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地域医療構想の実現年見据え意見交換―全日本病院学会、28日から京都市で開催

公開日

2024年09月20日

更新日

2024年09月20日

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2024年09月20日

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全国約2500の民間病院が加入(2024年9月現在)する全日本病院協会が「学術研修の場」として主催する「第65回全日本病院学会 in 京都(学会長:清水鴻一郎・京都リハビリテーション病院理事長、実行委員長:武田隆久・医仁会武田総合病院理事長)」が2024年9月28~29日に京都市で開かれる。厚生労働省(以下、厚労省)などが進める「地域医療構想」の実現年(2025年)を目前に控え、民間病院が目指すべき方向性などについて意見が交わされる。清水学会長に、注目の企画やこれからの病院経営などについて聞いた。

清水鴻一郎先生

自院のブランディング、存在意義明確化が重要

地域医療構想は、人口構造や地域の医療ニーズの変化を見据え、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制を確保することが目的です。現在、2次医療圏(病床の整備を図るべき地域単位)は335(2021年10月時点)ありますが、同じ条件の場所は1つもありません。京都府内は6つの2次医療圏に分かれていますが、それぞれの状況には非常に大きな違いがあります。たとえば、もっとも北の「丹後医療圏」は過疎化が進行していて、公立病院を中心に体制を整える必要があります。一方、京都市や長岡京市、向日市、大山崎町を含む「京都・乙訓医療圏」は、府全体の人口の約6割が集まり、京都大学医学部附属病院や京都府立医科大学附属病院などを含めて府下の病院の約6割が存在する“メガ医療圏”で、同じ「医療圏」といっても医療提供体制を確保する「解」はまったく異なります。

国全体として人口が減少していく一方、医療は専門性が増してどんどん奥深くなっているなかで、患者さんが自分にとって適切な医療にアクセスできる状況を地域として面的に確保することは、1病院だけではできません。個々の病院は、自らができることや周囲の人から求められている役割を客観的に見極め、ブランディングを確立し存在意義を明確化することが、これからは重要になっていくと考えています。

地域医療構想実現の“羅針盤”に

地域医療構想を実現する2025年を目前に控えた2024年9月28~29日に開催する第65回全日本病院学会 in 京都は、テーマを「地域医療構想前夜~嵐の中の航海 羅針盤を求めて~」としました。団塊ジュニア世代が高齢者になる2040年に向かっての新たな議論がすでに始まっていますが、2025年は1つのプラットフォームを完成させて次のステップに向かう区切りの年だと思っています。

従来の医療は「治す医療」で、1つの病院で治療を完結させ、終わったら家に帰ってもらうというスタイルでした。今の医療は専門性が高くなり▽救急医療の中でも診療密度の高い高度急性期機能を持つ病院と、状態の早期安定化に向けた医療を提供する急性期機能を持つ病院▽急性期を脱した患者さんの帰宅に向けた医療やリハビリテーションを行う回復期医療を担当する病院▽長期にわたって療養が必要な患者さんを入院させる慢性期医療を担当する病院――と、ステージを分けて、複数の医療機関がそれぞれの専門性を生かして役割を果たすという形に変わっています。

急性期医療はもちろん非常に大事です。しかし、状態が安定してからの回復期リハビリテーション、あるいは持病や障害などその後の人生を通じて付き合わざるを得ない状態にかかわる医療のほうが患者さんの人生にとって重要な部分もあると、医療者の考え方も変わってきています。

そうした意味で、地域医療構想は時代に合った考え方ではあるのでしょう。個々の病院が自分たちの立ち位置、あるいは病院の機能をしっかりと見定めて移行していく1つの機会だと思います。

とはいえ、初めての経験でさまざまな戸惑いもあるでしょうから、自分の病院が何を担っていくかを考えるための“羅針盤”が必要です。加えて、2024年春から始まった医師の働き方改革などさまざまな規制があるなか、今回の学会で病院をどう維持発展していくかといったことを見つめるための方向性を見出すことが不可欠、という思いでテーマを決めました。

多彩なプログラム、見所は

今年の学会も多彩なプログラムを用意しています。その中から見どころをいくつかご紹介します。

まず、「地方における民間病院団体の在り方」と題した学会長講演です。民間病院は、同じ地域にあれば競争相手であることは事実です。一方で、意見発信や人材育成などで団結する必要もあります。たとえば、京都府下の民間病院でつくる京都私立病院協会は、看護師等養成校を2校運営し、うち1校には臨床検査技師、臨床工学技士を養成する学科もあり、自分たちで人材を育てています。また、協同組合で資材などを共同購入することで経費を圧縮する手助けをしたり、保険、福利厚生などを担ったりしています。さらに、病院企業年金基金を運営して公的年金を補い、職員の将来を保障しています。京都私立病院協会は、京都府医療勤務環境改善支援センターを京都府から委託され運営もしています。情報や意見についても、病院がまとまって発信・表明することで行政などに重要性を理解してもらいやすくなります。このように、競争しながらも団結するのが地方における病院団体の在り方だといったことをお話しします。

次に、今回の目玉企画として「厚労省以外の省庁は医療をどのように見ているか」と題した企画をご紹介します。医療系の学会に厚労省の官僚が参加することはよくありますが、それ以外の官庁からの参加はそれほど多くありません。今回は厚労省に加え▽医療費を含めた国全体の財政を管轄する財務省主計局▽地方の財源などを調整する総務省自治財政局▽厚生連病院などを持つ農業協同組合を管轄する農林水産省経営局――からご参加いただき、彼らの目に医療、病院がどう映っているか、今後医療はどうあるべきと考えておられるのかなどについて議論いただきます。

京都ならではの“文化企画”もあります。

1つは千利休につながる「三千家」の1つ、武者小路千家第14代家元の千宗守さんの特別講演「茶は薬用より始まる」です。お茶はもともと、薬用として始まり医療ともつながりがあります。そうしたことを通じて京都、お茶の文化に触れていただきます。

もう1つは、清水寺貫主、森清範さんによる特別講演「ことばの呪能」です。森さんは年末に話題となる「今年の漢字」を揮毫(きごう)している方で、言葉の持つ魔力や魅力といったことについてお話しいただく予定です。

また、参加者に学会の最後まで楽しんでいただきたいとの思いもあり、2日目の終盤に女優の藤原紀香さんと私の特別対談を企画しました。藤原さんは最近、舞台にも出られており、テレビや映画と違い舞台は一発勝負で、それは我々の「失敗できない手術」と同じではないか――そうした緊張感を乗り越えて最高のパフォーマンスを発揮するという意味で、舞台女優と医師に共通するものがあるのではないかといったお話をしたいと思っています。

学会の成果 一般向け発信も検討

こうした集会の会期に合わせて市民向けの公開講座など啓発活動を行う学会もありますが、今回、私たちは学会そのものに全力を注ぎます。

私たちは地元新聞社と連携して、以前から年に数回「健康生活講座」を開催しています。病気についての説明や、病院ごとの役割分担、病院内の職種ごとの役割分担について理解していただけるようなお話をする機会を設けるなど、日ごろから啓発活動には力を入れてきました。学会の成果を踏まえたうえで、どんなことができるのか、少し時間をかけて検討し、来年5月ごろまでに発信できるものを模索していきたいと思っています。

清水寺でセレモニーと夜間参拝企画

1日目のスケジュール終了後にホテルなどで飲食を伴う懇親会を開くのが通例です。しかし、今年は元日に能登半島地震があり、被災した会員病院もあることや被災地の復興が進んでいない状況も踏まえて華美な懇親会は控えることにしました。代わりに、特別講演にもご登壇いただく森清範さんのお取り計らいで清水寺を貸し切り、学会参加者だけの夜間参拝を実施します。「清水の舞台」で学会長表彰などのセレモニーを行った後は、自由に参拝し、ライトアップされた世界遺産や京都の夜景を楽しんでいただきます。

写真:PIXTA

今学会に多くの方が参加し、活発な議論が交わされることを期待しています。

武田隆久 実行委員長のコメント

全日本病院学会が京都で開催されるのは今回が初めてであり、全日本病院協会の京都府支部を務める京都私立病院協会を中心に、鋭意準備を進めてきております。地域医療構想の実現年が目前に迫るなか、今学会では、地域医療構想の進捗や問題点に焦点を当てて、2040年に向けた「新たな地域医療構想」につながる議論を進めていきたいと考えています。たくさんの方々のご参加をお待ち申し上げております。

武田隆久先生


 

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