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赤ちゃんの咳:医師が考える原因と対処法|症状辞典

赤ちゃんの咳

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 異物を飲み込んだ可能性がある
  • 犬やオットセイの吠えるような、聞きなれない咳をしている
  • 息苦しそうな様子があり、肩や腹を使って息をしていて呼吸が早い
  • 顔色や唇の色が悪い、眠れない、飲食ができない
  • 呼吸とともにゼイゼイと音がする、唸るなどの様子がある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 2週間以上続いている
  • 発熱、鼻水など風邪のような症状がある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 一時的なもので、様子に変わりなく食べたり眠ったりできている

あいち小児保健医療総合センター 救急科 医長

伊藤 友弥 先生【監修】

咳は、空気の通り道である気道の中に入り込んだ病原体やほこりなどの異物を体外へ排出するための生理的な防御反応の1つです。咳は全ての人に日常的によく見られる症状ですが、赤ちゃんは気管の壁が軟らかく狭いためわずかな刺激でも咳が出やすい傾向にあり、原因は多岐にわたります。

  • 発熱とともに鼻汁や()、咳などの症状がある
  • 特定の食材を口にすると咳が止まらなくなる
  • おもちゃで遊んでいたら急に咳をし出し、徐々に顔色が悪くなった

これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。

赤ちゃんの咳の原因は多岐にわたりますが、なかには病気によって引き起こされているものもあります。赤ちゃんの咳を引き起こす病気には以下のようなものが挙げられます。

赤ちゃんの咳は、咽頭や気道に炎症を引き起こす感染症が原因であることがあります。原因となる主な病気には以下のようなものがあります。

上気道炎(かぜ症候群)

いわゆる風邪と呼ばれるもので、鼻腔や咽頭、喉頭などの上気道にウイルス・細菌などの病原体が感染することで炎症を引き起こす病気です。赤ちゃんは免疫力や抵抗力が低いため、上気道炎を発症すると38度以上の高熱や咳、咽頭炎などの症状が見られ、嘔吐や吐き気などの消化器症状を伴うことも少なくありません。

多くは数日で自然に軽快しますが、炎症が気管支や肺にまで波及すると気管支炎肺炎を引き起こして重篤な状態に陥ることもあります。

RSウイルス感染症

4~6日の潜伏期間を経て発熱や咳、鼻汁などの一般的な感冒症状を引き起こし、赤ちゃんが初感染すると細気管支炎肺炎を発症することがあるウイルス感染症です。

細気管支炎肺炎を併発すると咳が強くなり、喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難が見られるようになります。

RSウイルス感染症
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百日咳

百日咳菌に感染することによって発症する病気で、微熱や鼻水などの一般的な感冒症状を呈した後に咳の発作が生じるようになります。咳の発作は夜間に多く見られ、一度始まるとなかなか止まらないのが特徴です。一方で、生後4週間ほどの赤ちゃんの場合には典型的な咳発作症状が見られずに、無呼吸発作を引き起こすケースもあります。    

百日咳
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クループ

喉頭や声帯付近の粘膜にウイルスが感染して生じたむくみによって、気道が高度に狭くなる病気です。特に息を吸うときにうまく空気を取り込めずに呼吸困難を引き起こします。そのほかにも発熱や声のかすれ、犬吠様(犬が吠えているような音、オットセイが鳴くような音)の咳、喘鳴が見られます。

犬吠様の独特な咳は3日前後で改善しますが、通常のウイルス感染の経過のように(たん)が絡んだ湿性の咳が長く続くことがあります。          

赤ちゃんの咳は、感染症とは別に咽頭や気道に生じる非感染性疾患によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下のとおりです。

気管支喘息

気管支の粘膜に慢性的な炎症が生じ、何かのきっかけ(感染症や粉塵(ふんじん)など)によって呼吸困難の発作が生じる病気です。炎症が長引くことで気管支壁が徐々に破壊されていきます。また、アレルゲンなどの刺激にさらされると気管支粘膜にむくみが生じて気道が狭くなり、激しい咳や痰などの症状が発作的に引き起こされます。重症な場合には、呼吸困難や低酸素で意識消失を伴うことも少なくありません。急性期の治療によって粘膜のむくみが改善すれば咳などの症状は治まりますが、発作の発症を防ぐために無症状の状態(慢性期)でもステロイド吸入などのコントローラーを用いた治療が必要となります。

気管支喘息
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アレルギー

特定の飲食物やハウスダストなどのアレルゲンを体内に取り入れることで、全身にさまざまなアレルギー症状を引き起こすことがあります。

典型的な症状としては鼻水やくしゃみ、目のかゆみ、充血、流涙、咳などが挙げられます。重症な場合は気道粘膜がむくんで呼吸困難になる症状以外にも皮膚や循環器、消化器などの症状を伴ったアナフィラキシーと呼ばれる状態になることもありますが、軽い症状であれば通常は発症後30分~1時間程度で自然に改善します。

アレルギー
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気管内異物

赤ちゃんは手に取ったものを何でも口の中に入れてしまう習性があります。このため、手に取ったおもちゃやお菓子類などを誤嚥(ごえん)して気管内の異物となり、咳を引き起こすことがあります。また、排出までに時間がかかると肺炎などを発症する可能性もあり、異物が気道内にすっぽりはまり込んだ状態になると窒息する危険もあります。

赤ちゃんの咳はよく見られる症状でほとんどが軽い症状であるため、どのタイミングで病院を受診したらよいか分からない人も多いでしょう。しかし、赤ちゃんの咳には思わぬ病気が潜んでいることも少なくありません。このため、咳が続くときは病院で適切な検査・治療を受けることがすすめられています。

特に、高熱や呼吸苦(呼吸が速い、座っている姿勢のほうが楽、肋骨と肋骨の間や鎖骨や胸骨の上が呼吸のたびにペコペコ動いている)などの症状を伴う場合、咳が止まらず体力を極端に消耗している場合、特定のアレルゲンにさらされて咳が止まらなくなる場合、異物を誤嚥した可能性がある場合などは早めに病院を受診しましょう。

受診に適した診療科は小児科ですが、呼吸困難を呈していたり異物を誤嚥した可能性があったりする場合は、休日・夜間を問わず救急外来を受診するようにしましょう。

受診の際には、いつから咳が出ているのか、随伴する症状、咳の誘因、現在罹患している病気、異物誤嚥の可能性などについて医師に詳しく説明するようにしましょう。

赤ちゃんの咳は日常生活上の習慣を変えることで改善させることもできます。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下のとおりです。

赤ちゃんの気道は未熟な構造のため些細な刺激でも咳が出やすく、室内のほこりや(ちり)などを吸い込むことで咳が出やすくなることがあります。

赤ちゃんのいる室内はこまめに掃除をしてハウスダストをためないようにしましょう。また、窓の開放などによって空気中を漂っているハウスダストを排除することも必要です。さらに、ダニアレルゲンの曝露(ばくろ)を避けるため、赤ちゃんが使用する寝具は防ダニ布団カバーなどを使用するとよいでしょう。

鼻や喉の粘膜には粘液が産生されており、適度な水分を保った状態となっています。しかし、秋から冬などの空気が乾燥しやすい時期や冷房が効いた室内などでは、乾燥した空気を吸い込むことで鼻や喉の乾燥が引き起こされ、その刺激によって咳が出やすくなります。

室内では加湿器の使用や濡れタオルを干すなどして適度な湿度を保つ必要があります。また、空気が乾燥した日の外出はなるべく控えるようにし、外出する際には口元にマフラーを巻く、マスクを着用するなどの習慣が必要です。

赤ちゃんの咳の原因の1つとなる百日咳にはワクチンがあり、ワクチンを接種することによって百日咳にかかるリスクを80〜85%減らすことができるといわれています。ワクチンは複数回に分け、生後3〜12か月の間に計4回(1期)、11〜12歳の間に1回(2期)接種します。

気管内に異物が入ることを防ぐためには、赤ちゃんの誤嚥を防ぐ工夫が必要です。一見小さく見える赤ちゃんの口ですが、トイレットペーパーの芯を通る大きさのものは飲み込んでしまう可能性があるといわれています。

そのため、小さいおもちゃなどは赤ちゃんの手の届かない場所に保管しましょう。なお、きょうだいのいる家庭では、年上の子どものおもちゃで赤ちゃんが遊ぶことがないように注意しましょう。

日常生活上の対処法を講じても赤ちゃんの咳が改善しない場合には、思わぬ病気が潜んでいることがあります。軽く考えずに早めに病院を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。