福岡県福岡市の千早病院の歴史は、戦後の海外引揚者に対する医療援護を行うために設立された病院に端を発します。1965年に千早病院として再出発し、現在は地域医療と2次救急を担う地域密着型の医療機関として患者さんの診療に尽力しています。地域の方々の疾病治療と健康増進に力を注ぐ同院の役割や今後の展望ついて、病院長の道免 和文先生にお話を伺いました。
当院の前身は、第2次世界大戦後の海外引揚者の医療援護を行うため1946年に発足した在外同胞援護会救護部聖福病院です。福岡市御供所町(現、博多区)から現在の東区へ移転したのは1965年で、“国家公務員共済組合連合会 千早病院”と改称し新たなスタートを切りました。現在は一般病床が124床、地域包括ケア病棟が51床の合計175床を備えて診療に当たっています(2026年2月時点)。
来院される患者さんは、近隣の病院や診療所から紹介されてくる方が大半です。また当院は福岡市東区を中心にした2次救急(入院を要する重症患者さんへの救急医療)を担っており、救急搬送にも随時対応しています。
国内では少子高齢化が進んでいますが、当院がある福岡市は2040年まで人口が増加すると予想され、その中でも東区は特に人口が急増しているエリアです。世帯数も着々と増加しており、住民の増加とともにエリア内の医療ニーズは今後も高まるでしょう。そのため当院は東区で数少ない公的病院として地域内の医療機関との連携を積極的に進め、互いに協力し、患者さんの疾病治療と健康回復に尽力しているところです。
消化器内科と消化器外科が一体となり、消化器病の診断と治療を円滑に行っているのが当院の”消化管・肝胆膵センター”です。当センターでは良性の消化器病から悪性の消化器病まで幅広く診療し、予防から早期発見、診断に取り組んでいますので、お腹に異常を感じたらお気軽にご相談ください。
内視鏡的治療や腹腔鏡下手術など、体への負担が少ない治療を積極的に取り入れているのも当センターの特徴の1つです。腹腔鏡下手術では腹部を5~10mmほどの小さい穴をいくつか開け、そこから挿入した腹腔鏡というカメラで患部を観察しながら手術をします。穴の数は虫垂切除術で3個、胆嚢摘出術で4個が一般的な方法で、従来の大きく開腹する手術に比べて術後のキズの痛みが軽減されるとともに、早期に社会復帰が可能です。
循環器内科では、心臓や血管の病気を専門に診療を行うとともに、他診療科と連携し既存の病気への対応も包括的に行っています。必要に応じてカテーテル治療(直径数mmの柔らかい管を用いて行う、体への負担が少ない治療法)やペースメーカー留置術(脈拍数を正常に維持するための医療機器を体内に設置する治療法)も行っています。
また、2007年からは本格的に心大血管疾患リハビリテーションを開始しました。急性心筋梗塞や狭心症、心臓手術の術後、心不全治療後の回復期、閉塞性動脈硬化症、大動脈疾患などの患者さんが早期に回復できるよう、入院外来を問わず心臓リハビリに取り組むのをサポートしています。自転車エルゴメーターなどの運動や講義の受講などを通じて、同じ病気を抱える患者さん同士の交流も生まれ、身体的にはもちろん、精神的な自信の回復にもつながっているようです。
現在、特に注力しているのは2023年10月に開設した呼吸器内科で、常勤医2名、非常勤医2名の計4名体制で診療を行っています。これまでは、東区に呼吸器内科の紹介先がほとんどありませんでした。そのため地域の患者さんや区内の医療機関の先生方が不便を感じていたと思いますが、このたびの呼吸器内科新設によりそのような地域の課題が1つ解決に近づきました。当科の対象となる病気は、喘息、COPD(肺気腫)、肺炎、肺結核、肺がんなどです。九州大学呼吸器内科と連携を図りながら診療に当たっていますので、呼吸器の症状にお困りの方はぜひ受診いただければ幸いです。
糖尿病は自覚症状が乏しいため、つい受診を後回しにしてしまう方もいらっしゃいますが、将来の合併症を防ぐためには早期の適切な管理が欠かせません。
当センターでは、医師だけでなく看護師や管理栄養士、薬剤師、検査技師、そして理学療法士がワンチームとなって、患者さんお一人おひとりの生活背景に寄り添ったサポートを心がけています。
単に血糖値を下げることだけが目的ではなく、網膜症や腎症、神経障害といった深刻な合併症の発症や進行を食い止めることに全力を注いでいます。そのために必要な検査を速やかに行える体制を整え、お食事の相談から運動療法の提案まで、無理なく継続できる治療プランを一緒に考えていくのが私たちのスタイルです。
地域の先生方とも密に連携していますので、健診で数値の指摘を受けた際や、日々の管理に不安を感じたときは、どうぞ遠慮なく私たちを頼ってください。
関節の痛みや腫れ、こわばりといった症状は、日常生活の質を大きく左右する切実な悩みです。当センターではリウマチ膠原病専門の内科医師と整形外科医師が連携し、関節リウマチをはじめとする膠原病や、激しい痛みを伴う痛風など、免疫や代謝に関わる病気の早期発見、早期発見を目指した診療を行っています。
リウマチ治療は近年、薬物療法の進歩によって、痛みを取り除くだけでなく、関節の破壊を止めて寛解を目指すことが十分に可能になりました。私たちは、生物学的製剤やJAK阻害薬といった選択肢も含め、患者さんの年齢やライフスタイル、ご希望に合わせて最適な治療方針をご提案することを大切にしています。
また、変形した関節に対しても、整形外科との連携によって手術的な治療を行うことが可能です。
痛風に関しても、発作の痛みへの対処だけでなく、その背景にある高尿酸血症を適切にコントロールすることで、再発や合併症を防ぐお手伝いをいたします。
健康診断の結果、受診が必要な方や、自覚症状等でお悩みの方は、ぜひ遠慮なくご相談いただければと思います。
呼吸器や肝胆膵、消化管といった、今後増加が見込まれる病気の医療ニーズに対応していくのが当院の基本方針です。そのために欠かせないのが地域の病院や診療所との連携で、さまざまな取り組みを行いながら連携の強化を図っています。たとえば当院の地域医療連携室では3か月に1回のペースで地域の開業医宛てにニュースレターをお送りし、さらに開業医の先生方が参加する病診連携会議やカンファレンスを定期的に開催するなどして、互いに情報交換をしながら連携を深めています。
また地域の皆さんとの交流を深めるために、公民館に当院のスタッフが出向き心臓や血管の疾患、肺疾患、骨の疾患などについてお伝えする地域公開講座も定期的に開催しています。コロナ禍で開催できない時期もありましたが、2023年8月に再開することができ、参加者から好評のお声をいただきました。
当院は“心あたたかな医療、心あたたかな病院”をモットーに、近隣の医療機関と連携を深めながら患者さんの診療にあたっています。患者さんは普段かかりつけの診療所で状態を診てもらい、急変時などは当院で迅速に対応し、再び容体が安定したらかかりつけの先生にお返しするといった具合に、連携先と協力して地域の皆さんの病気の治療や健康維持に貢献できたら理想的です。
また“分かりやすい、紹介されやすい、受診しやすい”をキーワードに、消化管・肝胆膵センターや糖尿病センター、骨粗鬆症センター、リウマチ膠原病・痛風センターを発足させるなど、診療体制を充実させています。治療を終えてリハビリが必要なときや、容体の急変時などに地域の皆さんを迅速に受け入れ回復させる病院としての役割を今後も果たしていく所存です。さらに現在、病院の建て替え計画も進めておりますので、近い将来嬉しいお知らせができるかもしれません。人口の増加が見込まれる福岡市東区で、我々は今後も地域の医療ニーズに応え続けてまいります。
※本記事の情報は全て、2026年2月時点のものです。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。