院長インタビュー

医療と療育でお子さんの未来を支える北海道立子ども総合医療・療育センター

医療と療育でお子さんの未来を支える北海道立子ども総合医療・療育センター
續 晶子 先生

北海道立子ども総合医療・療育センター センター長

續 晶子 先生

目次
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北海道札幌市手稲区で診療にあたっている北海道立子ども総合医療・療育センターは、お子さんを医療と療育の両面から支えています。同センターは、診療科同士や多職種のスタッフが連携しながら診ることで、お子さんに応じた医療の提供を目指しています。

今回は、成長してゆくお子さんを総合的に診る診療体制について、センター長である(つづき) 晶子(あきこ)先生にお話を伺いました。

北海道立子ども総合医療・療育センター 外観
北海道立子ども総合医療・療育センター 外観

当センターは、2007年9月に、小児総合保健センターと札幌肢体不自由児総合療育センターが統合し、新たに小児医療と療育を専門とする病院として開設されました。開設以来、“生まれたばかりのときから、どんなに小さくもろい命でも大切に守る”という思いで、スタッフ一同、診療と心のケアに取り組んでいます。診療科同士が連携を図りながら、お子さんの成長に寄り添う小児医療と療育に取り組んでいます。

当センターでは、患者さんの早期回復を目指した手術を各診療科で提供しています。

小児循環器内科では、狭窄した心臓の血管をカテーテルという管を用いて広げる心臓カテーテル治療(カテーテル手術)を行っています。胸部を切開することなく、手首や足の付け根の血管からカテーテルを挿入して治療するため、患者さんの負担を軽減できます。また、小児心臓血管外科は小児循環器内科と連携を図りながら、先天性心疾患のお子さんの病気に応じて、可能な限り体の負担が少ない手術を提供しています。北海道では、新生児に対するこれらの治療に注力している病院は当センターなどの限られた施設のみになります。

小児泌尿器科では、積極的に腹腔鏡下手術を実施しています。腹腔鏡下手術の対象となる病気は限られていますが、切開部が小さいことで痛みや出血を抑えることが可能となります。

当センターでは、治療を通して、病気や障がいを抱えるお子さんの生活の質を向上させたいと考えています。

栄養摂取を例に挙げてお話しします。小児耳鼻咽喉科では、飲み込みがうまくできず、肺炎を繰り返してしまう障がいのあるお子さんに対する治療のひとつとして、喉頭気管分離術を実施しています。手術で食べ物と空気の通り道を分け、誤嚥(唾液や食べ物が誤って気管に入ってしまうこと)を防止しています。

また、小児外科では胃ろうの造設を行っています。胃ろう造設とは、お腹に小さな穴をあけて、カテーテルという管から胃に栄養を入れる方法であるため、気管が詰まってしまう恐れを取り除くことができます。

お子さんの未来を考え、生活の質を向上させる手術を提供できるよう努めています。

外来の様子
外来の様子

てんかん診療などを行っている小児神経内科には、日本小児神経学会認定の小児神経専門医が在籍し、難治性てんかんの治療や緊急時の対応も可能です(2020年3月時点)。患者さんのてんかんの症状によっては、他院と連携しながら診療を進めています。

小児眼科では、斜視や屈折異常など先天性の病気を中心に診療しています。先天性の目の病気の検査を専門に行う視能訓練士も在籍していることで、お子さんの緊張や負担を和らげながら検査や診察を行うよう努めています。

また、当センターは複数の診療科において専門医認定施設に指定され、専門医研修施設として若手の専門医を育成するという役割も担っております。

今後も小児医療を専門とする病院として、お子さんに配慮した丁寧な診療を心掛けてまいります。

当センターは、基礎疾患のある妊婦さんや低出生体重児の出産など、特にハイリスクな妊娠にも対応できる施設として特定機能周産期母子医療センターに指定されています。

ハイリスク妊娠の場合、各診療科の医師が連携を密に取り、迅速な対応を行うことが重要です。産後すぐに外科手術が必要な赤ちゃんに関しては、産科や新生児内科の医師が中心となり、適切な診療科の医師との連携体制を整えています。たとえば、先天性心疾患がある赤ちゃんに関しては、小児心臓血管外科や小児循環器内科、水頭症二分脊椎は小児脳神経外科、鎖肛や消化器疾患は小児外科などの医師と協力し、手術や治療を進めています。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

小児脳神経外科では脳腫瘍、小児血液腫瘍内科では固形腫瘍や悪性リンパ腫など、小児外科では肝芽腫神経芽腫などのがん診療を行っています。がんの種類や進行度によって、手術・化学療法・放射線療法を組み合わせて治療を選択します。可能な限りお子さんの負担が少ない治療を行えるよう、専門的な知識を持つ診療科と緊密に連携しています。手術を行う場合には麻酔科*と、化学療法を行う場合には小児血液腫瘍内科と、放射線療法を行う場合は放射線科と連携して集学的治療を実施しています。

特に、手術中の麻酔管理は重要ですが、それと同じくらい手術後に麻酔から覚めたときに不安感を抱かないようにすることも大切であると考えています。目覚めたときに病室でご家族の顔が見えて、安心していただけるように麻酔科医が麻酔を調整するという細やかな配慮が、お子さんの心の負担の軽減につながると考えています。

また、手術後はリハビリテーション科が中心となり、スムーズに回復できるよう早い時期からリハビリテーションを行っています。

このように、当センターでは、細やかながん診療を提供できるよう、診療科同士の連携強化に努めています。

*麻酔科指導医:名和 由布子(なわ ゆうこ)先生

リハビリ室の様子
リハビリ室の様子

運動機能や言語の発達は、お子さんが抱えている障害によって異なります。リハビリテーション小児科では、身体的なリハビリテーションはもちろんですが、精神面のケアも重視しています。そこで、理学療法士や作業療法士、公認心理師、言語聴覚士などの多職種のスタッフが一人ひとりのお子さんに応じたリハビリテーションを実施しています。また、リハビリテーション整形外科では、骨系統疾患による骨折や先天的な病気による整形外科疾患の機能手術や治療、リハビリテーションを担っています。

また、療育部門では目的別リハビリテーション入院を行っています。具体的には、親子で一定期間、リハビリテーションや家庭での過ごし方を学ぶプログラムを行う親子入院や、お子さんが一人で入院して行う目的別の集中リハビリテーション入院を実施しています。当センターは医療型障害児入所施設であるため、福祉の力を借りて、有期で機能獲得を目的としたリハビリテーションを提供することができます。場合によっては、併設している手稲養護学校で特別支援教育を受けるチャンスもあります。外来で経過を見るだけではなく、踏み込んでQOLを向上させることが可能となり、お子さんの自信にもつながっていると感じています。

当センターでは地域療育支援事業を行い、交流を積み重ねてきました。今後は、地域の児童発達支援センターや保健所などと連携を行い、よりいっそうシームレスな医療を提供していきたいと考えています。

さまざまな病気や障がいを持つお子さんを支えること。それを実践しているのは、多様な職種のスタッフたちです。痛みや気持ちをうまく伝えることができないお子さんのために何ができるか考え、医師とは異なる視点で活動してくれていることに、感謝の気持ちでいっぱいです。

当センターでは、そんな思いやりに満ちたスタッフの皆さんが育児と仕事を両立しやすい環境整備に励んでいます。これからも多様な職種のスタッフが連携しながら、お子さんやご家族から信頼される病院を共に目指していきましょう。

お子さんの未来を、幸せと笑顔であふれるものにすることが、我々大人の役割であると実感しています。そのためには、医師自身が幸せで、自然と笑顔でいられることが大切です。なぜなら、お子さんは周囲の大人たちが笑顔でないと、笑顔にはならないからです。特にご家族は、お子さんが入院や通院していると、不安な気持ちから、笑顔でいることが難しいときもあります。そんなとき、医師が笑顔でいることで、ご家族の笑顔を生み出し、ひいてはお子さんの笑顔を引き出してほしいと思います。だからこそ、男女の差なく若手医師の皆さんには、最新の知識や技術を磨きお子さんを救うことにとどまらず、未来を担うお子さんやご家族に笑顔をもたらすことができる医師になってほしいと願っています。

患者さんと医師の関係性は、治療が終わったら終わりではありません。病気や発達障害のあるお子さんたちが、今後生きていくうえで拠り所になるような何かを見出すこと。それができる医師になっていただきたいです。

續 晶子先生

小児医療は、大人に対する医療を単純に小さくしたものではありません。当センターでは、小児医療をお子さんの成長や発達に応じた医療と同時にお子さんの人格形成にも関わるものと捉え、日々の診療を行っています。

お子さんの人格形成には、ご家族との信頼関係は必要不可欠です。そこで私たちは、適度な距離を取りながら仲間の一員として接することで、ご家族がお子さんと信頼関係をよりいっそう構築できるように、サポートしたいと考えています。

また、当センターの山側には、遠方から通院するお子さんとご家族が滞在できるドナルド・マクドナルド・ハウスがあり、海側には手稲養護学校も併設されております。治療中は、お子さんもご家族も、身体的にも精神的にも疲れてしまうこともあるでしょう。そんなとき、保護者はアットホームな雰囲気づくりを心掛けたドナルド・マクドナルド・ハウスで過ごすことで、また患者さんは併設されている学校で病児ではなく生徒として生活することで気分転換し、前向きに治療に取り組めるような体制が整備できています。

当センターで治療を受けているお子さんは、会話がうまくできなかったり、寝たきりだったりと、さまざまな事情を抱えています。どのようなお子さんも一人ひとりが、日本の未来を担う素晴らしい存在です。当センターでは、どのようなお子さんの未来をも守るべく、職員一同、医療と療育に邁進いたします。

受診について相談する
  • 北海道立子ども総合医療・療育センター センター長

    續 晶子 先生

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