院長インタビュー

伝統と革新の両輪で駆け抜ける岡崎市民病院

伝統と革新の両輪で駆け抜ける岡崎市民病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

愛知県岡崎市にある岡崎市民病院は、愛知県中部の地域医療を支える中核拠点として急性期から三次救急まで対応する総合病院です。2024年度にDPC特定病院群(厚生労働省から大学病院本院に準ずる機能を有すると認定された病院)に認定され、さらなる専門的な医療や診療体制の充実に取り組む同院の地域での役割や今後の展開について、院長である小林 靖(こばやし やすし)先生に伺いました。

当院は1878年に愛知県公立病院岡崎支病院として開設し、明治から令和の今日にいたるまでの147年余りを地域医療に捧げてきました。長い歴史の中で医療体制は確固たるものになり、例えば三次救急の応需率(救急車を受け入れた割合)は95%を越え、急患の入院率とともに全国平均から見てかなり高い水準を保っています。外科手術の専門性も高く、がん治療や血管内治療をはじめ多様な医療ニーズに対応しています。

当院のある岡崎市は、トヨタ自動車で知られる豊田市に隣接する西三河地域の中心都市です。人口はここ暫く横這い状態ではあるが労働人口は比較的多く、若者と手を取り合いながら高齢化社会への対応を急ぐ必要があります。また、中核市にしては医療インフラが少ない地域なので、救急医療の地域の運用体制をさらに充実させていかなければならないと考えています。

先方提供

 

当院は、地域に先駆けて1981年に救急救命センターを開設しました。2015年には救急救命センター棟を新築し、ER(救急外来)を刷新するとともに、ECU(救命救急センター病棟)を新たに設置し、県内有数の医療設備を整えました。“対応できない症例は無い”と言い切れるほど当院の救急医療は成熟し、スピーディーかつ的確な医療を提供しています。

また、岡崎市を含む西三河医療圏の第三次救急医療機関の1つとして、24時間365日の救急体制を確立しています。現在は年間9,000台以上の救急車を受け入れ、応需率は95%以上をキープしています。入院患者さんの半数以上は救急搬送であり、地域の救急を受け止める役割を担っています。

さらにドクターカーの運用をはじめ、ドクターヘリの積極的な受け入れ、“家康行列”(徳川家康にちなんだ市民による時代行列)や花火大会など地域のイベントや行事における医療救護活動も当院の役割です。

これからも当院は三次救急に特化した病院として、地域の二次救急を支える医療機関のほか消防機関やクリニックとも連携を取り、地域医療に貢献していきたいと思います。

手術室の運用については、管理をより中央統括化するために、取材時点で「昨年4月」に「手術センター」を設置しました。従来から「手術運営委員会」はありましたが、各診療科間の調整役にとどまりやすい面がありました。そこで、管理部門としてセンターを整備し、病院としての方針を運用に反映しやすい体制を作っています。

例えば、手術の入れ替え時間を短縮するために、現場の連携をより密にするなどの取り組みをセンター主導で進めています。午前の手術が終わった後、午後の開始までに稼働率が落ち込む時間帯が生じることがありましたが、入れ替えをスムーズにすることで、その落ち込みを減らし、全体の手術時間の確保につなげています。

当院の手術室は13室あり、周術期医療を支える麻酔科医は常勤で8名ほど在籍しています。一方で、手術件数に見合う体制を維持するために、外部の医師にも協力を得ながら運用しています。

当院は外科の診療窓口として減量手術センターを設けています。減量手術とは、肥満が原因で高血圧糖尿病などを併発している患者さんを対象に、胃を小さく切除するなどの方法で肥満症を改善するものです。

当院では、2015年に日本で唯一の医療保険術式である腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を導入して以来、2024年までに累計195例の減量手術を行っています。肥満外科手術実施施設にも認定されており、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を保険診療として行える日本有数の病院として、着実に症例数を積み重ねています。

減量手術はリバウンドの回避などを目指し、医学的なアプローチで肥満を改善する手法です。美容クリニックでの脂肪吸引などとは目的が全く異なりますので、内科的治療で肥満を改善できなかった患者さんの最終手段として役立てられれば幸いです。

当院の地域周産期母子医療センターは、岡崎市唯一の総合病院の産婦人科として“安心して妊娠・出産に臨んでもらいたい”という想いを持って、周産期に関わる高度な医療を24時間体制で提供しています。周産期の救急医療にも注力し、ハイリスク分娩や超緊急帝王切開などにも迅速に対応できる盤石な医療体制を整えています。これから妊娠を希望される方に向けて、子宮外妊娠や良性卵巣腫瘍子宮筋腫などの疾患に対応したラパロ外来(腹腔鏡手術)やリプロ外来(不妊生殖医療)を設置しているのも当院の特徴です。

また、同センターでは、出生前診断と周産期メンタルケアのさらなる充実を目標に掲げています。出生前診断においては最新の診断機器を導入し、胎児超音波診断の精度の向上をはじめ、母体血を用いた新しい出生前医学的検査(NIPT)や遺伝カウンセリングの実施などに取り組んでいます。また周産期メンタルケアにおいては、産後うつ病などの不安に対し、行政やソーシャルワーカーと連携しながら母子とそのご家族を支援できるような体制を整えていきます。

当院は厚生労働省からがん診療連携拠点病院の指定を受けており、多くのがんの診断から手術、化学療法、放射線療法、緩和ケアやがん相談のサポート体制まで、がん診療に関わる機能をトータルに揃えています。2019年からは愛知県がんセンター愛知病院の経営を引き継ぎ、地域におけるがん診療の要としてさらに進化しています。

がん治療においては、手術支援ロボット "ダ・ヴィンチXi”を導入し、より綿密で正確な治療を行っています。2025年5月からは2台目も導入しました。現在、泌尿器科、消化器外科、産婦人科、呼吸器外科の4科で活用中で、累計1000症例以上を数えています。2台ともXiで揃え、必要に応じてダブルコンソールの体制を取ることで、教育面でも運用しやすい環境を整えています。
また胃がん大腸がんなどに腹腔鏡手術を取り入れ、患者さんの体への負担が少ない低侵襲治療を実践しています。

さらに当院は、がんゲノム医療に注力し、2020年よりがんゲノム医療連携病院に指定されました。がんゲノム医療とは、事前に患者さんの遺伝子情報を調べることで、がんの発症を予防したり、患者さんに最も適した治療薬を選ぶことができる方法のことです。その一環として次世代シークエンサーと呼ばれる解析装置を用いたがん遺伝子パネル検査を採用し、現在は、乳がん肺がんの検査などに取り入れています。
また、2025年には院内に「がんゲノム医療センター」を設置し、認定遺伝カウンセラーを1名配置しました。ゲノム医療に伴う説明や相談を進めるうえで、当院はこうした体制整備を大切にしています。

がんゲノム医療といった技術を活かし、当院が目指すのは患者さん一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療です。がんの種類や特徴は同じがんの患者さんでも異なります。それを見極めた上で、一人ひとりに最も効果の高い治療プログラムを提案し、患者さんやご家族の生き方に寄り添う治療を行っていきたいと考えています。

私は、組織が一丸となって医療活動にまい進できるよう、人財マネジメントが重要だと考えています。そこで、千葉大学医学部付属病院が行っている病院経営プログラムである“ちば医経塾”などの勉強会に自ら参加し、より良い病院作りに役立てています。

医師の働き方改革への対応としては、取材時点で研修医を含めて約210名の医師が在籍しており、夜勤や当直の体制をシフト制にするなど、基準を守りながら救急体制を維持できるよう工夫しています。

人財マネジメントの具体的な活動としては、スタッフ全員で病院の理念を考え、そのシンボルとなるロゴマークを自分たちで作りました。またコーチング研修を取り入れ、主体性をもったリーダー人財の育成を進めています。こうした取り組みが功を奏し、誰もが自ら課題を設定できるようになり、着実に診療実績も伸びてきました。

コロナ禍の初期には、クルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号に乗船していたコロナ感染者を受け入れました。当時はコロナに関する情報があまり無い状況でしたが、自然と職員同士が協力する姿勢が生まれ、院内の結束力が強くなったように思います。今後、いつ再びパンデミックのような状況になるか分かりませんので、診療科を越えたチームワークを大事にしていきたいです。

当院は現在、「患者参加型医療」を掲げています。その一環として、患者さんが自分のカルテを確認できる「カルテの共有」を目指しています。オープンにするためには、医師側の記載の工夫も欠かせません。専門用語の使い方や、患者さんが読んだときに受け止めにくい表現を避けるためのトレーニングも進めています。

また、一部の糖尿病患者さんのケースでは、多職種カンファレンスに患者さん自身が参加する試みも始めています。医師やメディカルスタッフと一緒に病状を確認し、納得したうえで治療方針を共有していく形を、ほかの疾患にも広げていきたいと考えています。

地域の医療機関との連携については、WebやFAXでの紹介予約システムの機能を拡充し、紹介状(診療情報提供書)をWeb上で直接アップロードして添付できる仕組みを整えました。さらに、医師側が日程をすべて決めるのではなく、患者さんに第3希望まで日程を入力してもらい、患者さんと当院で調整する形も提案しています。夜間や土日にスマートフォンから予約を入れられるようになれば、紹介する側・受診する側の双方にとって利点があるでしょう。

当院は長きにわたり地域医療を支え、地道に診療実績を積み上げてきました。そのうえで、いま我々に求められているのは医療技術を越えた患者さんとのつながりです。病状などについて患者さんやご家族にしっかり説明することはもちろん、患者さんの意向を尊重して治療の方法を決めることが重要です。

当院は、これからも高度医療、救急医療や災害医療までオールラウンドな診療体制をさらに充実させ、地域の基幹病院にふさわしい貢献ができるように努めて参ります。

*本記事の情報は全て2026年1月時点のものです。

医師の方へ

様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。

学会との連携ウェビナー参加募集中
実績のある医師をチェック

Icon unfold more