院長インタビュー

地域の皆さんに安心して療養いただける医療環境を提供したい~聖母病院の取り組み

地域の皆さんに安心して療養いただける医療環境を提供したい~聖母病院の取り組み
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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東京都新宿区にある聖母病院は、1931年に開院した、マリアの宣教者フランシスコ修道会によって運営されている病院です。これまで同院は内科系・外科系急性期医療および母子医療を中心に地域医療の一翼を担ってきました。また、ここ数年は地域包括ケア病棟を整備し積極的に高齢者医療に取り組むなど、地域を第一とした医療により一層力をいれています。そんな同院の役割や今後について、病院長の宮越 敬(みやこし けい)先生に伺いました。

当院は、大正から昭和にかけて数々の建築物を残したスイス人の建築家、マックス・ヒンデルの設計により本館が建築され、1931年(昭和6年)12月21日に開院しました。設置者は“社会福祉法人 聖母会”、経営母体が“マリアの宣教者フランシスコ修道会”で、創立当初からキリスト教の愛の精神に基づき、国籍、信仰、貧富を問わず、国際病院として医療を必要とする全ての人々に奉仕してまいりました。内科、小児科、外科、皮膚科、泌尿器科、物療X線科の診療から始め、翌年には産婦人科を設置し、少しずつ診療体制が強化されました。

地域住民への内科系・外科系の医療提供だけでなく、母子医療や高齢者医療にも注力しております。患者さんは当院がある新宿区を中心に、中野区や豊島区、練馬区などから来院されています。専門性が高い診療をしている皮膚科については、全国から患者さんが訪れます。外国籍の方も数多く受診されており、以前は欧米の方が中心でしたが、最近はネパールやミャンマー、韓国の方などが増えました。英語・フランス語・スペイン語・ミャンマー語の通訳スタッフを配置するとともに、翻訳機器や通訳サービスであるメディフォンも活用しながら外国籍の方に対応しています。また、母子医療では外国籍の方に安心して出産いただけるよう英語版のマタニティーブックやオンラインクラスも整備しております。

救急医療については、軽症から中等度ぐらいまでの患者さんを診ています。周囲には大学病院はじめ大規模な病院がありますが、そちらへ行くのは敷居が高いと感じる患者さんの多くが当院にいらっしゃっているようです。また、コロナ禍にも積極的に救急搬送を受け入れ、搬送件数は徐々に増えました。結果的に、2023年度の救急車の受け入れ件数は1,400件に達し、2019年の約2倍になりました。

当院の産婦人科の歴史は古く、病院を開設した翌年の1932年(昭和7年)に診療を始めました。以来、当院で13万人を超える新しい命が誕生しており、2023年度は年間1,231件の分娩に携わっています。しかしながら、当院の診療圏にあたる新宿区・豊島区・中野区は、23区の中で出産数が少ないエリアであり、当院の分娩数も減少傾向にあります。そこで昨年の秋頃から近隣の埼玉県・神奈川県・千葉県のクリニックと連携し、都内で里帰り分娩を希望する妊婦さんに向けた案内を始めました。また、昨今のニーズを踏まえ無痛分娩を24時間・365日対応可能とし、希望者全員に硬膜外麻酔を提供しております。2023年度の実績では、約53%の方が無痛分娩を選択されています。

安心して退院後の生活を過ごしていただけるよう産後ケアにも力を入れており、産後健診、母乳外来、母子訪問、電話相談など、さまざまなメニューを用意しております。産後ケア入院では、出産後のお母さんの心と身体の回復のためのケアや、授乳や育児相談などの支援をしています。2024年9月現在、新宿区・豊島区・中野区・杉並区・練馬区・板橋区とタイアップして、当院のみならず他院で出産されたお母さんにも利用いただいております。各区の承認が下りれば少額の自己負担でご利用いただけますので、ぜひご検討ください。

「聖母病院は母子医療が中心」というイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、当院が立地する落合地区には多くのご高齢の方が生活しておられます。ご高齢の方とご家族が安心して暮らしていただけるよう、緩和ケアや訪問診療をはじめ高齢者医療にも力を入れています。緩和ケアは2019年に、訪問診療は2022年に本格始動しました。緩和ケアについて中心となって活動しているのが、専門の訓練を受けた医師、看護師、薬剤師、栄養士ほかのスタッフにより構成された緩和ケアチームです。当院では入院・外来を問わず、がんや難治性疾患の患者さんとそのご家族、また死別後のご遺族のサポートをしています。藤井大輔内科副部長のリーダーシップのもと地域における緩和ケアの推進も図っております。緩和ケアを目的とした在宅療養中のサポートや、他施設からの転院なども受け入れておりますので、気軽にお問い合わせください。また、南郷栄秀総合診療科部長を中心とした訪問診療も少しずつ拡充しております。

皮膚科では、一般的な皮膚疾患だけでなく、乾癬(かんせん)掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)アトピー性皮膚炎、赤ちゃんや小児のあざ脱毛症白斑など、専門的治療を必要とする診療にも力を入れております。皮膚科の治療は画期的な進歩を続けており、新しい薬により症状によってはかなり改善されるようになりました。特に、掌蹠膿疱症の専門家である小林里実皮膚科部長のもとには全国から患者さんがお越しになります。これまで治療に苦慮されてきた方や治療で迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。

開設以来、地域の方々が必要としている医療の提供だけでなく社会貢献活動も病院目標に掲げてきました。ただ、当院からの情報発信が十分でないと感じることも少なくありません。そこで、昨年からさまざまな取り組みを始めております。先述した産婦人科による里帰り分娩の呼び込みもその1つで、今後は緩和ケアなどの取り組みのアピールにも力をいれます。行政と協力した講演セミナーも大変好評を得ています。今年(2024年)の3月には、新宿区とJA全農たまご(株)の協力を得て、「子どもの未来を“食育”で!」をテーマに食育セミナーを開催しました。対象は0歳から5歳児の養育にかかわる方で、親子で参加いただいた方もおられました。そのほか、無料の健康福祉相談を実施するとともに今年は社会貢献委員会を立ち上げました。毎月第4水曜日午後に開催する健康福祉相談では医療ソーシャルワーカーがさまざまな相談をお受けしています。

当院は社会貢献を念頭に、地域の皆さんが必要とする医療サービスを提供し続けてきました。母子医療では、多くの方から「お産は聖母病院で」と言っていただけるようになりました。現在は無痛分娩(24時間365日実施可能)や充実した産後ケア・メンタルヘルスケアを提供できる体制を整備しましたので、今まで以上に安心して出産いただけるかと思います。一方、高齢化が進む地域の皆さんが必要とする医療サービスを提供できるよう、緩和ケアや訪問診療の強化にも取り組んでいます。特に、高齢者の摂食・嚥下ケアや大腸がん治療・整形外科治療は当院の得意とするところです。まずは当院に受診いただき、その先については患者さんと一緒に考えていける…、そのように患者さんに信頼される病院を目指したいと思っています。

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