院長インタビュー

地域住民の皆さんに寄り添う医療を提供するために変革を進める佐野厚生総合病院

地域住民の皆さんに寄り添う医療を提供するために変革を進める佐野厚生総合病院
佐野厚生農業協同組合連合会 佐野厚生総合病院 院長・透析センター長・臨床研修プログラム責任者指導医、慶應義塾大学客員教授(医学教育統轄センター)、慶應義塾大学非常勤講師(内科学教室) 村上 円人 先生

佐野厚生農業協同組合連合会 佐野厚生総合病院 院長・透析センター長・臨床研修プログラム責任者指...

村上 円人 先生

目次
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佐野厚生農業協同組合連合会 佐野厚生総合病院(以下、佐野厚生総合病院)は、栃木県佐野市に位置しています。1937年に前身の医療利用組合連合会 佐野病院の開設以来、時代に応じて、佐野市の中核病院として医療を提供することで地域に貢献してきました。

同院はさらなる躍進を遂げるため、2017年に村上円人先生を院長に迎えました。地域住民の皆さんに寄り添う医療提供を目指す同院の新たな取り組みについて、村上円人先生にお話を伺いました。

地域住民の皆さんへの貢献を第一に変革を進める佐野厚生総合病院

佐野厚生総合病院 外観
佐野厚生総合病院 外観

1937年に前身病院の医療利用組合連合会 佐野病院を開設して以来、当院は一貫して地域住民の皆さんに必要とされる医療提供に邁進してきました。2017年からは行政や佐野市医師会との新しい連携をはじめて、有病率の高い病気の診療や災害医療などに力を入れて取り組み、病院機能拡充を図ることで病院改革を進めてきました。加えて、私が院長に就任以降、病院内部では主要職員とのヒアリングや現場視察による評価に基づき、部門の再編を行い、小回りの利く組織へ改革しました。その取り組みのひとつとして、2017年には、人材育成のための研修センターを立ち上げや、新専門医制度の日本内科学会基幹病院として職員の教育・研修体制の強化を図っています。2019年には医師の増員も進み、内科専攻医が5名に、腎臓・内分泌・代謝内科、泌尿器科、呼吸器外科、精神神経科、皮膚科、放射線診断科に常勤の医師が新たに赴任しました。透析センターは、慶應義塾大学から出向いた内科の医師の3名体制となり、VAIVT(Vascular Access Intervention Therapy)と呼ばれる血管内治療も新たにはじまっております。

当院は、行政と緊密な連携を行っています。2019年1月には、佐野市市議会議員の方を対象に院内研修会を開催しました。このような取り組みが、佐野市の特定健診の無料化に結び付きました。今後は、認知症疾患医療センターの取得を目指していきます。また、地域の医療機関との連携強化にも尽力し、佐野市医師会や佐野市内の急性期病院との連携協議会、市民公開講座の定期開催を開始しました。

地域に求められる医療提供の推進

当院は、地域の中核病院として行政と調整した「公的医療機関等2025プラン」の医療計画に基づき、5疾病5事業を中心に、高度急性期および急性期医療の維持・向上を行っています。5疾病5事業とはそれぞれ以下を指します。

5疾病

健康を保持するため特に継続的な医療提供が求められる病気を指します。

具体的には、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患が該当します。

5事業

救急医療等確保事業と呼ばれる、医療の確保に必要な事業のことです。

こちらは、救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療を指します。

佐野厚生総合病院 内観
佐野厚生総合病院 内観

救急医療、周産期医療、小児医療、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、精神疾患は特に地域での医療ニーズが高い病気です。当院は佐野市の中核病院として多くの救急患者さんを受け入れており、2016年度には3702件の救急車を受け入れた実績があります。

一方、診療体制の補強に取り組んでいる領域が、5疾病に含まれるがんと糖尿病の診療、5事業に含まれる災害医療、へき地医療です。現在、取り組んでいる領域はさらに注力し、へき地医療に関しては行政と調整し、歩みを進めてまいります。

また、泌尿器科と呼吸器外科に新たに医師を迎えて、がん診療の充実を目指します。

災害医療では、2018年に栃木県DMATの研修を終え、現在新たな事業継続計画の作成に取りかかっています。慶應義塾大学医局からの日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医が赴任し、糖尿病チームの活動が始まりました。

このように病院を挙げて5疾病5事業全体に取り組み、地域医療を担う病院となれるよう尽力しています。

次では、消化器内科と呼吸器内科でのがん治療と、糖尿病チームによる糖尿病治療、脳卒中治療などについてご説明します。

消化器内科によるがん治療

消化器内科では、幅広い消化器がんに対応し、特に内視鏡による消化器がんの早期発見と上部および下部消化管の早期がんに対する内視鏡的治療に力をいれています。カプセル内視鏡を用いた小腸がんや大腸がんなどの病気の早期発見にも取り組んでいます。

カプセル内視鏡による検査は、従来の内視鏡検査に比べ痛みが少なく、患者さんの体の負担が少ないことが特徴です。しかし、病変が見つかった場合にその部分の採取や切除を行うことができないという難点もあります。詳しくは、当院に勤務する日本消化器内視鏡学会認定の消化器内視鏡専門医にご相談ください。

呼吸器内科を中心にした肺がん治療

呼吸器内科では、肺がんを中心とした呼吸器の病気の診断と治療を行っています。肺がんは大きさや進行度などによって、手術適応かそうでないかが分かれます。佐野市の特定健診受診率は2018年時点では低いため、肺がん診断時は進行例が多い特徴があります。手術適応の患者さんは、呼吸器外科に速やかに引き継いで胸腔鏡手術や開胸手術を行います。手術適応外の肺がん患者さんに対しては、化学療法、放射線療法などの治療や緩和ケアなどを行っています。佐野市の特定健診無料化によって、肺がんの早期発見・早期治療が期待されています。

また、緩和ケアに関しては、緩和ケアチームを組織し、医師・薬剤師・日本看護協会認定の緩和ケア認定看護師・臨床心理士など幅広い職種の職員で構成されています。

当院は、栃木県がん診療連携拠点指定病院として、がんの治療と同様に、治療に伴う体の痛みや心の負担を和らげる緩和ケアの提供にも尽力いたします。

健康の維持・促進に努める糖尿病チーム

糖尿病は、全身にさまざまな合併症を引き起こす病気です。当院では、患者さんの健康の維持・促進を図るためにも、糖尿病の治療に励んでいます。

その取り組みの一環として、糖尿病チームを立ち上げました。糖尿病チームは、日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医をはじめ、看護師、管理栄養士など多種職で構成されております。多岐にわたる診療科の入院患者さんの糖尿病診療に横断的にかかわっています。

糖尿病チームで活躍するスタッフたち
糖尿病チームで活躍するスタッフたち

糖尿病チームでは、地域包括ケア病棟での患者さんが糖尿病について学ぶ教育入院の実施や、管理栄養士による食事指導などを行っています。また、栃木県主催の健康づくりイベントにも参加し、地域住民の皆さんに広く糖尿病について知っていただく機会を設けています。

高齢化が進む社会では、糖尿病患者さんは増加の一途をたどるともいわれています。当院では糖尿病チームを組織することで、治療の提供に留まらず情報発信による予防にも積極的に取り組んでいきます。

DMATを中心とした災害医療の提供

栃木県から要請を受け、当院は災害医療に強い病院を目指すべく、DMATの取得に励んでいます。DMATとは、災害発生から48時間以内で活動する医師、看護師、事務職員から構成されたチームです。

当院は、2018年に養成研修に参加し、栃木県DMATの1チーム目の研修を終え、2019年には2チーム目の栃木県DMAT研修の修了と、栃木県DMAT指定病院を目指します。

栃木県DMATの活動範囲は栃木県内の災害に限定されます。今後は、日本DMATの資格を取得し、広域に災害派遣できるチームを育成することで、県境を越えた群馬県館林市周辺の災害活動も担うことを行政から期待されています。当院は、いかなるときも災害医療を提供できる病院づくりに注力いたします。

DMATで活躍するスタッフたち
DMATで活躍するスタッフたち

脳神経疾患センターの設置を目指して

くも膜下出血や脳梗塞などの脳神経疾患は、緊急の手術や処置を必要とする病気です。脳神経外科では、これらの病気の緊急対応をしています。また、糖尿病チームと協力体制を敷くなど、脳神経疾患の予防にも力を入れています。

当院の新たな取り組みとして、将来の神経内科の常勤医を確保した後、脳神経外科との連携を強化し、脳神経疾患センターを設置する構想があります。現在は、自治医科大学の協力を得ながら、技術向上や体制整備に努めています。

脳神経疾患は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病も原因として大きく関与しています。そこで、2018年には脳卒中の市民公開講座を開催しました。これから、よりいっそう脳神経疾患の予防や医療情報を発信する取り組みを積極的に行っていきます。

佐野厚生総合病院のさらなる発展に向けた整形外科での取り組み

先ほどお話したように、当院では5疾病5事業以外にも地域住民の皆さんから求められる医療を提供したいと考えています。当院では、誰もがなりうる可能性のある整形外科領域に対する診療に力を入れていきたいと考えています。

整形外科で扱う病気は、骨折などの外傷、関節や脊椎の病気など多岐にわたります。また、若い方からご高齢の方まで、誰もが必要とする可能性がある診療科です。

当院の整形外科は慶應義塾大学病院の医療連携協力医療機関であり、整形外科領域全般の診療から手術まで対応しています。そのなかでも脊椎領域に力を入れており、脊柱管狭窄症に対する手術を強みとしています。

脊柱管狭窄症は、背骨の中にある脊柱管が狭くなることで中の神経が圧迫され、足の痛みやしびれなどが生じる病気です。脊柱管狭窄症の治療は、薬物治療やコルセット装着による保存的治療が基本です。しかし、保存的治療で症状の改善がみられなかった患者さんに対しては手術を行います。

手術後に症状が落ち着いた患者さんは、原則として地域の連携病院での治療となります。このように当院は、近隣の医療施設と連携体制の確立によって、治療を途切れることなく提供していきます。

村上円人先生からのメッセージ

村上先生

これからの医療を担う若手医師の皆さんへ

若手医師の皆さんには、これからの医療を担う医師として、日本の医療を牽引するリーダーになっていただきたいです。日本の医療を牽引するリーダーになるためには、現在の地域医療について学ぶ必要があります。

東京・神奈川という人口密集地での医療は、日本の標準的な医療とはいえません。若手医師の皆さんは、当院のような地域医療の学べる病院で、将来の礎となる技術や知識を磨いてください。当院では、研修や学会発表などに参加し、技術や知識を得られる機会を設け、皆さんをサポートしていきます。

地域住民の皆さんへ

当院は、地域住民の皆さんに寄り添う医療提供を理想に掲げています。理想の医療の実現ため、5疾病5事業に留まらず、医師会や行政と連携しながら地域住民の皆さんが求める医療に取り組んでいきます。当院は、医療の進歩とともに変革を遂げ、病院内のそれぞれの診療チームを充実させて、地域住民の皆さんからよりいっそう信頼され、ご支援いただける病院となれるよう努力を重ねてまいります。