結果が陽性だった方に受診を促し、認知症の早期発見と早期治療を促す取り組みです。
また福井県の医師に対して、認知症を専門としていない医師にも認知症の知識をつけてもらうため、「かかりつけ医認知症実践研修」も行っています。
このように福井県では認知症に関する取り組みを行っており、医師である私もこの取り組みに携わっています。これが、私の三つ目の仕事です。
私の高校時代のクラスメイトに、ある模試の成績で全国1位になったほど頭がよい人がいました。彼は一流の大学を卒業してサラリーマンになりましたが、50代になった現在、「会社にいても、もう面白いことがないから、早期退職を考えている」と彼はいっていました。私は彼の考えに共感できませんでした。仕事を辞めるなんて思いつかないほど、いまの自分の仕事を楽しく感じています。
先にお話ししたように、私は脳神経内科医として診療や研究などにあたっていますが、ほかにも内科救急のインストラクターや、救命措置講習会の講師も行っています。さらに、パーキンソン病患者さんを対象に、悩みを聞いたり、体操をしたりする「ふれあいの会」も開催しています。ほかにも多様な活動をしており毎日をとても楽しんでいます。
医師になると、きっと楽しいことがたくさん待っていると思います。医学部に合格して、私たちの仲間となる日を待ち望んでいます。皆さん頑張ってください。
濱野先生による講演のあとは、グループワークが行われました。テーマは、「認知症の方が安心して暮らせる街」です。医学生のサポートを受けながら、中高生たちは自分自身の経験をもとにしたり、スマートフォンやタブレット端末を使って情報を集めたりしながら、積極的に意見を出し合い活発な議論をしました。
グループごとに、意見を模造紙にまとめた後に、各グループによる意見発表会が行われました。
意見発表会では、「クリニックなどの開業医や訪問診療を活用して診察できる機会をつくることで、自分の症状を気軽に把握しやすくする」という案や、「安心して生活できるように、イベントを頻繁に開催して近隣住民との交流を深める」という案など、医師も感心するほど具体的な案が、数多く発表されました。医師からも、発表された案についての感想や、その案にした理由についての問いかけなどがあり、意見発表会はとても盛り上がりました。
グループワークのあとは、横浜市立大学医学部 医学教育学主任教授である、稲森正彦先生からのお話がありました。
稲森先生:
医師の仕事を想像すると、診療のイメージが強いかと思います。しかし、濱野先生の講演にあったように、診療だけが医師の仕事ではありません。医療というのは、生活のいたる部分に深く結びついています。研究や臨床などのさまざまな要素を集合体にしたものが医療である、ということが理解できたのではと思います。
医療を構築するさまざまな要素の部分で、今後皆さんに多いに活躍していただけたら嬉しいです。
最後に、医学生と中高生との交流・個別相談の場が設けられました。中高生の相談に応じる医学生は20名を超え、なかには高校生の頃に「第1回 医学を志す」に参加した医学生もいました。中高生にとっては年齢の近い医学生に、直接質問できる貴重な時間です。先ほどの発表のときより緊張がほぐれた様子の中高生たちが、医学生に対して、受験や大学生活の様子などについて活発に質問していました。
朝倉先生:
今回の「医学を志す」では、医師がどのような思いでどのような仕事をしているかを、濱野先生のお話を通して理解していただけたと思います。さらにグループワークでは、医師になるという同じ目標をもった同世代の方と意見を交わすことで、よい刺激を受けたのではないでしょうか。
みなさんが医学部に入学され、何年後かに医学生としてこの場に参加していただけたら嬉しいです。がんばって勉強してくださいね。
次回の「医学を志す」は、大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科 教授である澤 芳樹先生をお招きします。現役の医大生による講演や交流会、個別相談も開催予定です。
開催日程は2019年8月18日 (日)で、今回と同様に聖光学院にて行います。
ポスターのQRコードからLINE@に登録し、メッセージを送ることで申し込みができます。医学部進学を目指している中学生・高校生の参加をお待ちしています。
神奈川県内科医学会 幹事、糖尿病対策委員、大和市医師会内科医会 会長、横浜市立大学医学部 臨床教授、東林間/鶴間 かねしろ内科クリニック 理事長、杏林堂クリニック 院長
鶴間かねしろ内科クリニック 院長
医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授
金城 瑞樹 先生の所属医療機関
朝倉 太郎 先生の所属医療機関
医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授
日本精神神経学会 精神科専門医・精神科指導医
1996年横浜市立大学医学部卒業。2004年横浜市立大学大学院博士課程(精神医学専攻)修了。大学院在学中に東京都精神医学総合研究所(現東京都医学総合研究所)で神経病理学の研究を行い、2004年より2年間、米国ジャクソンビルのメイヨークリニックに研究留学。2006年医療法人積愛会 横浜舞岡病院を経て、2008年横浜南共済病院神経科部長に就任。2011年湘南いなほクリニック院長を経て、2022年4月より現職。湘南いなほクリニック在籍中は認知症の人の在宅医療を推進。日本認知症予防学会 神奈川県支部支部長、湘南健康大学代表、N-Pネットワーク研究会代表世話人、SHIGETAハウスプロジェクト副代表、一般社団法人日本音楽医療福祉協会副理事長、レビー小体型認知症研究会事務局長などを通じて、認知症に関する啓発活動・地域コミュニティの活性化に取り組んでいる。
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