院長インタビュー

“地域完結型の医療”を目指し、急性期から介護期まで広く人々を支える いすみ医療センター

“地域完結型の医療”を目指し、急性期から介護期まで広く人々を支える いすみ医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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2009年に新病院へと生まれ変わったいすみ医療センターは、千葉県いすみ市、大多喜町、御宿町にお住まいの方々を中心に、急性期から慢性期、介護期まで一貫した医療とケアを提供しています。そんな同院の役割や思いについて、病院長の伴 俊明(ばん としあき)先生にお話を伺いました。

当院は1949年に国保国吉病院(経営主体は国民健康保険団体連合会)として開設されました。6つの診療科と21の病床でスタートした当初は、結核や伝染病との闘いだったといいます。その後時代は昭和から平成に移り、市町村合併により2005年にいすみ市が誕生したことに伴い、当院はいすみ市、大多喜町、御宿町の組合立病院となりました。

新病院が完成し、現在の“いすみ医療センター”となったのは2009年です。人口減少や高齢化が進む地域の医療ニーズに合わせて2017年には新たに訪問看護ステーションを開設、2019年には地域包括ケア病床を導入しました。現在は、合計144床(一般70床、地域包括ケア22床、療養48床、感染症4床)の病床を有するケアミックス病院として、急性期から慢性期の医療を支えています。

“急性期”とは病気を発症して間もない時期を指し、“慢性期”とは症状が安定したものの継続的な治療が必要な状態を指します。当院はこれらに加えて、通院が困難な患者さんに医療を届ける訪問診療や訪問看護にも対応しています。併設のいすみ訪問看護ステーションとの連携により、「自宅で最期を迎えたい」と希望する患者さんをサポートしていることも、当院の特色の1つといえるでしょう。

先方提供
いすみ医療センター 外観

来院された患者さんに対しては、初期診療をしたのちに対応可能な場合は外来や入院での治療を行います。一方、当院での対応が難しい場合は近隣の医療機関にご紹介するなど、地域連携を通して患者さんに適した医療の提供に努めています。

急性期を脱した患者さんは、必要に応じてリハビリテーションにつなげています。また、要介護認定を受けている高齢の患者さんのうち退院後の自宅療養に不安がある方については、隣接の介護老人保健施設“シルバーハピネス”への入所案内も可能です。

私の専門は甲状腺ですが、当院においては内科一般を診る外来診療が主となっております。また当院の内科は糖尿病・内分泌代謝内科を中心にした専門外来を開設しており、かかりつけの先生からご紹介いただいた患者さんに対する専門的な診療を行っております。

近年の高齢化に伴い、糖尿病や高血圧症をはじめとした生活習慣病の患者さんが非常に増えているように思います。中でも高齢の患者さんの場合はそれらの生活習慣病に加えて認知症など複数の病気を抱えていることもあるため、個々の患者さんに適した治療やケアを行うことが肝要です。たとえば認知症によってインスリン注射が打てなくなった場合にはどのような方法で血糖値をコントロールするのかなど、さまざまな課題に対して適切な解決策を提案しています。

一方で、バセドウ病橋本病に代表される甲状腺の病気は若い世代にも多いため、その方のライフスタイルに合わせた治療を提供できるよう努めてきました。甲状腺の病気に対する治療はいくつかの選択肢がありますが、当院では薬による治療を中心に患者さんのQOL(生活の質)向上をサポートし、手術が必要な方は適した病院へ紹介しています。

先方提供
外来受付の様子

当院がカバーするエリアはいすみ市・大多喜町・御宿町と広範囲にわたり、訪問診療で1軒1軒伺うのには多くの時間と労力を要します。しかし、私たちが伺うのを待っていてくださる患者さんやご家族の期待にお応えしないわけにはいきません。現在は私を含め当院の内科医師は1週間に半日ずつ訪問診療を担当し、エリア内の地理に詳しい看護師が運転する車で訪問診療に対応しています。

ご自宅で療養されている患者さんは、“老々介護”の状態であったり、体の病気に加えて認知症が進行していたりするケースも少なくありません。それぞれの事情を踏まえ、患者さんがその方らしい最期を迎えられるようにサポートすることも、私たちの大事な役割だと考えています。

多くの地方都市でみられる人口減少はそのまま医師不足にもつながっており、当院でも千葉大学や近隣の医療機関からの応援を得ながら日々地域医療を守っています。当院に信頼を寄せてくださる患者さんに、医師不足が原因で「ほかの病院へ行ってください」ということがないよう、できるかぎり対応したいというのが院長である私の思いです。

人材不足を解消する足掛かりとして現在取り組んでいるのが、将来的に当院で働いてくれる医師の育成です。近い将来、千葉大学で経験を積んだ整形外科医が当院の一員になり、高齢の患者さんがお困りの膝・腰の痛みなどにもしっかりと対応できる予定ですのでご期待ください。

またコロナ禍で長く開催見送りが続いていた“健康屋台(千葉大学が中心となって企画している、地域の皆さんに向けた健康相談会)”も無事に再開できました。地域医療に魅力を感じる若き医療者に、この地域に根づいてもらえるよう今後もはたらきかけたいと思っています。

当院は千葉大学医学部附属病院の臨床研修病院、東邦大学医療センター佐倉病院の協力型臨床研修病院として、後期臨床研修医を受け入れています。研修医と上級医がペアを組んで診療にあたるため、マンツーマンでしっかりと指導することが可能です。

またケアミックス病院であるため、大学病院のように1つの臓器だけを専門的に診るのではなく、かぜや肺炎から人生の最終段階における医療(終末期医療*)まで幅広い症例を経験できます。若手のうちから大きな裁量を持って働きたい医師には、非常にやりがいのある職場だと考えています。ご自身の方向性を見出し、将来的に専門性を高めるためにも、積極的に幅広い病気に対する経験を積んでください。

*2015年3月に厚生労働省 検討会において終末期医療から名称変更

当院は地域の方々に親しまれ、非常に大切にされていると感じます。そんな地域の方々への恩返しの意味を込め、「よりいっそう充実した医療を提供しよう」との思いを強くしているところです。地域の医療の窓口としての役割を担いつつ、急性期を脱した患者さんの受け皿となり、さらには訪問看護ステーションなどと連携してご自宅での看取りにも対応する――そんな地域完結型の医療を体現してまいります。

良質な医療を通して地域の方々の健康を守り、患者さんから信頼されているという実感を持てれば、スタッフのモチベーションも上がり、「患者さんの期待に応えたい」と強く思うことでしょう。そうした“地域に支えられ、地域を支える医療機関”を目指して、今後も皆さんとの良好な関係を築いていきたいと考えています。

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