薬疹とはアレルギー反応の一種であり、軽症から重症まで幅広い症例があることを記事1『薬疹とは。薬剤によって発症する皮膚疾患』でご紹介しました。今回は、薬疹のかゆみなどの様々な症状、皮膚変、検査・診断に至るまでを具体的に説明していきます。引き続き、横浜市立大学附属病院皮膚科教授の相原道子先生にお話しいただきました。
薬疹の症状は重症度によっても異なり、様々なものがあります。局所的に皮膚に赤い発疹が出る程度のものから、皮膚全体が腫れあがるものまでありますが、主な症状は発疹(ほっしん)といえます。発疹のタイプも下記のように多岐にわたります。
●じんましん型:円形や地図状の盛り上がった白色、紅色の腫れ(病変)が生じるが、すぐに消失する
●固定薬疹:薬剤を内服するたびに、口唇や外陰部、四肢などの同じ部位に円形の紅斑が出現する
●播種状紅斑丘疹型:小さな紅斑や丘疹性紅斑が広範囲に発症し、つながっていく
●湿疹型
●紫斑型
●多型紅斑型:円板の紅斑が多発する。水疱を作ることもある
●紅皮症型:全身の皮膚に鱗屑(りんせつ:表皮の角質が病的に産生され、やがて様々な形状で表皮から剥がれ落ちるもの)を伴う赤みが生じる
●扁平苔癬型:不整形で扁平に盛り上がった紫紅色斑が現れる
さらに重症化すると、スティーヴンス―ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)に及ぶこともあります。(詳細は記事4『スティーヴンス―ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群―重症薬疹とは』)
これらのうち、即時型反応はじんましんだけです。しかし、即時型では鼻水や涙が出たり、喉がつまったり呼吸がゼイゼイするなどの症状が同時にみられることがあります。血圧が下がってしまい倒れることも稀ですがみられます。
記事1『薬疹とは。薬剤によって発症する皮膚疾患』でも述べましたが、薬剤に対するアレルギー反応を起こすまでには一定の感作期間(その薬に対して反応してしまう細胞や抗体を保有するようになるまでの期間)がかかります。これは数日から2週間以内が多いのですが、高血圧の治療薬などでは数か月後に発症する場合もあります。また発疹のタイプもそれぞれであるため、かゆみを伴う場合もあればあまりかゆくならない場合もあります。
薬疹は他の症状、たとえばウイルス感染である麻疹(はしか)、風疹、リンゴ病などによる発疹やウイルス感染に伴って出現したじんましんなどと間違われやすいため、細菌感染症でも全身に紅斑が見られることがあります。ですから、感染症に対して投薬がされた場合、薬疹の診断は容易ではないことがあり、慎重に診断を行います。
血液検査では、好酸球が増えている場合に薬疹を疑います。ただし好酸球が増えていないことも多く、どのような薬をいつから飲み始め、いつから症状があらわれたのかを明確にすることが最も重要です。
以前薬疹を生じたことがある方の場合は、そのときと類似した成分が薬に含まれていないかを調査します。そうして原因とみられる成分を絞った後は、様々な検査(パッチテストや内服試験、血液による検査)を行います。