静岡県焼津市で医療提供をする焼津市立総合病院は地域の中核病院として日々の診療にあたっています。焼津市は産婦人科・小児科の診療を行っている医療機関が少なく、同院が地域の周産期医療の最後の砦として周産期医療の提供にも力を入れています。同院が行っている取り組みについて焼津市立総合病院 病院長 関常司先生にお話を伺いました。
焼津市立総合病院は、1947年に設立された協立焼津病院を前身としており、1958年に開設しました。以降は時代や地域の医療ニーズに対応すべく、診療科の拡充や病院建物の増改築、医療機器の導入を行ってきました。
現在は地域に急性期医療を提供する公立病院としてスタッフ一同が研鑽を重ね、日々の診療を行っています。自分の得意な専門分野での診療はもちろん、ほかの専門分野のサポートも行い、各医師の診療の幅が広いことが当院の特徴のひとつです。また、周産期医療や腎臓内科、泌尿器科、神経内科、脳外科などの診療も得意としており、地域のみなさまへ医療提供以外にも公開講座の開催や病院シンポジウムなど病気の啓発活動も行っています。
急性期医療を提供する病院として、救急医療やがん診療なども行っています。
たとえば、がん診療では、消化器がんや乳がん、転移性肺腫瘍、肺がん、泌尿器科がんなどの治療を多く実施しており、静岡県地域がん診療連携推進病院に指定されています。がん診療連携推進病院とは各都道府県が指定するもので、その地域においてがん診療の中核的な役割を担うと認められた医療機関のことを指します。
救急医療の分野では、脳神経外科と神経内科があり脳卒中に対する診療体制が充実しています。脳神経外科、神経内科そしてリハビリテーション科が協力して診療する脳卒中センターも開設しており、脳卒中の急性期医療からリハビリテーションまで一貫して診療することができます。そのため、脳神経外科と神経内科は合同でカンファレンスを行い患者さんの情報交換や、お互いの得意分野以外での治療方針を聞くことで知識を深め、患者さんそれぞれの状態に対応した治療を提供することができます。
また、2018年に赴任してきた血管内治療を得意とする医師も脳卒中治療に携わり、血栓(血のかたまり)の回収を今まで以上に迅速に対応することが可能になりました。
地域の急性期医療を提供する体制をさらに強化することができたと思います。
腎臓内科では、早期病診連携の体制を強化するために、YES-I-DO(Yaizu Early Stage Intervention for Diabetic nephropathy and Others)外来を発足し、糖尿病性腎症と慢性腎臓病の病診連携を開始しました。糖尿病性腎症とは糖尿病の合併症のひとつで、徐々に腎臓の機能が低下していき、腎不全などの症状をきたす病気です。
この外来では、特定健診で異常があった患者さんに対して医師や看護師、検査技師、管理栄養士、薬剤師が集約的に治療介入します。半年から1年毎に当院で糖尿病性腎症の治療や食事指導を行い、またかかりつけ医のもとでの治療も継続する連携です。
この取り組みが日本腎臓学会に評価され学会誌で取り上げられたこともあります。
当院は地域周産期母子医療センターに指定されており、通常の周産期医療の提供はもちろん不妊治療の提供も行っています。焼津市周辺の市町村では、産婦人科が撤退している医療機関が出てきている現状があります。そのため市外からの患者さんも多数受け入れており、当院が志太榛原地区の中心的存在として産婦人科や小児科などの周産期医療に関わる診療科を維持、強化をしていかなくてはならないと感じています。
また、産婦人科では周産期医療の提供だけでなく、子宮がんなどの婦人科がん治療も多く実施しています。
以下では当院が行っている不妊治療についてご紹介いたします。
産婦人科の外来で行っている不妊治療は、体外受精や顕微受精、TESEなどのART療法以外に一般外来でのタイミング療法や排卵誘発、人工授精などの一般不妊治療を行っています。産婦人科の医師と臨床エンブリオロジスト(顕微授精や人工授精を行う医療技術者)が協力し、不妊に悩むご夫婦に不妊治療を提供しています。
人工授精では、精子洗浄遠心分離という方法で年間200件以上の人工授精を行っています。(2018年6月現在)
地域や近隣にお住まいの方々だけでなく、海外からも不妊治療の申し込みがありました。地域の周産期医療を守りながら、不妊に悩んでいる方々の助けになっていければよいと思います。
不妊治療は一部の治療が自費診療になり、高額な費用がかかる場合も少なくありません。当院は、静岡県特定不妊治療費助成制度の指定を受けている医療機関です。地域の健康福祉センターに申請し、制度などを使って不妊治療を行ってほしいと思います。
DWIBS(ドゥイブス)とは、MRIで全身を撮影し、がんが発生していないか、がんが転移していないかなどを検査するものです。がん検査は繰り返し行うことで早期発見につながることが多くあります。DWIBS検査はMRIで強い磁場と電波を使って撮影していますので放射線被ばくがなく、また費用も安く繰り返し検査ができます。当院では、2016年からがんの発見や転移の検索、化学療法や放射線治療の効果判定に積極的に使用し始め、2017年11月からは総合がん検診のひとつとして導入しています。現在は地域のみなさまだけでなく県外からも検査を受けにきてくださる患者さんもいらっしゃいます。
DWIBS(ドゥイブス)検査のお申込みは当院の健康管理センターにお問い合わせください。このほかにも人間ドックや、気になる検査だけが行えるち~っと検査(ち~検)などさまざまな検査がありますので、お気軽にお問い合わせください。
当院で独自に行っている取り組みに「いいねプロジェクト」があります。2017年7月から開始したもので、スタッフ間で勤務中の行動や対応などに好ましいと感じたことを「いいねカード」に記入し、専用のボックスに入れます。それを事務局で回収・集計し、カードのコピーを職員更衣室付近の廊下に掲示するとともに、対象者に対し直属の上司からカードを渡す制度です。スタッフのモチベーションや患者さんやスタッフ間での対応のさらなる向上につながっています。
こうした取り組みなどを評価され、当院は2017年度の日総研が主催している接遇大賞を受賞しました。
当院が提供している病院食は地元焼津で水揚げされる海の幸を使用した病院食や、季節の行事に合わせた病院食などレパートリー豊かな病院食を提供しています。また、旬の食材を多く使用し彩りもあざやかな食事ばかりです。地域のみなさまの健康増進、維持の手助けになれるように、減塩メニューで提供しています。
患者さんからも当院の病院食はおいしいと評判を受けています。今後も患者さんに喜ばれるおいしい食事を提供できるように栄養科一同努力してまいります。
1958年の病院開院以降、地域のみなさまによりよい医療を提供することに尽力してきました。地域のみなさまに信頼され、その信頼に応えることができる病院を目指してスタッフ一同今まで以上に努力を重ねてまいります。
また、市民公開講座や病院シンポジウムなど、地域のみなさまに向けた病気の情報発信を行っています。テーマはさまざまで、当院を含めた地域の医療機関が協力して救急医療を守っていることや、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をテーマにしてお話ししています。院内で行う公開講座では認知症や白内障、嚥下障害など高齢化社会を迎えている今だからこそ、啓発していかなくてはならないテーマを設定しています。病気の予防という観点からも地域のみなさまの健康増進、維持に貢献していきたいと思います。
焼津市立総合病院 病院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。