DOCTOR’S
STORIES
サイエンスの視点を大切に、心臓血管外科の分野で挑戦を続ける澤芳樹先生のストーリー
「道」は切り拓くもの。これが私のポリシーです。すでに整えられた道の上を歩くことには、あまり興味が湧きません。
自ら道を切り拓くためには、日々の臨床・研究において「サイエンス(科学)」の視点を持ち、医師としての洞察力を磨くことがたいへん重要です。サイエンスとは、真理の追究です。ただ現象を捉えるだけではなく、なぜそのような現象が発生しているのか、というメカニズムにまで思いを巡らすことで、実りある応用研究が成立します。その繰り返しが、明日の医療をつくる動きの一翼を担うのです。
私が医師を志した経緯、そこには家族の影響が少なからずあります。
祖父は、旧 大阪医学校(大阪大学医学部の原点)の卒業生です。ところが、医師として働き始めて間もなく、腸チフスの患者さんを治療中に自らも腸チフスに感染し、24歳で他界しました。殉職という形であったと聞いています。祖父は若くして亡くなりましたが、祖母は祖父の仕事を誇りに思っていたのでしょう。私は幼少の頃より、家族から「医者になれ」という期待を受けて育ちました。
そのような背景がありつつ、実のところ、幼い頃から機械をいじることや乗り物が大好きで、あるときまでは工学系に進みたいと考えていました。中学時代にはバスケットボールにのめり込み、365日中363日は練習、という日々を送りました。3年生の頃に、バスケットボールの強豪校からスカウトされたこともあります。あのときスカウトを受け入れていたら、今とは全く違う人生だったでしょう。
母の従兄弟も大阪大学医学部出身で、医師として忙しく働いていました。高校2年生の頃だったと記憶していますが、彼が私の家に遊びに来てくれたとき、しきりに「君に、僕の後を継いでほしい」と口にしたのです。そのときは、冗談半分だろうとあまり気にしていなかったのですが、その半年後、彼は交通事故に遭い、27歳という若さで他界しました。
その後、彼の言葉が、頭のなかを幾度も巡りました。こんなにもあっけなく人は死んでしまうのだ、という悲しい衝撃は、10代の私の価値観を揺さぶるには十分なものでした。それまで、興味のある分野ばかりに注目し、工学系の道に進もうと考えていた私が、「人のために働く」ということを初めて真剣に考えた瞬間です。そこから、本気で医学部への進学を目指しました。
もともと勉強よりも手先の器用さに自信があったので、外科分野に進むことについて迷いはありませんでした。そして、「せっかくなら難しいほうがいい」と思い、心臓血管外科に進みました。心臓血管外科医として、さまざまな患者さんを担当してきましたが、命にかかわる病気を抱える方々に対して治療を行い、元気になって笑顔を見せてくれる瞬間は、心底、嬉しいものです。
ハードルが高いほど、それを越えようと挑戦する気持ちが強くなります。天邪鬼なのかもしれませんが、誰かがつくった道の上を歩くより、前人未到の領域に足を踏み入れ、自ら道をつくりたいと思いますし、実際、そのように生きてきました。
現在は、iPS細胞からつくった心筋細胞による心筋再生治療の開発と臨床研究を進めています。この研究は、心筋再生治療を重症の虚血性心筋症の患者さんに対して行うことで、将来的には、患者さん自身の心機能を回復させることを目指しています。
サイエンスによって新たな治療が誕生し、それまで助からなかった患者さんを治療できるようになる。このような希望は、私にとって大きな原動力です。
現在、「大阪心臓血管外科の会」の活動に力を入れています。大阪心臓血管外科の会は、日本、そして世界における「明日の医療」を支えるアカデミック・サージャン(academic surgeon)の育成を目的とした教育・研究機関です。その根幹には、大阪大学心臓血管外科が発足より脈々と受け継いできた、サイエンスを大切にし、限界に挑戦し続けるという姿勢があります。
大阪心臓血管外科の会では、関連病院間の人材派遣と人材育成、他施設との共同研究、データベースの構築と活用を行っています。今後は、留学制度・奨学金補助システムの構築と運用、シミュレーターを用いた手術手技のトレーニングなどにも注力したいと考えています。
私はいつも、若手の医師に「世の中で輝き、必要とされるスタープレイヤーになってほしい」という言葉で、エールを送ります。誰にでも、スタープレイヤーになる資格とチャンスがあります。
世界では、優秀な人材が求められている。私たち大阪心臓血管外科の会は、若手医師たちの才能を伸ばし、国内はもちろん、世界で活躍するスタープレイヤーを育成するために、全力を尽くす決意です。
2014年より、関西から健康・医療イノベーションを発信・推進する「inochi未来プロジェクト」の活動を行っています。これは、医療者・企業・行政・市民の皆さんが命の大切さと未来について考え、行動するプロジェクトです。具体的には、中学生から大学生、若手の医療従事者がスピーチやディスカッションを行う「inochi未来フォーラム」、サンタクロースの衣装を着て街中を走り、病気と闘う子どもたちを支援するチャリティーイベント「Great Santa Run(グレートサンタラン)」などを開催しています。
私は、大阪で生まれ育ち、心臓血管外科医になりました。一人の医師として懸命に患者さんの治療にあたっていますが、その一方で、世界のどこかで戦争で命を落とす人々がいる。
私に何かできることはないか、と考えました。そこで、まずは自分に近い関西から、命について考え、行動しようと思ったのです。医療者や行政だけではなく、企業や市民も一体となり、大阪や関西、そして日本全体が、みんなで支え合いながら、健康で長生きできる場所になることを目指しています。
「inochi未来プロジェクト」について、詳しくはこちらをご覧ください。
この記事を見て受診される場合、
是非メディカルノートを見たとお伝えください!
大阪大学医学部附属病院
大阪大学大学院 医学系研究科 皮膚科学 教授
藤本 学 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学
柏木 浩和 先生
大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科 教授
宮川 繁 先生
大阪警察病院 血管内治療センター センター長、大阪大学大学院医学系研究科 低侵襲循環器医療学 特任教授
倉谷 徹 先生
大阪大学医学部附属病院 消化器外科 講師
植村 守 先生
大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科 特任准教授
山内 孝 先生
大阪大学医学部附属病院 皮膚科 特任講師(常勤)
植田 郁子 先生
大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科学 准教授
島村 和男 先生
大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 特任教授、大阪大学大学院医学系研究科 脳機能診断再建学共同研究講座 特任教授
平田 雅之 先生
大阪大学 大学院医学研究科 内科系臨床医学専攻 血液・腫瘍内科学 招聘教授
西村 純一 先生
大阪大学 大学院医学系研究科 感染制御医学講座(感染制御学) 教授
忽那 賢志 先生
大阪大学大学院・医学系研究科 精神医学教室
池田 学 先生
大阪大学 大学院医学系研究科 消化器内科学 教授、医学博士
竹原 徹郎 先生
菅野 伸彦 先生
大阪大学 大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授
猪阪 善隆 先生
大阪大学医学部医学系研究科 外科学講座消化器外科学 教授、病院長
土岐 祐一郎 先生
大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学小児科学講座 教授
大薗 恵一 先生
大阪大学大学院 医学系研究科神経内科学 教授
望月 秀樹 先生
大阪大学医学部附属病院 皮膚科 診療科長、大阪大学 大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科教室 教授
片山 一朗 先生
大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学) 主任教授、大阪大学大学院医学系研究科 研究科長補佐、大阪大学医学部附属病院未来医療開発部 部長、大阪大学先導的学際研究機構生命医科学融合フロンティア研究部門 部門長、大阪大学医学部附属病院 AI医療センター長
西田 幸二 先生
大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室 教授、日本産科婦人科学会 理事長
木村 正 先生
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 成育小児科学 特任教授
酒井 規夫 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学 教授、大阪大学医学部附属病院 副病院長
坂田 泰史 先生
大阪大学 大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学 教授
熊ノ郷 淳 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 内分泌・代謝内科学 講師
片上 直人 先生
大阪大学医学部附属病院 特任助教
和田 範子 先生
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。