院長インタビュー

“済生”の精神で高度急性期病院としての役割を担う 水戸済生会総合病院

“済生”の精神で高度急性期病院としての役割を担う 水戸済生会総合病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]院長インタビュー

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

茨城県水戸市の水戸済生会総合病院は、日本最大の社会福祉法人として、医療・健康・福祉活動を展開する済生会が運営している病院です。県央・県北の高度急性期を担う病院として3次救急を担うなど、地域医療を支えている同院の役割や今後について、病院長の生澤 義輔(いけざわ よしやす)先生にお話を伺いました。

先方提供
水戸済生会総合病院ご提供

 当院は1943年に茨城診療所として開院しました。1957年に水戸済生病院、1964年に現在の水戸済生会総合病院へと改称し、1984年には現在地へ新築移転し現在に至ります。診療体制は開院当初から継続して強化を図っており、診療科数は約30、病床数は432床になります。茨城県立こども病院とは廊下続きで、中央には県の総合周産期母子医療センターがあり、産科と麻酔科が24時間体制で3次周産期医療(ハイリスクな出産や高度な新生児医療)を行っています。

救急においては、県央・県北の高度急性期を担う病院として、3次救急(生命に関わる重症患者に対応する救急医療)を担っています。茨城県とドクターヘリ基地病院として協定を締結したのが2009年、救命救急センターとして県より承認を受けたのが2010年で、以来、“ベッド満床時以外は救急車受け入れを拒否しない”ことをモットーに、地域における救急医療を支えてきました。救急車は重症者のみ受け入れておりますが、それでも受け入れ件数は年間約3,200台(2023年度実績)に達しています。

現在、救急科では専従医5名、非常勤医師6名(2024年7月現在)で救命救急センターを24時間365日体制で運営しています。センタースタッフのほとんどが外傷病院前救護(JPTEC)、救急蘇生処置(ICLS)、集団災害時への対応等の教育訓練コースを受講しており、ドクターヘリに搭乗可能なフライトナースの養成も進めています。また、脳疾患、心疾患、事故による重症外傷、ショック症状、心肺停止など、重篤な患者さんに対応するドクターカーを運用しているのが当院の強みです。

当院では、各診療科が連携して医療を提供するセンター化に注力しています。センターは先ほど紹介した救急センターを含めて5つあり、そのうちの1つがハートセンター(循環器センター)です。循環器系の病気ほぼすべてに対応しており、循環器専門医、心臓血管外科に所属する日本外科学会専門医、麻酔科の医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、放射線技師、理学療法士など、さまざまな職種のスタッフがハートチームを結成して診療にあたっているのが特徴です。治療方法を決定する際にはハートチームで話し合い、その決定が循環器科・心臓血管外科のどちらかの視点に偏ることなく、最適な治療法が選択されるしくみになっています。診療面では、筑波大学循環器科の主任教授をされていた青沼和隆先生が2019年度に当院の最高技術顧問に常勤医として赴任し、頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーションの症例数が大幅に増加しました。また、カテーテル治療と心臓血管外科手術を同時に施行できるハイブリッドカテーテル室を稼働させており、大動脈瘤の治療である大動脈ステントグラフト内挿術(TEVER)や、閉塞性動脈硬化症に対するバイパス手術、カテーテルによる血管拡張術、心房細動による脳梗塞を予防するための経皮的左心耳閉鎖術(ウォッチマン)、僧帽弁閉鎖不全症におけるマイトラクリップなどの治療を、心臓血管外科医と循環器内科医が協力して行っています。

“消化器センターに来れば、まず安心”をお届けできるよう、消化器内科と消化器外科が協力して診療にあたっています。センター1階に内視鏡検査室やX線検査室、超音波検査室などの検査部門を、2階と3階に消化器外科と消化器内科の入院病床を配置し、検査から入院治療までスムーズに提供できるのが特徴です。また、研修医の皆さんの指導も兼ねて、診療科をまたいだカンファレンスを毎朝実施しています。その成果もあって、治療のスピードがかなり早いと思います。昨年からリウマチ膠原病内科や血液内科の先生が大学から新たに赴任されましたが、総合的な検討、治療開始のスピードに皆さん驚いていました。

苦痛の少ない検査として注目を浴びている小腸カプセル内視鏡検査も当センターで行っています。また、2023年に手術支援ロボット“ダビンチXi”を導入し、ロボット支援下手術ができるようになりました。ダビンチは患者さんの体に小さな穴を開け、内視鏡カメラとアームを挿入して手術を行うため、患者さんの体の負担が軽減されます。また、手振れ防止機能があり、通常の内視鏡手術より正確性が高いといった特徴もあります。現在は消化器外科の直腸がん手術などで採用しており、今後は症例数を積み上げていく予定です。

腎不全などの患者さんに対する透析療法を行っているのが血液浄化センターで、透析ベッド35床を有し、常時95名から100名の患者さんが透析治療を行っています。周辺には透析ができる病院が少ないこともあり、慢性腎炎や腎不全といった腎臓関連の病気を抱えている患者さんが紹介で受診されています。また、隣接する県立こども病院からは15歳以上になった腎炎の患者さん、併設する周産期センターからは腎炎合併妊娠・妊娠高血圧腎症の患者さんの紹介を受けています。そのほか、当院にはハートセンターがありますので、たとえば動脈硬化と腎臓病を併発した患者さんのように、併存疾患の患者さんを診療できるのが当院の強みといえます。

1992年に茨城県周産期センターとして開設され、高齢出産や糖尿病のお母さんの出産など、地域のハイリスク妊産婦さんに対して、妊娠中から分娩まで高度な医療を提供してきました。2005年には茨城県より総合周産期母子医療センターの指定を受け、それを機にMFICU(母体胎児集中治療室)6床を整備して、更に充実した診療体制になっています。特徴は、産科領域については当院が、小児科領域は当院に隣接し通路でつながっている茨城県立こども病院の新生児科(NICU、新生児集中治療室)が担当するなど、こども病院で協力して妊産婦さんから新生児まで対応していることです。また、産科救急にも対応しています。2004年の全国調査によると、妊産婦さんの約250人に1人が死に至るほどの重篤な合併症を妊娠・分娩中に発症していることがわかっています。そこで当院では突発的な事態にも対応できるよう常に産婦人科医が院内に待機し、麻酔科医や救命救急センターと連携を図りながら対応できる体制を整えています。

当院はイオンモール水戸内原さんと“未来に向けた持続可能なまちづくり協定”に関する覚書を締結し、地域の持続的な発展や社会貢献事業に連携して取り組んでいます。イオンモール水戸内原さんの店舗では、市民公開講座を開催し、多くの方にご参加いただきました。講演では“検診を受けて防ごう 慢性腎臓病”をテーマに腎臓病について講義をしたり、ロコモ・フレイル(運動期間や消化器官などが衰え、健康障害に陥りやすくなった状態)の対策について話したりしています。そのほかでは、看護師による医療相談や、助産師による妊婦育児相談、薬剤師による薬相談なども行っています。

子どもたちに対しては、水戸市の協力を得ながら病院の体験ツアーなどを開催し、ドクターヘリの見学や、救急室・放射線の検査室などを案内しています。また、夏休みなどには小・中学生を対象に、腹腔鏡を実際に触ってもらうイベントも開催しています。

毎週決まった時間に看護部長と一緒に病棟回診をしていますが、病棟課長さんたちは皆さんキリッとした表情で、しっかりと報告をしてくれます。それはそれでいいことなのですが、時々それは本当なのかなと、思うときがあります。そこでちょっと時間が空いた時に1人でブラっと病室を訪問するのですが、そうすると皆さん本音が出てくるのです。つまり、生の声が聴けるんですね。私は“ぶらぶら回診”と呼んでいるのですが、ぶらぶら回診ですと本音をいろいろと聞くことができ、とてもありがたいと思っています。仕事の都合で多くの時間を費やすことができませんが、なるべくぶらぶら回診の時間は作るようにしたいと思っています。

最後になりますが、済生会について少しご紹介したいと思います。済生会は、医療を通して生活困窮者を救済することを目的に、明治天皇によって1911年に設立されました。済生会設立当初の理念に“施薬(無償で薬を施すこと)と救療(無償で治療すること)”がありますが、現在はその理念をより進化させ、次の4つを使命としています。

  1. 無料低額診療事業やなでしこプランなどの社会的支援を必要とする人への援助
  2. 医療の公益性と効率的な経営の両立を図り地域医療を推進する
  3. 済生会の特徴を生かした独自の地域医療包括ケアの実施
  4. ソーシャルインクルージョン推進計画による個別支援

私どもはこの使命を忘れることなく、地域の皆さんに信頼され愛される病院を目指していく所存です。日々研鑚を積んでまいります。

実績のある医師をチェック

Icon unfold more