インタビュー

脳出血のリハビリテーション、早期開始が重要

脳出血のリハビリテーション、早期開始が重要
荒井 好範 先生

社会医療法人財団仁医会 牧田総合病院 理事長

荒井 好範 先生

この記事の最終更新は2016年04月02日です。

脳卒中とは、脳の血管が原因となって脳の中に何らかの障害が起こることをいいます。脳卒中のうちおよそ8割が脳梗塞、すなわち血管が詰まって脳に血液が行き届かなくなる状態で、残りの約2割が脳出血です。脳出血には脳の中に出血が起こる脳内出血とクモ膜下出血の2種類があります。治療においては発症直後の速やかな治療とともに、その後のリハビリテーションを早期に開始することが重要とされています。牧田総合病院の理事長であり脳神経外科部長の荒井好範先生にお話をうかがいました。

一般的な治療の流れとしては、脳卒中の患者さんが救急車で運ばれてきたとき、検査をして脳梗塞なら脳梗塞の治療を、脳出血なら脳出血の治療をします。出血が大きければ手術が必要になりますが、たとえば動脈瘤が破裂して起こるくも膜下出血であれば、緊急にクリッピング塞栓術または血管内コイル術を行います。一刻一秒を争いますので、超急性期の段階で速やかに判断して治療をしていきます。

治療においてはもちろん超急性期治療も大切なのですが、その後には早めにリハビリテーションを始めることが非常に重要です。場合によっては手術当日、遅くても翌日にはリハビリテーションを開始します。当院では脳卒中で運び込まれた患者さんのうち90%は、翌日までに必ずリハビリに入ります。

当院にはSCU(stroke care unit:脳卒中集中治療室)があり、リハビリテーションのスタッフは土曜日・日曜日も勤務しています。ですから、土曜日に入った患者さんも翌日の日曜日にはリハビリテーションを開始できます。本当に危険な状態の方を除き、ほとんどの方は翌日から歩行練習を開始します。廃用といって、体を使わずにいることによって体の機能が低下することを防ぐため、早期からリハビリテーションを開始することが重要なのです。

脳卒中の治療は、発症直後の超急性期の治療だけでは終わりません。短期間のリハビリテーションで家に帰れるような患者さんは少なく、多くの方にはどうしても麻痺が残り、失語(言葉が出てこないなどの障害)がある方や高次脳機能障害がある方もいます。

脳が受けた損傷を100%回復することは難しく、その程度によって症状が残ります。この段階ではまだ後遺症とはいえませんが、急性期病院だからといって、1週間や10数日程度のリハビリテーションだけで終えて、患者さんを家に帰してしまうというわけにはいきません。やはりその後もリハビリテーションを継続していくことが必要です。ある程度安定した段階でのリハビリテーションと治療は、脳卒中治療において急性期治療と同じように大切なことです。

脳卒中の約2割を占める脳出血は、脳の中に出血が起こる脳内出血とくも膜下出血の2種類に大別されます。

脳内出血は明らかに高血圧が主な原因ですが、くも膜下出血は動脈瘤が原因です。動脈の中でもともと脆弱な部分があると、血流の圧力でその部分が風船のようにふくらみ、ある日突然破れて出血してしまうというものです。くも膜下出血は発症後すぐに亡くなる方が多く、およそ3分の1の方が命を落とすことから、メディアなどでも大きく取り上げられています。

くも膜下出血は死に至る恐ろしい病気ではありますが、統計的にみるとその発症件数は減ってきています。それは動脈瘤が破れる前に脳ドックなどで発見され、未破裂のうちに治療されていることが原因であると考えられます。どの病院でも件数は減少傾向にあり、牧田総合病院でも10年前に比べて明らかに減っているといえますが、それでもまだ年間に約30人の患者さんが手術を受けています。

この当院がある東京都大森区の周辺地域でも、食生活が不規則な若い男性などに脳内出血が比較的多くみられます。高血圧がありながらそれを放置していることや、睡眠時無呼吸症候群は脳内出血の危険要因のひとつです。

たまたま最近、脳出血後のリハビリを終えて在宅治療になった患者さんが、睡眠時無呼吸症候群で検査に来られました。こういった方は脳出血の再発を防ぐため、今後きちんと治療をしていくことが大切です。そこで一番重要なのは血圧コントロールです。そのためには当然、適切な内服薬による治療も行なわなければなりませんし、食事の指導や運動の指導など、生活習慣病の指導をしつつ、先ほど申し上げた睡眠時無呼吸症候群の検査・治療を行うなど、そういった外来でのフォローが大切です。

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