東京都西東京市にある武蔵野徳洲会病院は、2015年6月に開院し、今年で10周年を迎えます。東京都指定二次救急医療機関として、“断らない救急”をモットーに、救急車を年間3,000件以上*受け入れている“救急医療センター”、循環器疾患に24時間対応できる“循環器病センター”、48時間以内に手術を行う“大腿骨骨折治療センター”や“尿路結石治療24時間センター”といった特色ある11のセンターを運用しています。患者さんが“生命を安心して預けられる病院”として地域でどのような役割を果たしているのか、院長の桶川 隆嗣先生に、地域における同院の役割や今後の展開について話を伺いました。
*救急受け入れ件数4,181件(2023年度)
当院は2015年6月に開院した徳洲会グループの病院です。東京都指定二次救急医療機関として日々多くの患者さんを受け入れており、また、東京都災害拠点連携病院として行政と連携を図りながら地域の皆さんが必要としている医療サービスを提供しています。
当院の半径7km圏内には、いくつもの医療機関があります。この医療が充実したエリアで開院をした理由は、外来や手術などの治療においても“短い待ち時間で治療が受けたい”という地域患者さんのニーズを満たすためです。
当院ではすべての診療科でスムーズに治療に入れることを特徴としており、たとえば尿管結石であれば最短で翌日に手術が、がんにおいては、1か月以内に治療をスタートすることができるよう努めています。
当院は“どこにも負けない医療サービスを提供する”ことを常に意識し、診療科を充実させてきました。その結果生まれたのが、先述した尿路結石症24時間センターや大腿骨骨折治療センターです。そのほかにも24時間循環器疾患に対応できる“循環器病センター”や、CT画像のような立体撮影が可能な高性能脳血管撮影装置を備えた“脳血管内治療センター”、西東京市で唯一の“歯科口腔外科センター”など、現在(2024年1月)は11のセンターを運用しています。また、患者さんを診療する際には複数のセンターや診療科が連携し、チームを組んで患者さんの早期回復・早期復帰を目指しています
そうした特色あるセンターの中でも、当院が自信を持って“どこにも負けない”と言える分野がいくつかあります。高齢者の骨折を対象として、2021年2月に整形外科内に開設した“大腿骨骨折治療センター”もその1つです。
大腿骨骨折は高齢者の骨折しやすい部位の1つで、年間約20万人(2020年)が手術を受けています。大腿骨は、歩くために欠かせない部位です。高齢者の場合、大腿骨骨折の手術までの待機期間や術後の離床に時間がかかってしまうと、ADL(日常生活動作)や筋力・免疫の低下を招いてしまい、寝たきりの原因となり、結果としてや認知症発症のきっかけになることがあります。
同手術における待機時間の全国平均は約106時間と言われており、早期手術が必要な場合でもその間に痛みで苦しんでいる患者さんや寝たきりによって筋力低下が進んでしまうという現状があります。専門の大腿骨骨折治療センターは東京都では初めてのもので、48時間以内の迅速な手術を目指して
行っています。
手術後も内科との連携により、復帰のためのリハビリテーションの早期介入や、栄養指導、再度骨折しないような予防法などを含めたトータルでのケアを専門病棟で行っています。
当院の救急外来(ER)の特徴は、ベテランの日本救急医学会専門医が勤務していることです。二次救急病院では各診療科の医師が救急業務を担当することが多く、当院のように救急専従の医師が常駐しているのは珍しいのではないでしょうか。例えば、急性疾患(緊急で対応が必要な疾患や外傷)で患者さんが受診された場合、救急科専門医は症状にかかわらず診療を行い、必要に応じて適切な専門の診療科に引き継いでいます。
高齢化が進むのに合わせて、今後は対応しなければならない救急疾患が増えると予想しています。現在は救急搬送を年間3,000件以上受け入れていますが、救急車や救急患者の受け入れを一層拡充するため、各診療科の体制を充実させていかなければなりません。あわせて災害医療にも対応し、地域医療に貢献したいと考えています。
さらに強みの1つが泌尿器科に設置している尿路結石症24時間センターです。尿路結石は、急性腎不全など緊急的に手術が必要になるケースもあります。当院では痛みの伴う尿管結石や手術が必要な場合など、あらゆる尿路結石症の患者さんを受け付け、24時間以内に診療ができる体制を整えています。
また、泌尿器科では、手術ロボットを積極的に導入し、患者さんの痛みや苦痛の少ない診療を心がけています。なかでも前立腺がんの手術では、2021年9月に国産の手術支援ロボット“hinotoriサージカルロボットシステム”を導入しました。同システムは移動通信システム5Gを使った遠隔操作が可能で、普及が進み、離島やへき地の病院に導入されれば、遠隔操作で手術や指導を行うことができます。そんな未来を想像すると胸が高鳴ってしまいますね。
2023年12月院内に、こどもの食事をサポートする“むさとくこども食堂”を、オープンしました。6~12歳のお子様ならどなたでも参加が可能で、月に1回開催をしています。栄養指導をしながらお子様に食事を提供し、健康に関する有益な情報を発信しており、毎月好評をいただいています。また、2023年に引き続き、2024年もむさとくフェスティバルを開催しました。地域の方々に健康や医療に興味を持っていただく目的で開催しています。コロナ禍で中止となっていましたが、昨年は3,000人の方に、今年はそれを上回る3,500人の地域の方々にご来場いただきました。このようにさまざまな取り組みを通して、理念である“生命を安心して預けられる病院”“健康と生活を守る病院”であり続けるため日々努力をしています。地域の方々に寄り添う医療を今後も続けていきたいと思っています。