概要
ダウン症候群とは、“ダウン症”とも呼ばれ、21番目の染色体が通常であれば2本のところ3本になっている染色体異常(トリソミー)があることです。染色体異常の中でももっとも頻度が高く、新生児の約600~800人に1人がダウン症候群だといわれています。
特徴として心身の成長が全体的に緩やかであり、見た目などいくつか共通している部分があります。このほか、合併症を伴うことも多いですが、最近の医療や療育、教育は進んでいることから、多くの人が普通に学校・社会生活を送っています。
ダウン症候群の成長や生活などについては、主治医をはじめ、多くの経験を持つ専門の医師や特別な支援団体に相談しながら、その子に合ったサポートを受けることが可能です。
種類
ダウン症候群は、染色体の構造の違いによって3種類に分類されます。
標準型(トリソミー型)
ダウン症候群全体の約95%を占める種類で、突然変異から21番目の染色体が3本になることによって生じます。
両親の染色体が正常であっても生じることがありますが、母親の年齢に伴ってダウン症候群のある子どもが生まれる確率が高くなると考えられています。
転座型
ダウン症候群全体の約3%を占める種類で、いずれかの親の21番目の染色体の1部分がほかの染色体に付き、その一部が3本になることによって生じます。
どちらかの親が転座型の染色体を持っている場合に生じることがあり、次の出産でもダウン症候群のある子どもが生まれる確率が高くなるとされています。
モザイク型
転座型よりさらに珍しい種類のダウン症候群で、全体の約2%を占めます。
正常な染色体を持つ細胞と、21番目の染色体が3本になっている細胞が混合していることが特徴です。両親の染色体が正常であっても生じることがあります。
原因
ダウン症候群は、細胞内の21番目の染色体が従来2本であるところ、何らかの原因によって3本になることで生じます。通常は遺伝などに関係なく偶発的に生じることがほとんどですが、まれに生じる転座型では両親のいずれかに転座型の染色体がある場合に生じる可能性があります。
また、母体の年齢がダウン症候群の発症率と深く関与すると考えられています。年齢が高くなるにつれ卵子の老化も重なり、ダウン症候群をはじめとした染色体異常が生じるリスクが高まります。実際、母親が20歳代では1,450~1,050人に1人、30歳代では940~110人に1人、40歳以降では100人をきるというデータが報告されています。
症状
ダウン症候群では、見た目や成長発達面の特徴や生まれつきの心臓・消化器の奇形、合併症などがみられます。
見た目の特徴
ダウン症候群の人は特徴のある顔立ちをしており、共通する部分として、全体的に平坦な顔貌、厚い唇、大きな舌、つり上がった目などがあります。
また、手足の指掌紋に特徴が現れることもあります。たとえば、指紋が円ではなく横に流れる模様が多発していたり、手のひらの横一直線に深いしわが生じていたりすることがあります。
成長発達の特徴
成長発達面では、筋力や言語発達の遅れがみられます。たとえば筋力が弱いために、寝返りやひとり歩きなどができるようになるまでに時間がかかることもあります。また、物事を理解するまでに時間がかかってしまうこともあるため、おっとりした性格のように感じられることもあります。
このほか、話し始めるのが遅いこともあります。言語理解は比較的よいものの言葉を発しても不明瞭になりやすく、語尾だけを声に出したり、言葉を文章にして話すことが難しい場合もあります。
合併症
ダウン症候群においては身体的な合併症が生じることも多く、循環器、消化器、耳鼻咽喉科、整形外科、血液内科と、多方面の診療科にまたがった合併症が生じる可能性があります。
具体的には心臓の病気(心内膜欠損症など)、悪性腫瘍(白血病など)、消化器疾患(十二指腸閉鎖、鎖肛など)や、そのほか難聴、白内障、斜視といった感覚の障害、糖尿病、肥満といった内分泌の障害も時間の経過とともに現れることがあります。
検査・診断
ダウン症候群の検査は主に妊娠中と妊娠後に行われ、それぞれで検査内容が異なります。
妊娠中の検査・診断
妊娠中にお腹にいる子どもがダウン症候群であるか、または何らかの病気があるかを調べることができ、これを出生前検査といいます。
ダウン症候群では、主に臓器に異常がないかを調べる超音波検査と、染色体に異常がないかを調べる遺伝学的検査が行われます。遺伝学的検査には種類があり、主に母体の血液を用いて調べます。ただし、これらは誰もが行えるわけではなく、強い希望がある場合や特別な理由が存在する場合、指定の条件に該当する場合のみ行われることが一般的です。
このような検査でダウン症候群の疑いがある場合には、確定診断として腹部に針を刺して羊水や絨毛(じゅうもう)を採取する羊水検査、絨毛検査が行われます。
出生後の検査・診断
出生後のダウン症候群の診断は特徴的顔貌から疑われ、各種臓器検索をする過程で染色体検査により確定されます。この場合、自身の血液を用いて調べます。
治療
ダウン症候群は染色体異常が原因であり、染色体を根本的に治療する方法はありません。そのため、成長や発達、各種合併症に対して多方面の診療科の医師と連携しながら必要に応じた治療やサポートが行われます。
合併症の治療
ダウン症候群でみられる合併症はさまざまで、それぞれ治療方法は異なります。たとえば、十二指腸閉鎖や鎖肛などがみられるケースでは、生後すぐに手術が必要となることもあり、先天性心疾患でも子どものうちに手術が検討されることがあります。また、大人になってからも生活習慣病や近視、中耳炎などさまざまな合併症がみられることがあるため、必要に応じて治療を受ける場合もあります。このような治療は一例で、生じる合併症には大きな個人差があり、年齢とともに変化する側面もあります。そのため、年に一度は健康診断を受けるなど長期的なケアが必要です。
成長や発達に応じたサポート
ダウン症候群では成長発達に遅れがみられることもあるため、生涯にわたってサポートが必要な場合もあります。乳幼児期以降からは、各専門家による理学療法、作業療法、言語聴覚療法などの療育*が行われることがあります。また、就学・就労にあたっても各個人の発達の程度に合わせて選択することが大切です。成長に応じた悩みや困りごとについては、主治医をはじめ、多くの経験を持つ専門の医師や特別な支援団体に相談し、その子にあったサポートを受けることが可能です。
*療養:子どもたちの成長や暮らしをさまざまな面からサポートすること
情報・相談先
- 公益財団法人 日本ダウン症協会
- NPO法人 親子の未来を支える会
- 各自治体の相談窓口、支援センター
など
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