初期の段階では、自覚できるような症状が現れにくいという食道がん。その食道がんのリスクを高める原因は、飲酒と喫煙であるといわれています。そのリスクのある方ほど、「きっと自分は大丈夫」という考えから、健康診断や人間ドックの受診をされないことがあります。しかし、食道がんを早期段階で発見するためには、定期的に検査を受けることが大切であると山田 和彦先生はおっしゃいます。
食道がんが疑われる場合には、どのような検査を行うのでしょうか。検査内容や診療の流れ、さらには国立国際医療研究センター病院で行われる検査の特色について、同院の山田 和彦先生にお話を伺いました。
食道がんの診断および治療方針を決めるためには、いくつかの検査を行う必要があります。
一般的に行われる検査としては、上部消化管内視鏡検査やPET検査、CT検査、上部消化管造影検査、超音波(エコー)検査などが挙げられます。当院でも同様に、患者さんの状態などを踏まえたうえで必要と判断される検査を行っていきます。
上部消化管内視鏡検査は、口あるいは鼻から“胃カメラ”と呼ばれる内視鏡スコープを挿入して、食道や胃、十二指腸に病変がないかを調べる検査です。
上部消化管内視鏡検査は、食道の粘膜の色やでこぼこを確認することができ、異常な組織が確認された場合には、その部分を採取することも可能です。さらに、がんが発見された場合には位置や広がり具合なども確認することができ、そのうえ比較的患者さんに負担の少ない検査でもあります。
患者さんの中には、「内視鏡検査は苦しそう」というイメージから上部消化管内視鏡検査を受けることに対して不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、口からスコープを挿入する経口内視鏡検査であれば麻酔で鎮静してから行うこともでき、比較的負担を感じずに受けられるようになってきています。
上部消化管造影検査は、バリウムと呼ばれる造影剤を用いて臓器を膨らませた状態で、X線で撮影することにより異常を確認する検査です。食道、胃、十二指腸にある病気を調べることができ、位置や大きさ、広がり具合を確認することが可能です。
PET検査は、がん細胞がブドウ糖を取り込みやすいという特性を利用して、放射線ブドウ糖を注射したうえで、ブドウ糖の取り込まれる分布を撮影する検査です。基本的に1回の検査でおおよそ全身の検査を行うことができ、ブドウ糖と同様の性質を持つ薬剤を用いることからアレルギー反応などの副作用も起きにくく、比較的患者さんへの負担が少ない検査でもあります。
食道がんはPET検査で発見しやすいがんであるとされており、胃がんや大腸がんに比べてその描出率が高いことが知られています。
CT検査は、X線で体内の断面図を見るために行われる検査で、がんの進行度を調べるためにも重要な検査の1つです。
がんの大きさや広がり具合、リンパ節への転移および肝臓や肺への遠隔転移の有無などを調べることが可能です。また、病変部位を立体的に描写することもできるため、PET検査などと併せて行うことでより検査の精度を高めることができます。
超音波検査は、体の表面から超音波を当てて、臓器から反射した超音波を映像化する検査です。主に、頚部や腹部の検査を行いますが、上部消化管造影検査やCT検査のような被ばくの心配はありません。
食道がんであると診断をされた場合には、まずがんの進行度を調べます。がんの進行度は、一般的にステージと呼ばれる病期に合わせた分類によって示されます。食道がんの治療では、このステージを基準に、選択する治療方法を検討することになります。よって、ステージが決まると治療方針についてもある程度絞られるようになり、内視鏡治療、外科治療、放射線治療、抗がん剤治療(化学療法)の4つの治療法の中からステージごとに適した治療の選択を行います。場合によっては、それらの治療法を組みわせて行うこともあります。
また、食道がんは高齢の方に多い傾向があり、患者さんの中にはすでに何か別の病気を持っていたり(併存疾患)、合併症を起こしやすい体質であったりする方もいらっしゃいます。そのため、治療を受けるにあたり、ほかの病気を持っている場合や合併症が生じた場合の対応などについて、医師に相談しておくことも大切になるでしょう。
※治療の内容については、『食道がんにおけるステージの分類と治療の選択基準、および治療内容の実際』で詳しくご説明します。
当院では、内科の先生に依頼して、可能な限り1週間以内に内視鏡による精密検査やPET検査を行うようにしています。PET検査は専門の施設を併設しており、PET検査を受けるために待つ期間が短縮され、より早く検査を受けられるようになっています。高齢化に伴い併存疾患を多く有する方が増えているため、多くの内科疾患や感染症の対応が可能です。
また、検査で食道がんが見つかった方に同意をいただき、採取した検体を併設する国立国際医療研究センター研究所に提供しています。その研究所と協力体制を組んで、治療の効果や抗がん剤が効きやすい方と効きにくい方の違いなど、将来のがん治療をよりよいものにするための共同研究を行っています。
当院では、これからも食道がんについて不安に感じている方が安心して受診できる体制を整えていきたいと思います。
国立国際医療研究センター病院 食道胃外科 医長
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