院長インタビュー

地域の健康と命を守り高度ながん治療を実践する、市立ひらかた病院

地域の健康と命を守り高度ながん治療を実践する、市立ひらかた病院
林 道廣 先生

市立ひらかた病院 病院長

林 道廣 先生

目次
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市立ひらかた病院は人口約114万人の規模を誇る大阪府北河内医療圏において、24時間入院対応可能な小児救急医療機関でもあり、地域の患者さんを一手に受け入れている急性期病院です。周辺には300床を超える大規模病院が複数あり、地域医療を守るためのしっかりした連携が取れています。

地域医療における公立病院としての役割を果たすため、地域のみなさまとの信頼関係を築き、質の高い安全な医療の提供をめざす、同院の病院長である(はやし) 道廣(みちひろ)先生にお話を伺いました。

外観
病院外観(市立ひらかた病院ご提供)

これからも患者数が増えると予想されるがんの治療にますます力を注げるよう、当院では最新の機器を導入し、緩和ケア病棟を開設しています。そうして地域の中核病院として地域のみなさまの命を守るため、質の高い安全な医療を提供し続けています。

また当院は二類感染症を受け持つ病院として、この医療圏でも数少ない第二種感染症指定医療機関の任を負っています。そのため感染症医療には注力しており、新型コロナウイルス感染症が地域に入ってきた際も、初期の段階から診療に携わっていました。

救急においても二次救急指定医療機関として多くの救急患者さんを受け入れています。年間の救急受診者数は約18,000人、救急車の搬送台数は約5,050件にのぼります。小児救急にも力を入れており、小児科医不足が叫ばれている昨今で、365日24時間対応の小児救急医療を提供しています。これは枚方市にとってもアピールポイントになっています。

病床数は335床、28の診療科を有し(2024年時点)、手術・検査にともなう痛み・発熱・出血などをできる限り少なくする、患者さんにやさしい医療(低侵襲医療)に積極的に取り組んでいます。

当院は、北河内医療圏の二次医療圏のなかで唯一、小児救急患者さんを365日24時間体制で受け入れています。35床の小児病棟を有し、発熱や、呼吸困難、ひきつけ、けいれん発作、嘔吐や下痢、脱水、意識障害などの症状を呈するほとんどの急性疾患に対応しています。

当院が現在地に移転する前までは、年間の時間外受診患者数は小児科だけで約16,000名を超え、救急患者さんに4、5時間待っていただくことが常になり、小児救急が継続できない状態にまでなったことがあります。

現在は一次救急を担う北河内夜間救急センターが当院に隣接する枚方市保健センターに移転し、当院と連携しながら比較的軽症の患者さんに対する救急医療の業務分担をすることで、スムーズな救急診療を行えています。

当院は入院が必要と判断された二次救急患者さんに特化した診察を行い、必要に応じて集中治療を行う三次救急病院に患者さんを搬送する役割を担っています。

それによって、当院にいらっしゃる時間外受診数が大きく減り、患者さんを長時間お待たせすることがなくなりました。さらに入院患者さんは救急外来受診者の約4割に増え、当院が果たすべき二次救急患者さんへの集中的な診察・治療ができているといえます。これからも小児医療の拠点病院としての責任を果たしてまいります。

内観
院内の様子(市立ひらかた病院ご提供)

当院は、大阪府がん診療拠点病院に指定されています。がん診療拠点病院とは、日本に多いがん(肺がん胃がん肝がん大腸がんおよび乳がんなど)について、専門的な診療機能を持つ病院のことです。

がん治療の三つの柱として、手術・放射線治療・化学療法があります。手術についてはなるべく低侵襲(体への負担が少ない)な治療を心がけています。2022年にはより精緻で低侵襲の手術が可能になる手術支援ロボット“ダビンチ(Da Vinci)Xi”を導入し、泌尿器科での前立腺がんや婦人科での子宮摘出、消化器領域での大腸がん胃がんなどの消化器がんに対してさらに精度の高い手術で順調な成績を上げています。また、低侵襲治療の代表的な手法である内視鏡外科手術をさらに充実させるため、7部屋ある手術室のうち2部屋を内視鏡外科手術専用にするなど、体制を整備し、医療の質の向上に努めています。
放射線診療については320列と64列の2台のCT、3テスラと1.5テスラの2台のMRI、さらにSPECT装置や新しい放射線治療装置を導入し、より精度の高い診断や質の高い治療ができるようになっています。

化学療法では外来化学療法室のベッドを増やし、患者さんの負担が軽くなるよう通院で治療できる体制を強化しています。

緩和ケア病棟は当院の特徴の1つでもあります。20床の病室がすべて個室になっており、家族部屋を備えるなど、緩和医療を提供しているがん患者さんとそのご家族が、その人らしさを大切にした環境でゆっくり過ごしていただける病棟になっています。

緩和ケアは、がんと診断されたそのときから開始することが大切であるといわれています。

当院では、医師や専門看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、社会福祉士など多種多様な分野の専門家がチームとなり患者さんとご家族を支えています。大切な時間を有意義に過ごしていただくためのさまざまな工夫もしています。

ご遺族に対するグリーフケア(大きな悲しみに襲われている方に対するサポート)の一環として、当院でお看取りをさせていただいた患者さんのご家族を招待し、ほかの患者さんのご家族や当院のスタッフとお話をする場を提供させていただいています。いらっしゃったご家族の方からは、「ほかの患者さんのご家族とお話ができ、遺された家族の気持ちは同じであると心強く感じた」、「スタッフが家族のことを覚えていてくれたことに感動した」とおっしゃる方もいらっしゃいました。これからもよりいっそう、充実した緩和ケアを提供したいと考えています。

当院は北河内医療圏内で数少ない第二種感染症指定医療機関であり、令和2年には新型コロナウイルス感染症重点医療機関にも指定されました。

新型コロナウイルス感染症流行のごく初期から先駆的に医療活動を始めており、陽性患者さん約2,050人の入院、外来でもおよそ6,500人の方を診療しました。とくに小児患者さんにおいては、大阪府内でもっとも多く対応した病院の1つとなっています。

新型ウイルスの流行では、多くの医療機関も含め社会全体が混乱しました。当院は感染症の専門機関として、以前から新型インフルエンザ流行を想定した受け入れ訓練をしており、新型コロナウイルス感染症に対しても多くの場面において事前の準備が生かされたことは強みでした。多くの患者さんを診ることができたのは、そういった経験もあったからかと考えています。

また、当院は令和6(2024)年4月から新興再発感染症に対応する医療機関として選定されましたので、今後も新型コロナウイルス感染症に限らず、あらゆる感染症に対しニーズにそった対応することになります。これからも地域での感染症対策にしっかりと取り組んでいきます。

当院では、特徴的な診療センターを近年いくつか開設しました。
通常、病院の診療科は人体の複雑さゆえに消化器内科、消化器外科、耳鼻咽喉科、など臓器と治療法別に分けた診療体制であることが通常ですが、治療にあたってはそういった境目のない医療を行うことは重要でより効果的です。患者さんにとってもそれはメリットであることから、診療科の垣根を超えた体制を作ることは大切だと考えています。
当院ではそのような体制作りからさらに踏み込んで、食べる、歩く、話す、生活習慣病を治すという、健康的な日常生活を送るうえでの重要な身体機能にたいし機能回復や治療の目的別に診療センターを編成しました。

消化器センター: 消化器内科・消化器外科を中心とし、 “食べる”という機能を回復する目的のセンター。

糖尿病センター:糖尿病をはじめ、高血圧、高脂血症などの生活習慣病の治療を目的とする。

下肢機能再建センター:整形外科が中心となり、健康的に “歩く”ということに重点を置いた診療を行う。

音声外科センター:耳鼻咽喉科を中心に、声が出にくい、かすれる、発声が難しいといった “話す”機能の回復を目指す。

地域のクリニックや医療機関にもこの取り組みはご案内していますので、もし受診をご希望の場合はかかりつけの先生にご相談いただければと思います。

訓練
訓練の様子(市立ひらかた病院ご提供)

当院は、枚方市の災害医療センターに位置付けられています。災害時において、患者さんの生命と安全をお守りすることはもちろん、被災地域の内外を問わず、枚方市の医療救急活動の拠点として、迅速かつ適切な医療救急活動を担う使命があります。

現在の建物は、震災時にも病院機能を維持できるよう、枚方市の公共建築物では、はじめて免震構造を採用し、非常用発電設備もあります。玄関前の約700㎡の芝生広場は、重症度などで治療の優先順位を判断するトリアージを行うためのテントを張るスペースになります。さらに、1階の外来待合スペースや2階の講堂などに医療ガス供給設備を配置し、災害時には医療活動スペースとして利用できるようにしています。

また、災害対応マニュアルの徹底を図るとともに、職員の危機管理に対する意識およびスキルの向上のために、年に2回災害医療訓練を実施しています。災害医療訓練は、当院の職員だけではなく、枚方市、消防署、保健所や、市内の近隣病院、地域の医療機関の職員の方々とともに共同で実施しています。訓練には、毎回多くの職員が参加し、非常に充実した内容となっています。

2018年に起きた大阪北部地震では、M6.1、震度6弱という大きな揺れがこの北河内地区を襲いました。当院は当時移転したばかりだったこともあり、建物は大きな横揺れにも耐え損傷もなかったため、通常の医療活動においてもなんの支障もありませんでした。数日間にわたる余震で不安に感じる中、堅牢な建物で患者さんには安心感を得ていただけたのではないかと感じています。

この経験を今後にいかし、さらなる災害医療体制の充実に努めてまいります。

セミナー
イベントの様子(市立ひらかた病院ご提供)

当院は、地域のみなさまの健康増進のため、積極的に医療や健康に関する情報を発信しています。当院2階の講堂を使って市民公開講座を年6回開催し、がんの予様々な防から発見・治療方法や、成人病や介護のことなどをわかりやすくご説明し、参加された方からのご相談に応じています。

また、ひらかた健康セミナーというイベントでは、測定機器を置いたコーナーを設けて、骨密度や血管の老化を計る検査や視力・眼圧、血糖値や血圧、体脂肪の測定などを無料で行っています。

患者さんからは「病院が明るくて雰囲気がよい」「職員が優しくて、居心地がよい」といってもらえることがあります。これはひとえに当院の職員が、“心のかよう医療を行い、信頼される病院”という当院の理念を胸に、常に患者さんの立場に立って、患者さんを中心とした医療サービスの提供を心がけているからだと考えます。

地域の公立病院として歩んできた伝統を守り、これからも職員にとって働きがいのある、魅力あふれる病院づくりをめざしていきます。そして、公立病院として果たすべき役割を職員一人ひとりが考え、困っている患者さんに対して解決策をみつけられる職員が少しでも多く育つよう、努力してまいります。

患者さんの立場
(市立ひらかた病院ご提供)

当院は、公立病院として地域のみなさまのそばに寄り添い、安心して暮らせるための病院であり続けたいと思っています。

お互いに心が通う医療を行い、信頼される公立病院としての使命を果たしていきたいと考えています。とくに、感染症や救急、がん診療などといった政策医療は公立病院としての役割を全うする責任があります。

当院があるから枚方市で安心して暮らせる、と地域の方に思っていただけるような医療機関になればと願っています。

医療の質の向上、サービスの向上などの課題に対して、すべての職員が一丸となり継続的に取り組んでまいります。これからも安心で安全な「こころのかよう医療を行い、信頼される病院」として、地域のみなさまに愛される病院であり続けたいと考えています。

集合写真
(市立ひらかた病院ご提供)

 

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