綾部市立病院は、京都府北部に位置する綾部市の公的病院として、地域の医療や福祉に貢献しています。急性期病院として救急患者を24時間体制で受け入れるとともに、高齢化の進む社会に対応するため、地域包括ケアシステムの構築にも取り組んでいます。
同院の診療体制の特徴や、地域貢献についての考えなどを病院長の高升正彦先生にお伺いしました。
当院の前身は、市民にも開放されていた企業病院であるグンゼ病院です。同院が閉院されることになり、綾部市が1990年8月に同院を引き継ぐ形で開設、運営は市の外郭団体である公益財団法人 綾部市医療公社が行っています。
綾部市はまちづくりの方針として「医・職・住」を掲げていて、このうち当院は「医」を支える役割を担ってきました。
特定の診療科に特化するよりも、地域に必要とされる医療を満遍なく提供していくことが当院の役割だと考えています。
2010年8月にはドクターヘリの受け入れを開始し、救急患者さんの受け入れ体制を強化しました。また、小児科との連携のもと、夜間の小児診療にも対応しています。患者さんの重症度や年齢、疾患領域を問わず受け入れられるように、救急医療体制の充実に尽力しています。
さらに、2014年4月には休止していた分娩の受け入れを再開しました。綾部市にお住まいの方や里帰り出産をご希望の方で、ローリスク妊娠の方の分娩に対応しています。また、近隣地域に在住の方やハイリスク分娩が想定される方も、相談のうえ可能な限り受け入れるようにしています。当院で対応が難しい場合は、近隣の市立福知山市民病院や京都府立医科大学附属北部医療センターに紹介するなど、常に適切な対応に努めています。
地域包括ケアシステムの構築にも尽力しており、2016年5月には地域包括ケア病棟を開設しました。今後も、地域に根ざした病院として住民の皆さんに必要とされる医療の提供に努め、地域医療の充実に貢献していきます。
肺がんなど胸部の悪性腫瘍のほか、肺結核や気胸などの呼吸器疾患や、重症筋無力症といった呼吸器に影響を及ぼす病気、手掌多汗症などの胸腔鏡手術が有効な病気にも対応しています。また、患者さんの体の負担を軽減するため、手術ではできる限り胸腔鏡を使用しています。
胸腔鏡とは長い筒状のカメラであり、これを肋骨の間から胸腔内に挿入してカメラの映像を見ながら手術を行います。開胸手術と比べ傷が小さくて済むので、手術後の痛みが少なく、早期回復を期待できることが特徴です。
また、当院で対応が難しい患者さんにも可能な限り適切な治療を実施できるように、京都府立医科大学呼吸器外科と連携を取っています。
食道や胃、小腸、大腸などの消化管、肝臓、胆のう、すい臓などにかかわる病気の検査、診断、治療を行っています。
胃の検査では、患者さんの苦痛を少しでも和らげられるよう、鼻から挿入する経鼻内視鏡も使っています。
小腸の検査では、バルーン内視鏡やカプセル内視鏡を使っています。小腸はほかの消化管に比べて長いため、以前は内視鏡での検査が困難な場合がありました。しかし、こうした新しい機器の導入で小腸全体の検査が可能になっています。
手術でも積極的に内視鏡を活用しています。内視鏡手術が有効な病気の患者さんに関しては、遠方の大病院に行かなくても、地元で手術を受けていただけるように、さまざまな治療法の導入に努めています。
乳がんを中心に、乳房にかかわる病気の診療を行います。乳がんが疑われる患者さんには、素早い診断ができるよう初診時にマンモグラフィから超音波検査、針生検まで行います。
当科で行う手術には、乳房切除術と乳房温存手術があります。乳房温存手術の場合は、術中迅速病理診断を行い、がんの取り残しがないか確認しながら手術を進めています。執刀する外科医と病理医、検査技師が協力し、できる限り再手術をせずに済むよう工夫をしています。
また、リンパ節への転移の有無を調べるセンチネルリンパ節生検を行い、転移のない場合は、腋窩リンパ節郭清を省略しています。
糖尿病合併症外来では、かかりつけ医の先生によって合併症検査が必要だと判断され、紹介を受けた糖尿病患者さんの診療を行っています。
糖尿病の合併症には網膜症や腎症、神経障害のほか、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞といった動脈硬化性疾患があります。当外来では、日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医が診察や検査を行い、合併症の有無や症状の程度を知ることで、病気の発症や進行を阻止につなげます。
糖尿病は、むくみや痛み、潰瘍といった足の病変も引き起こします。こうした症状のある患者さんを診療するため、足の困りごと外来も開設しています。
骨粗しょう症になると骨の強度が下がって脆くなり、骨折を起こしやすくなります。予防と再発防止のためには、早めに病気を発見して、早めに治療を行うことが肝心です。
当外来では、日本整形外科学会認定の整形外科専門医が診察を行い、看護師や薬剤師、放射線技師、リハビリスタッフ、管理栄養士らが連携して、薬を使った治療や生活習慣の改善を図ります。
2016年に地域包括ケア病棟を開設しました。この病棟では、手術や集中治療など急性期の治療が終わった患者さんが、自宅や介護施設に戻るためのリハビリテーションや生活支援を行っています。
高齢社会が進展するなか、高齢の方が住み慣れた地域で暮らし続けるため、医療や介護、福祉、生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築が必要とされています。
綾部市の特徴に合ったケアシステム構築に向けて、市や地域の医療機関、福祉施設などと協力して、地域全体で切れ目のない医療を提供できるように努めていきたいと思っています。
糖尿病の患者さんやご家族の皆さんに病気のことをよく知ってもらい、上手に血糖値をコントロールしてもらえるよう糖尿病教室を開催しています。病気についての講義と糖尿病食の試食会を、それぞれ月1回程度のペースで開いていて、当院の患者さんでなくても糖尿病に関心のある方なら、どなたでも参加できます。
このほか、腎臓病教室や生活習慣病予防教室や母親教室なども開催しています。興味のある方は当院までお問い合わせください。
看護部では、看護に興味があったり、看護を学ぼうと思っている高校生を対象とした「ふれあい看護体験」を開催しています。看護体験、進学相談などを行うほか、実際に患者さんとふれあう機会にもなりますので、看護師を目指している高校生の皆さんは、ぜひ参加してみてください。
また、小学5・6年生を対象としたキッズセミナーも開き、院内探検や職業体験で病院について楽しく学んでもらっています。
当院は基幹型臨床研修病院として、研修医を受け入れています。診療科間の垣根が低く、医局の職員全員の顔がみえる環境で、気軽に相談しやすい雰囲気であることが当院の特徴です。
研修プログラムは、研修医の希望によって変更が可能であり、一人ひとりにあったきめ細やかな研修を行っています。
また、薬剤師の育成のため、薬学生の病院実習の受け入れも行っています。
全職員を対象に、生後4か月から2歳までのお子さんをお預かりする院内保育所「こすもす」を設置しています。 また、職員のお子さんが病気で保育園や学校を休まなければならなくなったときのために、生後4か月以上、10歳未満のお子さんを対象にした病児・病後児保育も行っています。
このほか、ワーク・ライフ・バランスを推進するため、時間外勤務を短縮するための業務改善や有給休暇取得率の向上などに取り組んでいます。そうした取り組みが評価され、2014年には、公益社団法人日本看護協会から看護師のワーク・ライフ・バランスを推進している施設に贈られる「カンゴサウルス賞」をいただきました。
大学病院には、人材交流などで病院運営にご協力いただき感謝しています。
当院は軽症の患者さんから重症の患者さんまで幅広く診療にあたりたいと考えていますが、地域の病院や診療所と役割を分担しながら、地域全体で医療を担っていくことも重要だと思っています。引き続き、近隣病院や診療所の先生方と協力して地域医療の充実を図っていくことを目標にしていきます。
また、近隣地域には、脳神経内科や心臓血管外科、小児科といった分野に力を入れている特徴のある総合病院もあります。これらの病院とお互いに得意な診療分野を生かして補完し合い、連携していきたいと思っています。
当院は、ほかの病院と異なる特別な診療を行っているわけではありません。基礎的な病気やけがの治療にしっかり対応することが、公的病院としての役割だと考えています。また、特殊な病気についても必要があれば責任を持って大学病院などを紹介し、患者さんがそれぞれに合った治療が受けられるようにいたします。
今後も地域に愛され、親しまれる病院を目指し、努力してまいります。
綾部市立病院 院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。