緑内障とは、なんらかの原因によって視神経が弱化し徐々に視野が欠けていく疾患です。記事1『緑内障とは?徐々に視野が欠けていく症状・原因・失明につながる理由』は、緑内障の原因と症状についてご説明しました。緑内障にはいくつかの病型があり、それらに応じて適切に治療することが非常に重要です。緑内障の分類・検査・治療について、広島大学眼科学教室教授の木内良明先生にお話を伺いました。
緑内障にはいくつかの種類があります。まず、外傷や手術・ほかの疾患が原因となる続発性緑内障と、ほかの原因がない原発性緑内障に大別できます。原発性緑内障は、房水(目のなかを循環する水)の出口である隅角(ぐうかく)が狭くなっている原発閉塞隅角緑内障と、反対に隅角が広くなっている原発開放隅角緑内障の2つにわけられます。そのほかには、先天的に眼圧が高い発達緑内障があります。
【緑内障の分類】
・続発性緑内障
・原発性緑内障
—原発閉塞隅角緑内障
—原発開放隅角緑内障
・発達緑内障
上記の分類のほかに、正常眼圧緑内障があります。正常眼圧緑内障とは、正常範囲の眼圧であるにもかかわらず緑内障であることをさします。眼圧の正常値は21mmHgとされていますが、この数値はドイツの医学研究所で得られた数値であり、現在の日本人には合致しないと考えられます。ただ、新たに数値を設定するとこれまでの研究結果と比較ができなくなるため、基準を変更していないのです。このことから正常眼圧か否かは診断において重要でないことがわかります。
とはいえ、仮に正常眼圧であったとしても緑内障であると診断された場合には、早期の診断・治療が最良であることに変わりはありません。
緑内障の検査ではまず眼底検査、次に視野の検査を行います。それに加えて、OCT(光干渉断層計)と呼ばれる検査を行うこともあります。それらの検査を終えたら、緑内障の病型診断のために隅角(ぐうかく)検査を行います。
眼底とは、眼球の後内壁面を覆う網膜です。眼底検査では、瞳孔を通して眼底を観察し、その働きを調べます。
視野検査とは、まっすぐ前方をみたときに上下左右前方どれくらいまでの範囲をみえるかを調べる検査です。片方の目をカバーし、周辺のみえる範囲に光指標がみつかるかを調べることで、視野の検査を行います。
OCTとは、光を利用して網膜の断面像を得る検査です。患者さんの負担が少なく、光学顕微鏡に近い高画質・高解像度の画像解析が可能です。
隅角検査とは、検査用コンタクトレンズを用いて隅角(角膜と虹彩の間)を観察する検査です。
記事1『緑内障とは?徐々に視野が欠けていく症状・原因・失明につながる理由』で述べた通り一度死滅した視神経は再生不能であるため、緑内障の治療ではその進行速度を抑え、悪化を防ぐ方法を選択します。
緑内障の治療は、以前に比べて格段に進歩しました。現在、緑内障の正しい病理診断が可能になったため、適正な薬物治療、レーザー治療によって症状の進行を抑えることができます。つまり緑内障の治療をするにあたっては、まず正しく病型を診断することがもっとも大切です。緑内障を疑うときには、専門の病院や医師に相談し、早期に正しい治療を始めましょう。
隅角が広くなっているタイプの開放隅角緑内障の治療では多くの場合、眼圧を下げる点眼薬による治療を行います。点眼薬には複数の種類があり、緑内障の病型・重症度・眼圧の高さなどに応じて、個々の患者さんに最適な点眼薬を処方します。点眼薬による治療は入院が不要で手術よりも精神的なハードルが低いため、緑内障治療における最初の方法として選択されることが多くあります。一方、点眼薬治療は効果がダイレクトにみえにくく、継続が難しいというデメリットがあります。
緑内障の治療には、2種類のレーザー治療があります。1つはおもに閉塞隅角緑内障の治療に用いる方法で、虹彩(黒目の部分)に小さな穴を開けて房水の通り道をつくります。もう1つは房水の出口である線維柱帯にレーザーを照射し房水の排出を促進する方法で、一部の開放隅角緑内障に効果的です。いずれも手術が短時間で済むこと、痛みが非常に少なく外来で行えることがメリットです。患者さんが妊娠中もしくは妊娠の可能性がある方の場合、胎児への影響を考慮して、継続的な点眼薬治療よりもレーザー治療を選択することが多いです。
点眼薬治療は患者さんの精神的なハードルが低く、あらゆるタイプの緑内障治療に対応しているため、緑内障に対する主要な治療の1つです。しかし点眼薬治療後にレーザー治療を行うと、治療効果が半減してしまいます。その詳しいメカニズムはわかっていません。しかしながら通常どの薬剤も最初の薬として使うときと、追加して使うときでは、効果が異なります。追加したときの効果は初剤として使われるときより少なくなります。緑内障の治療を選択する際には、慎重に治療順序を検討する必要があります。
ただし、レーザー治療を先に施す方法が緑内障の治療に効果的であることは、半数ほどの眼科医しか認識していないのが現状です。レーザー治療の効果について諸外国ではすでにエビデンス(科学的根拠)が出ているため、日本でも今後さらに認識が広まることを期待しています。もし緑内障の治療について迷ったときには、レーザー治療の症例が豊富な病院を受診する、またはセカンドオピニオンを求めることをおすすめします。
広島大学大学院視覚病態学教室では、緑内障治療に有酸素運動の有効性を示す論文を報告したことがあります。医学部の学生を対象にした実験では、眼圧下降の度合いが運動強度に比例するという結果が出ました。
記事1『緑内障とは?徐々に視野が欠けていく症状・原因・失明につながる理由』でご解説した通り、緑内障の明確な原因は判明していません。しかし緑内障は成人病の一種であると考えることができるため、適度な運動と体重コントロールは、健康増進および緑内障の予防につながるといえます。
今後さらに研究が進み、緑内障の治療について有酸素運動の有効性が確立されることを期待します。
広島大学視覚病態学教室(眼科) 教授
木内 良明 先生の所属医療機関
関連の医療相談が36件あります
緑内障の対処法
人間ドック受けに行ったら緑内障の疑いがあると言われました。市販の目薬や病院処方の目薬などいろいろありますが生活面や薬の注意点対処法があれば教えてほしい。
目薬は使えますか
眼圧を上げずに日常生活を送る上でどの様をしては行けないのでしょうか?
最近 視力が低下したり 視野が狭くなった気がします。
眼鏡をかけていますが だんだん 見ずらくなってきています。 眼科で 検査をしていますが 車を運転するので とりあえず ぎりぎりの 視力ではあります。でも 最近 見ずらくなってきています。緑内障の 視野検査でも 前より 見えない ところが 増えてきました。眼科に 行っています。目薬は 処方されています 緑内障の症状と 視力低下は 関係がありますか?
緑内障治療開始について
昨年、視神経乳頭凹みが年齢にしては大きいとの指摘を受け視野検査を行い、欠損はありませんでした。今年3月に再度視野検査を行い欠損はありませんでした。先日、OCT検査を行い、一部厚さが薄くなっていて赤く写っていました。先生からはまだ問題ないとのことでしたが、欠損が起こる前から薬物療法を開始した方が良いのでしょうか?先生からは欠損が確認できた時点でとの考えのようです。若いので将来が心配です。
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