院長インタビュー

建て替えを転機に進めた病院改革 ―西宮周辺の急性期医療を支える明和病院―

建て替えを転機に進めた病院改革 ―西宮周辺の急性期医療を支える明和病院―
山中 若樹 先生

医療法人信和会 明和病院 理事長

山中 若樹 先生

目次
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医療法人信和会 明和病院は、兵庫県西宮市にある総合病院です。耐震基準への対応として建て替えを迫られた同院はそれをきっかけに、病床を減らすのではなく、急性期を担う「明和病院」と回復期・慢性期を担う「めいわリハビリテーション病院」の二病院体制へと再編する道を選びました。
当時は苦渋の決断でしたが、この改革は結果として地域医療構想にも沿う病院機能の分化につながり、地域医療を支える新たな体制の構築へと結実しています。

病院改革の歩みと、その先に見据える地域医療の未来について、理事長の山中 若樹(やまなか なおき)先生にお話を伺いました。

当院は、川西航空機という企業の社員のために設立された4つの付属病院の1つであった鳴尾病院を前身としています。戦後は地域に開かれた病院として西宮市を中心に地域医療を担い、建て替え前は357床を有する総合病院として、救急医療やがん診療、周産期医療、スポーツ整形などの急性期医療に加え、回復期・慢性期医療まで幅広く提供していました。

最近、私たちにとって大きな転機となったのが、耐震基準への対応に伴う建て替えでした。建て替えを構想した2017年当時、当院の建物は最新の耐震基準に合わせて建て替えようとすると廊下の幅や病室の広さを確保する必要があるため、病床数を減らさざるを得ませんでした。試算では、およそ100床2病棟分を減らさなければならない状況だったのです。   

しかし、地域に必要な医療機能を縮小させるわけにはいかない――。そう考えた私たちは、病床数を単純に減らすのではなく、明和病院を分割し、急性期と回復期・慢性期に役割を分けるという決断をしました。つまり、急性期医療は明和病院が担い、回復期・慢性期医療は新たな別の病院で担うという、二病院体制への再編です。

2027年5月オープン予定 明和病院新棟 完成予想図(明和病院ご提供)
2027年5月オープン予定 明和病院新棟 完成予想図(明和病院ご提供)

この構想の第一歩として、建物の老朽化という同じ課題を抱えていた坂上田病院にご賛同いただき、2024年1月に明和病院内にあった地域包括ケア病棟と休床と坂上田病院の療養病棟などの機能を統合した「めいわリハビリテーション病院」を開院しました。構想から実現まで約7年を要しましたが、回復期・慢性期医療を担う体制を整えることができました。

そして、今は、急性期医療を担う明和病院の本館の建て替えにも着手しています。昨今は建築費用などが高騰しており、民間病院にとって建替えは容易な決断ではありませんでしたが、耐震基準を満たし安全で質の高い医療を将来にわたって提供するためには欠かせない投資でした。現在は2027年のゴールデンウィーク頃のオープンを目標に、着々と準備を進めているところです。

二病院体制への再編によって、急性期医療と回復期・慢性期医療という、それぞれの病院の機能を明確に分化させた改革を行うことができました。
急性期を担う明和病院では、救急医療やがん診療、周産期医療、スポーツ整形など、専門的な医療の充実を進めています。来年オープンする新館では新しい外来施設、Op室、ICUなどの他、医療設備の更新も行い、患者さんや医療従事者双方にとってより安全で快適な療養・診療環境を整備する予定です。

一方、めいわリハビリテーション病院では、回復期病棟を新規に立ち上げ、透析医療の可能な地域包括ケア病棟や療養病棟を備え、急性期治療を終えた患者さんの回復や在宅復帰、長期療養を支えています。明和病院での治療後、状態に応じてめいわリハビリテーション病院に移っていただくことで、急性期から回復期・慢性期までスムーズに医療を提供できることが、この二病院体制の大きな強みです。

今後も明和病院とめいわリハビリテーション病院は、それぞれの役割を果たしつつ、地域の医療機関とも連携しながら西宮地域の患者さんに適切な医療を届けていきます。

現在の地域医療は、1つの病院だけが全ての医療を担う時代ではなく、それぞれの医療機関が役割を明確にし、連携しながら地域全体で患者さんを支えていくことを国や行政から求められています。いま振り返ると、このたびの再編はその方針に沿った形で病院機能の分化につながりました。

再編を決断した当時は苦渋の選択でしたが、逆境に思えた出来事でも、知恵を絞り、前向きに行動することで未来につながる――。今回の病院改革は、そのことを私自身が身をもって学んだ経験となりました。

二院体制の構想を進めるにあたっては、多くの課題がありました。なかでも、明和病院から慢性期・回復期の機能が独立して坂上田病院に合流して1つの病院となる過程は、簡単なものではありませんでした。その際、私が最も大切にしたのは異なる風土の組織の融合を円滑に進めることでした。人と人とのつながりです。新しい病院の院長や事務長、看護部長には、人望があり、異なる組織をまとめられる人材を選びました。また、給与体系も2年間は変更せず、職員が安心して新しい環境で働けるよう配慮しました。
働く人が安心して力を発揮できてこそ、患者さんによりよい医療を提供できる――。これもまた、今回の再編構想で改めて気付かされた学びでした。

(キャプション)hinotori(明和病院ご提供)
hinotori(明和病院ご提供)

二病院体制への再編により、明和病院は急性期医療により特化した体制を整えています。その象徴の1つが、体への負担を抑えるロボット支援手術です。

明和病院の外科領域では、患者さんの体への負担を減らすことを大切に考え、内視鏡手術に力を注いできました。その取り組みをさらに進める形で、2023年には国産の手術支援ロボットである「hinotori(ヒノトリ)」を導入しています。

ロボットはアームの設計が新しく、体の中で細やかな動きができるため、傷口を小さく抑えながら緻密な手術をサポートしてくれます。現在は、胃・結腸がん直腸がんをはじめとする消化器系のがん骨盤臓器脱出、ヘルニア虫垂炎さらには前立腺がん、腎がんに対する治療など、幅広い領域で用いられています。 

当院には、このロボットを用いた手術の技術を指導する医師(日本内視鏡外科学会認定プロクター)が在籍しています。そのため、他の医療機関から若手医師が技術を学びに訪れており、ロボット支援手術の普及と人材育成にも貢献しています。

私自身、かつて肝胆膵外科の医師として手術に携わってきた経験から、患者さんをお待たせすることなく小回りを利かせてロボットによる手術を提供し、日常に戻っていただける体制を作ることは、民間病院だからこそ実現できる大切な役割だと信じております。今後も明和病院は新しい技術を積極的に取り入れながら、地域の急性期医療を担う病院として安心して手術を受けていただける診療体制の充実に努めてまいります。

明和病院では、24時間365日いつでも対応できる無痛分娩*体制を整えています。計画分娩だけでなく、夜間や休日を含め、自然な陣痛が始まった場合にも無痛分娩に対応できることが当院の大きな特長です。

この体制を支えているのが、産婦人科・小児科・麻酔医をはじめとする多職種の連携です。無痛分娩は出産時の痛みを和らげるだけでなく、妊婦さんの身体的・精神的な負担を軽減し、より安心して出産に臨める選択肢の1つです。当院では麻酔科医が常時対応できる体制に加え、小児科医も新生児の診療に備えて待機しているため、お母さんと赤ちゃん双方の安全性に配慮した体制の下で安心して出産に臨んでいただけます。

また、当院には小児外科もあり、子どもの鼠径(そけい)ヘルニアや虫垂炎、腸重積など、専門的な手術が必要となる場面でも、小児外科の医師が素早く対応できる体制を整えています。出産時だけでなく、その後のお子さんの健康まで見据えた医療を提供できることも、地域の基幹的な総合病院としての大切な役割だと考えています。

これからも産婦人科・小児科・麻酔科が一体となり、お母さんと赤ちゃんが安心して出産・子育ての第一歩を踏み出せる医療環境を整え、地域の周産期医療を支えてまいります。

*無痛分娩は硬膜外麻酔で分娩時の痛みを緩和します。痛みがまったくなくなるわけではありません。急速に分娩に至る場合もあれば、分娩までの時間が長くなることもあります。赤ちゃんが産まれる際、吸引や鉗子などの器械を使う頻度が高くなります。また、陣痛を促す薬(子宮収縮薬)を使う頻度が高くなります。一方で、分娩中と産後の疲労度が軽減されるとの報告もあり、利点と欠点について十分に説明したうえで、妊婦さん自身に選択していただいています。費用は分娩費用(7日入院49万円~)のほかに無痛分娩の費用として別途10万円がかかります。無痛分娩は自由診療です。

明和アスレティックリハビリテーションセンターの様子(明和病院ご提供)
明和アスレティックリハビリテーションセンターの様子(明和病院ご提供)

急性期医療を担う明和病院では、高齢者の関節疾患、外傷スポーツ障害に対する専門的な治療にも力を入れています。特に膝の前十字靱帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう)や半月板損傷(はんげつばんそんしょう)、肩関節や股関節の疾患など、高齢化、スポーツにおける外傷治療とその後のリハビリテーションには長年力を入れてきました。

院内には、リハビリテーション専門の施設として広々とした「明和アスレティックリハビリテーションセンター」を併設しています。そこでは医師だけでなく、理学療法士やアスレティックトレーナーが1つのチームとなって患者さん一人ひとりをサポートする体制を整えています。競技への早期復帰を目指す選手や、元の健康的な生活を取り戻したいと願う患者さんに向け、治療からトレーニングまでを一貫して行っています。

このような丁寧なリハビリテーションと治療への姿勢が認められ、当院は国際サッカー連盟から「FIFAメディカルセンター」として、神戸大医学部附属病院と兵庫県立リハビリテーション中央病院と共同で認定を受けることができました。スポーツを愛する全ての人が、けがを恐れることなくのびのびとプレーを楽しめるよう、私たちはこれからも全力で寄り添っていきます。

(キャプション)明和ER(明和病院ご提供)
明和ER(明和病院ご提供)

地域密着型の病院として、私たちは北米型ERを採用しており、1次から2.5次救急まで幅広く対応する「明和ER」を設置しています。救急車での搬送数は年間約3,200件、受診される方は年間約7,600名にのぼります(2020年4月〜2021年3月実績)。そのおよそ半数を占めるのが60歳以上の方であり、高齢者救急への対応は現在の地域医療において非常に重要だと考えております。

ご高齢の方の救急でよくみられるのは、誤嚥(ごえん)による肺炎心不全、転倒による骨折、あるいは感染症などです。超高齢社会が進むなか、在宅医療の現場や介護施設から運ばれてくる患者さんに24時間365日体制でしっかりと対応し、地域をお守りしていくことは私たちの大きな使命です。

地域の医療ニーズは時代とともに変化しています。明和病院では、近年の高齢化に伴う変化に応えるため、新たな診療体制の整備にも力を入れています。

年齢を重ねるにつれて生じやすい臓器脱や尿失禁といったお悩みにお応えするため、当院では新たに骨盤底(機能障害・臓器脱)センターを立ち上げました。ここでは婦人科や外科、泌尿器科、リハビリテーション科のスタッフが連携し、1つのチームとして診療にあたっており、投薬や骨盤底筋を鍛える訓練といった負担の少ない治療から、手術支援ロボットを用いた治療まで、患者さんの状態に合わせた選択肢を提案できる体制を整えています。

また、がん診療の充実も私たちの重要な使命です。当院は兵庫県からがん診療連携拠点病院の指定を受けており、手術を軸としながらさまざまな治療を組み合わせる集学的治療を行っています。
併設している「明和キャンサークリニック」では、高精度放射線治療やPET-CT検査、核シンチグラム検査などに加え、電磁波でがん細胞を加温する温熱療法(ハイパーサーミア)にも対応しています。これは厚生労働省に認められた保険適用となっている装置を使用し、化学療法などと併用しながら進める治療です。

(キャプション)PET-CT検査装置(明和病院ご提供)
PET-CT検査装置(明和病院ご提供)
(キャプション)ハイパーサーミア治療装置(明和病院ご提供)
ハイパーサーミア治療装置(明和病院ご提供)

明和病院は病気を見つけて治療するだけでなく、未然に防ぐための予防医療にも注力してきました。2010年に開設した総合健診センターでは、特定健診から人間ドック、PET-CTを用いた検査までさまざまなコース*をご用意しており、検査で何らかの異常が見つかった場合には、そのまま当院でのスムーズな治療につなげられる点が大きな特徴です。病気の早期発見から治療までを一貫してサポートし、地域の皆さんがいつまでも元気に暮らせるようお手伝いをしたいと願っております。

*人間ドックとPET-CT検査は自由診療となります。
■人間ドック・脳ドックコース

日帰り:人間ドック42,900円〜47,300円/ Bコース 45,100円 脳ドックコース 34,100円

1泊2日:人間ドック 67,100円〜72,600円

■PET-CTコース
日帰り:100,100円〜144,100円

1泊2日:155,100円〜177,100円

(各税込み)

(キャプション)めいわリハビリテーション病院 外観(明和病院ご提供)
めいわリハビリテーション病院 外観(明和病院ご提供)

2024年元日に開院した「めいわリハビリテーション病院」は、先にも述べたように3つの病棟が合わさって生まれました。現在は回復期リハビリテーション病床、地域包括ケア病床、療養型病床を合わせて全部で153床を備えており、急性期治療を終えた患者さんが住み慣れた地域やご自宅での生活へ円滑に戻れるよう、リハビリテーションや在宅復帰支援に力を注いでいます。

さらに、回復期のリハビリテーションに加えて、新たに透析設備を導入した点も特徴といえるでしょう。院内では5台の透析装置が稼働しており、透析治療が必要な患者さんであっても、不安なくリハビリテーションや日々の療養に取り組んでいただけるように体制を整えました。

阪神甲子園駅から徒歩15分という立地もあり、お見舞いにいらっしゃるご家族にとっても来ていただきやすい病院になっています。

次世代の医療を担う若手の医師たちには、若い時期にこそ診療の幅を広げるための土台をしっかりと築いてほしいと伝えています。早い段階から自分の専門領域だけに閉じこもるのではなく、どのような患者さんでも診ようとする貪欲な姿勢を持つことがその後の実力を養ううえで必須です。まずは幅広く勉強して骨太の医師へと成長し、専門分野を磨くのはそれからでも遅くありません。超高齢化社会では総合的な診療能力を身につけることが必須です。そのうえで親切で患者さんに寄り添える医師を目指してほしいと願っております。

明和病院は、「いつでも小回りの利く親切な総合病院」でありたい、というのが私の願いです。それを形にするため、院内では「親切・小回りプロジェクト」を進めています。このプロジェクトによって、たとえばがんの疑いがある場合には可能な限り早く精密検査を行い、早期の診断と治療につなげるなど、患者さんをお待たせしない体制づくりに努めています。

また、こうした取り組みを支えるためには、技術だけでなく、患者さんに寄り添う姿勢も欠かせません。当院では、医師や看護師をはじめとする職員同士でお互いの対応を評価するアンケートを実施し、その結果を本人へフィードバックすることで、病院全体の接遇や診療姿勢の向上につなげています。

さらに、病院の中だけでなく、地域へ出向く活動にも力を入れています。公民館で健康講座を開催したり、地域のイベントに参加したりするなど、医師やスタッフが地域の皆さんと直接触れ合う機会を大切にしてきました。病気の予防や健康づくりに役立つ情報をお伝えしながら、地域の皆さんが安心して暮らせる環境づくりに、これからも貢献していきたいと考えています。

*病床数、診療科、提供する医療の内容などについての情報は全て2026年7月時点のものです。

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