ずいまくえん こども

髄膜炎(こども)

脳

目次

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概要

脳や脊髄は、髄膜と呼ばれる膜によって保護されており、髄膜と脳・脊髄の間には髄液という液体で満たされています。髄膜炎とは、髄膜及び髄液に炎症が生じた病気を指します。

主にウイルス、細菌を始めとした感染症の一形態であることが多いですが、中には悪性腫瘍や自己免疫疾患、薬剤など感染症以外のものが原因となって引き起こされることもあります。

長期的な後遺症を残したり、最悪の場合亡くなられたりすることもあるため、早期の診断と治療的な介入が必要です。

原因

髄膜炎は、髄膜に炎症を引き起こしている原因によって分類されることがあり、大きくは感染性と非感染性に分けることが出来ます。

感染性

ウイルスや細菌、真菌(カンジダやアスペルギルスなど)や結核などが原因となり得ます。一般小児で最も遭遇することが多いものは、ウイルス性髄膜炎です。

特にエンテロウイルスは、夏風邪(手足口病やヘルパンギーナ等)を引き起こすとてもありふれた病原体であり、エンテロウイルスによる髄膜炎は小児(特に幼児期)におけるウイルス性髄膜炎の大多数を占めています。

その他小児に多い原因としては、おたふく風邪の原因ウイルスであるムンプスウイルスに伴う髄膜炎を挙げることができます。自然罹患に伴う髄膜炎発症率は、およそ10%と比較的よく見られる合併症の一つです。 エンテロウイルスやムンプスウイルスに伴う髄膜炎は、長期的な予後は良好なのですが、中には合併症の発生率が高いウイルスもあります。ヘルペスウイルス(特に2型)はそのうちの代表的なものであり、性感染症に関連して生じることがあります。

また、予防接種に導入されている日本脳炎の原因ウイルスはその名前が示唆する通り通常は脳炎を引き起こしますが、髄膜炎を発症させることもあります。さらにHIVも髄膜炎の原因となりえます。 ウイルス性に比較して頻度は圧倒的に稀ですが、細菌性髄膜炎は合併症の発生率・致死率がとても高く、年齢に応じて原因となる細菌も異なっているのが特徴です。

新生児は、主に膣を介して出生することを反映し、同部位によく見られる菌(B群連鎖球菌や大腸菌)が原因となることが多いです。また乳児期中盤以降は、少しずつ行動範囲が広がることを反映し、気道感染の一般的な原因である肺炎球菌やインフルエンザ桿菌(Hib)が増えてきます。

その他、髄膜炎菌やリステリアなども原因となります。 その他、真菌(カンジダ、クリプトコッカス、アスペルギルス等)や結核等も髄膜炎の原因となりますが、お子さんに特殊な背景を伴うことが多いです。

真菌は、免疫機能が落ちたお子さん(ステロイドを長期に内服している、抗癌剤で治療を受けているなど)に見られることが多いです。結核においても免疫機能との関連性は重要であり、免疫力の落ちている状況でより髄膜炎を発症しやすいです。また、ご家族に結核菌をもっている方がいて、そこからお子さんにうつる、という感染様式が一般的です。

非感染性

非感染性のものとしては、悪性腫瘍(白血病やリンパ腫)、自己免疫疾患(SLEやベーチェット病など)、薬剤(抗生物質や抗けいれん薬、シクロスポリン等の免疫抑制剤)などを挙げることができます。

症状

原因に関わらず髄膜炎で一般的に見られる症状には、頭痛、首の痛み、嘔気、発熱、けいれんや発疹があります。

小児、特に1歳未満の乳児においてはこうした症状が明らかでないことも多く、機嫌が悪い、哺乳が悪い、意識がもうろうとしている、少しの刺激で泣く(抱きかかえる等)、等の症状を呈することがあります。乳児は自覚症状を訴えることは出来ず、こういった症状に注意を払うことがとても重要です。

その他、原因に応じた特徴的な症状を見ることもあります。例えばエンテロウイルスによる髄膜炎であれば、手足口病やヘルパンギーナに続発して髄膜炎が発症することから、それぞれの病気の症状(手足の発疹、口の中の水ぶくれなど)を同時に見ることがあります。またムンプスウイルスであれば、耳下腺が腫れていることもあります。

検査・診断

主に、髄液検査と血液検査に基づいて髄膜炎の診断がされます。髄膜炎は髄液に炎症を起こす病気であることから、このことを確認するために背中から針を刺して髄液を採取する検査が行われます。

また、髄液中に原因となっているウイルスや細菌などを同定することも重要です。この目的のために、採取された髄液を用いて、培養検査やPCRと呼ばれる特殊な検査が併用されます。

また髄膜炎は、血液を介して全身に病原体が波及することで発生していることもあります。そのため、血液中に原因となっている病原体がいないかどうか同定するための検査(培養検査など)も行われます。

髄膜炎では、頭蓋内の圧力が高くなっており、時に、髄膜炎を引き起こしている原因が脳内に腫瘤として確認できることもあります。こうしたことを評価するために、頭部CTを代表とした画像検査が行われることもあります。

治療

ウイルス性の髄膜炎は、多くの場合は対症療法が主体になります。発熱や頭痛に対しては解熱鎮痛剤が使用されます。経口摂取がうまくいかない場合には、点滴による水分補給がされることもあります。ヘルペスウイルスが原因の場合は、抗ウイルス薬が使用されます。

細菌性髄膜炎の予後は悪く、早期の治療介入が必要です。年齢から想定される原因菌をしっかりとカバーできるような抗生物質が点滴で投与されます。また、髄膜に生じている炎症に伴う組織破壊を軽減することを目的として、ステロイドが併用される場合もあります。

その他、真菌や結核に対しての髄膜炎が疑われる時には、それぞれ抗真菌薬や抗結核薬が使用されます。また非感染性のものであれば、それぞれ特異的な治療が随時選択されることになります。

髄膜炎の経過中には、様々な合併症が生じることがあります。例えばけいれんを起こしたときには、抗けいれん薬が使用されます。こうした補助的な治療が必要になることもあります。

髄膜炎の一部は、ワクチン接種にて発症を予防することが可能です。2017年現在までのところ、肺炎球菌やHibは定期接種として導入されていますし、ムンプスウイルスに対しては任意接種ながらワクチンが利用可能です。

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