けいれんは体が震える、こわばるといった筋肉の収縮に伴う症状が特徴で、どんな子どもにも起こり得るもの、そしてさまざまなきっかけから起こるものです。いざというときに保護者が慌てず適切に対処するには、日頃から正しい知識を身につけておくことが大切です。子どものけいれんにはどのような種類があり、どのような原因で起こるのでしょうか。今回は、埼玉県立小児医療センター 神経科 科長の菊池 健二郎先生に、子どものけいれんに関する基礎知識を教えていただきました。
けいれんとはどのような症状なのか、基本的なところを押さえておきましょう。
けいれんは、手足や体全体の筋肉が自分の意思とは関係なく激しく収縮することによって起こり、体が震える、こわばるといった症状が現れます。てんかん発作のほか、高熱、脱水、低血糖、低酸素状態、虚血、過度の疲労など、原因は多岐にわたります。
けいれんがある=てんかんである、と誤解されることが多いのですが、“てんかん”は病名であり、“けいれん”は“てんかん”の発作の症状の1つです。“けいれん”は“てんかん”以外にも起こる症状であり、また“てんかん”の発作の中にはけいれん(筋肉の収縮)を伴わない非けいれん性のものもあります。
両者を混同することなく、しっかり区別して用語を使うことが大切です。
子どもの年齢によって、起こりやすいけいれんの原因が異なります。ここでは、新生児期、乳児期、幼児期、学童期に分けてみていきます。
新生児期には、出産に伴う低酸素性虚血性脳症、新生児仮死によるけいれんが多く、先天的な脳の形態異常、血糖値やカルシウム値の低下、新生児期発症てんかんによって起こることもあります。
生後6か月以降、“熱性けいれん”がみられるようになります。“熱性けいれん”とは、生後6か月~5歳の乳幼児に起こる38℃以上の発熱を伴うけいれんです。また、大泣きしたときなどに息を吐いたまま呼吸が停止して顔色が悪くなり、けいれんを起こす“憤怒けいれん”も生後6か月頃からみられます。さらに、食事(主に夕食)を取らずに寝てしまい空腹時間が長くなることによる低血糖、新生児期には気付かれなかった先天代謝異常の症状としてけいれんが起こることもあります。そのほか、細菌性髄膜炎が原因になることもありますが、近年はワクチンの普及によりその頻度は減少しています。
乳児期から引き続き“熱性けいれん”がみられます。また、“憤怒けいれん”も2~3歳ぐらいまで起こります。さらに、乳児期と同様に、食事を食べずに寝てしまうなど空腹時間が長くなることによる低血糖、てんかん、熱中症による低ナトリウム血症、そして頻度は少ないものの細菌性髄膜炎も原因になり得ます。そのほか、頭に強い衝撃を受けたことによる脳の損傷(頭部外傷)からけいれんが引き起こされることもあります。
学童期になると熱性けいれんは少なくなり、てんかんによるけいれんの割合が多くなります。また、女子に多い起立性調節障害の一部の方は失神によりけいれんすることもあります。具体的には、学校の朝礼などで長時間立っているときなどに気分が悪くなり倒れてしまい、それに伴ってけいれんが起こります。また、不整脈などの循環器の病気が原因でけいれんが引き起こされることもあります。
ここからは、子どもによく認められる“熱性けいれん”、“憤怒けいれん”、てんかん、失神について、症状などを具体的にみていきます。
熱性けいれんは、生後6か月~5歳の乳幼児に起こる38℃以上の発熱に伴うけいれんで、発熱の原因が髄膜炎などによるものは除外されます。欧米人に比べて日本人は発症率が高く 、7〜11%で起こるといわれています。症状としては、風邪などにより体温が上昇するのに伴って意識がなくなり、白目をむいて体をそらせるように硬直させたり、手足を震わせて顔色が悪くなったりするけいれんを認めます。一部のお子さんでは、けいれんが先に起こり、その後に38℃以上の発熱を認めることもあります。ほとんどのケースでは5分以内に自然に止まります。
熱性けいれんを起こしたお子さんの約70%は生涯に1回のみで済みますが、残りの約30%は2回以上認めます。繰り返しやすい要因としては、両親のいずれかが熱性けいれんを発症したことがある、1歳未満に熱性けいれんを起こしたことがある、発熱からけいれんまでの間隔が短かったことがある(おおむね1時間以内)、けいれん時の体温が39℃以下である、などが挙げられます。
憤怒けいれんは、大泣きしているときに息を吐き続けて顔が紫色になり、呼吸停止状態になって起こるけいれんです。また、驚いたときなど感情の急激な変化がきっかけで起こることもあります。通常しばらくすると自然に呼吸が再開し、回復します。生後6か月から2~3歳ぐらいまでの乳幼児の4~5%にみられます。
てんかんは脳の神経細胞が過剰に興奮し、意識障害やけいれんなどの発作が引き起こされる病気です。日本では約100人に1人の割合でてんかんをもつ人がおり、小児と高齢者の発症が多いです。一部のてんかんでは、幼少期に熱性けいれんを繰り返し、そのうち熱のないけいれんが認められることもあります。
失神から起こるけいれんは、小学校高学年から中学校ぐらいの年代の、特に女子に多い起立性調節障害に伴って認められます。失神は、血圧が低下し、脳に供給される血液量が減少して脳全体が酸素不足になることにより起こります。急に立ち上がったときや排尿時、採血が終わった後などに、めまいや脱力感、発汗や頻脈、顔面蒼白、目の前が暗くなる、耳鳴りがするといった症状とともに意識を失います。この失神に伴い、けいれんを起こすことがあります。
けいれんは多くの場合、3〜4分で自然に止まりますが、長時間持続する(5分以上)、もしくは1回のけいれんが5分未満で止まってもその後にけいれんを繰り返して、けいれんとけいれんの間の意識が十分に戻らない状態を“けいれん重積状態(けいれん性てんかん重積状態)”といいます。
今までは、けいれんが30分以上持続するような場合にけいれん重積状態といっていましたが、最近では、けいれんが5分以上続くと自然に止まる可能性が低くなるため、けいれんが5分以上持続する場合は救急車を呼ぶなどして早期に治療を始めたほうがよいとされています。けいれん重積状態の原因となる病気によっては神経学的な後遺症が残ってしまう可能性もあるため、早めの対応が求められます。地域の医療提供体制によっては、救急車を呼んでから医療機関へ到着するまで時間がかかることもありますので、けいれんが5分以上続いたら迷わず救急車を呼んで医療機関を受診しましょう。
埼玉県立小児医療センター 神経科 科長
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