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連載もっと知りたい「病院」のこと

“コロナ時代”の病院の選び方、かかり方

公開日

2020年12月15日

更新日

2020年12月15日

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2020年12月15日

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新型コロナウイルス感染症が全国で拡大し緊急事態宣言も出された2020年の前半、感染を恐れて多くの人が病院受診を控えました。現在、多くの医療関係者がその影響を懸念しています。医療機関はこれまでの経験から多くを学び、感染対策を施しています。上尾中央総合病院理事長、全日本病院協会副会長の中村康彦先生に、コロナ終息が見込めない現状での病院の選び方、受診の際に注意すべき点などについて聞きました。

コロナ患者を受け入れている病院こそ安全

こういう時代だからこそ、病院はしっかり対策をしています。日本の制度上、患者さんはいつでも、どんな状態でも病院に来ることができます。そうであれば、病院側できちんとガードしなければなりません。それができている病院は、行っても感染のリスクは低いと思っていいでしょう。

今では、病院の待合室にコロナ感染者がいる可能性はほぼありません。コロナ外来、発熱外来を置き、通常の患者さんとは分けています。発熱患者とそれ以外では動線も別にしていますし、消毒もしっかり行われています。特にコロナ患者さんも受け入れている病院は、施設内に入る前の体温測定、職員の健康管理、動線の分離などを徹底しています。

つまり、自分にコロナの疑いがない人が、感染を恐れる必要がなく受診できる病院の分かりやすい目安は、入り口できちんと体温測定をし、熱のある人とは入り口も診察の場所も分けていることです。「発熱外来があるような病院は感染が心配」というのは誤解で、そのように分けている病院こそ、安心して受診できると考えてください。

発熱や呼吸器症状があるのに、コロナと確定されるのが怖いからと他の患者さんに紛れて来院し、待合室で隣の人や診察した医師を感染させてしまうのが、病院としては一番困ります。疑いがあるなら事前に一報を入れるなどし、医療機関のルールに従って受診してもらえば、決して怖いことはないのです。

写真:Pixta

救急搬送時の発熱は命に係わる危険も

今一番怖いのは、以前より持病のある方が、自覚症状があってもコロナを恐れて受診を控え、症状が重くなってから救急搬送されることです。

例えば心筋梗塞(こうそく)は、ある日突然来るわけではなく、1カ月も前から少し胸が苦しいといった前兆がみられる場合も少なくありません。その時に受診してもらえれば、余裕をもって診療ができます。ところが、発作を起こして救急搬送され、その際に発熱していると、まずはコロナの可能性を除外するためにCTを撮って肺炎像がないか確認し、それから心電図を取って心筋梗塞に特徴的な波形がみられたら措置を始めるという手順になるわけです。それだけでも30分は経過してしまいます。まして、発熱があると搬送先をいくつか断られている可能性もあります。そうなるとゴールデンタイム(心臓のダメージを少なくすることができる時間)を過ぎてしまいます。現場では今でもそういう問題が起こっています。

このように、心筋梗塞や脳卒中など一刻を争う病気では、緊急搬送時の発熱は命取りにもなりかねません。そうした事態を避けるためにも、行くべき時に病院を受診してください。

先ほど触れた「紛れ込み」も対処の難しい問題です。ある病院でこんなことがありました。大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ=太ももの太い骨の付け根)骨折で病院に救急搬送された90歳の女性が緊急手術を受けました。搬送時に37.5℃の発熱があったのですが、骨折の際に熱が出るのはよくあることで、特に疑いをもたれずに通常の治療をしました。ところが、手術の翌朝にせきや発熱がみられ、PCR検査でコロナ陽性。手術をした整形外科医も感染していたそうです。

例年であればインフルエンザも流行期です。医療者側からは、インフルエンザとコロナの感染を鑑別するまでは、普通の治療が怖くてできません。心筋梗塞の胸の痛みでのたうち回る患者さんに、防護服を着て対応することは困難です。救急搬送の際に熱があれば、その情報は医療機関に事前に伝えられます。そうなると、どんな病気よりもまずコロナの除外が必要になり、患者さんは大変な不利益を被る可能性があるのです。

受診控えの影響 重症患者増も

4~5月にかけて新型コロナの緊急事態宣言が出され、不要不急の外出を控えるよう国から要請があった影響で、全国的に受診控えが起こりました。本当は「必要で急ぎ」の人も含めて病院から足が遠のきました。

その結果、通常の外来患者数は4~6月に前年同期比で3割減。特にがんの患者さんの受診が大きく落ち込みました。このころはまだ、新型コロナ感染症という病気が詳しく分かっておらず、「基礎疾患があるとコロナが重症化しやすい」という情報も流れ、がんの患者さんもハイリスクグループかもしれないとみられていました。現時点では、そのようなリスクはほとんどないことが分かってきましたが、当初の騒ぎが大きすぎて、情報がアップデートされていない方も多いようです。

すでにがんと診断のついていた患者さんは、ほとんどが治療を続けているでしょうが、診断が確定していない“潜在的がん患者”さんは「手術をして万一コロナに感染したら、がんで死ななくてもコロナで死んでしまう」という不安から、受診控えが出ていました。
健康診断も4、5月は98%減とほぼ壊滅状態。感染を恐れてという理由のほかに、コロナによる経済的な打撃が影響した可能性もあります。

自営業の方などは、4、5月に予定していた人間ドックを延期していたら、事業がダメージを受けていて「今は人間ドックどころじゃない」と来年まで延ばしてしまった人が結構いるのではないかと推測しています。

写真:Pixta

すでにその兆候が出始め、重症化して来院する患者さんが増えてきているという報告もあります。4カ月前に胃の不快感があったけれどそのままにしていて、吐血して初めて病院に来たといった例もあるようです。

4~6月の受診控え、健診控えは、このように多くの面で今後、影響が出てくることが懸念され、来年になればその深刻さも明らかになってくるでしょう。

病院への影響にも温度差

新型コロナの患者さんを受け入れている病院に対しては、国から空床補償があったり、マスクや手袋、ガウンといった医療資材について自治体などから優先支給があったりしました。ところが、受け入れていない病院でクラスターが発生して入院、外来を止めたとしても補償はほとんどありません。医療資材についても入手が困難な時期には通常の10倍もの値段で購入しなければならないという大変な思いをした病院も少なくありません。

データを見ると、新型コロナで一番ダメージを受けたのはコロナを診ない急性期病院でした。コロナ感染者が紛れ込んでくるかもしれないという前提で対策をしたけれども、それに対する補助が一切ありませんでした。次がコロナ患者を診ている病院で、補助も少しはあるけれど支出もそれ以上に増えました。比較的ダメージが少なかったのが回復期・療養病院のうちクラスターが発生しなかったところで、病院によって、あるいは地域によってその影響は温度差があります。

ただ、いずれにしても混乱していた当初とは異なり、病院も防御方法を学び、実行しています。最初に示したような観点から安心できる病院を探し、適切なタイミングで医療を受けてください。