光仁会第一病院は1947年、江戸川西畔の葛飾区東金町(ひがしかなまち)に「第一医院」として開設。その後、人口急増によって患者さんが増え、1962年に「第一病院」に発展し、1981年11月に「医療法人社団光仁会」が設立されました。
現在では一般外来の内科、外科、整形外科、リハビリテーション科のほか、専門外来の消化器内科・外科、脳神経内科・外科、循環器内科、心臓血管外科、乳腺外科など16診療科を擁する地域の中核病院となっています。
杉原健一先生(消化器外科)は東京医科歯科大学大学院腫瘍外科学教授を定年退官した3年前、「患者さんの生活に近い施設で臨床に関わりたい」と考えて病院長に就任されました。大腸がん治療の専門医としてメディアに登場することも多い杉原院長に、高度な先進医療とともに、地域の特性に根差した医療をどのように実現しているのか、お話を伺いました。
光仁会第一病院が位置する地域は、JR常磐線金町駅から直通で東京メトロ大手町まで25分と交通至便です。そのため、都心へ通勤・通学する若い人たちは病気になっても、都心の大学病院や大手総合病院に通院することが多いのです。
一方、当院の患者さんは昔から通ってくださるご年配の患者さんが中心で、大半が70代以上、80〜90代の患者さんも大勢いらっしゃるという特色があります。
こうした地域特性のある医療施設として、当院は特に高齢者のための医療サービスの充実に努めています。
光仁会第一病院は、緊急入院や手術を要する患者さんに対応する二次救急指定病院です。これは365日24時間体制で行っています。救急患者さんの受け入れは年間約1,300件あり、夜間・休日救急だけで900件を超えます。
これだけ救急医療が集中するのは、この地域には高齢者介護施設が数多く、急に具合が悪くなって搬送される方も多いからです。二次救急は、高齢者の健康生活を守るために不可欠な医療サービスとなっています。
光仁会第一病院のリハビリテーション科は最先端ロボットリハビリを導入するなど大変充実していて、14〜15名の理学療法士・作業療法士が常勤しています。特にご高齢の患者さんに対しては、2~3日の入院でも歩けなくなる生活不活発病の防止のために、立つ練習から始める周到なリハビリを行っています。
また、リハビリ科は葛飾区包括支援センターと共同で、2017年9月から一般の高齢者を対象にした啓発活動を始めます。要介護や寝たきりのリスクを高める「ロコモティブシンドローム(運動器官症候群)」を主なテーマに、加齢による筋力・持久力の低下や骨粗しょう症などとの関連性をわかりやすく解説し、予防のための「片足立ち(フラミンゴ療法)」など簡単にできる運動を指導していきます。
私が院長に就任にしてからは、消化器外科の大腸がん、胃がん、肝がん、膵がんなどの手術を受ける患者さんが増えています。手術希望の患者さんは札幌、岩手、福島などからもやってこられます。また、高齢者のがん治療も積極的に進めています。ご高齢の患者さんは手術を敬遠しがちですが、90代の方の手術も行っていますし、80代の手術は珍しくありません。ただし、高齢者の場合は体力や免疫力が低下していますから、手術に伴う合併症、たとえば大腸がんなら腸管の縫合不全や術後肺炎など、を防ぐために、安全・確実な手術を行い、また、全身状態の管理を徹底しています。
直腸がん手術で、「自分の肛門はぜひ残したい」と人工肛門造設を躊躇する患者さんは少なくありません。しかし、それではがんを確実に取り除けなくなるケースも出てきます。直腸がん手術では、がん病巣を残さずに取り除くために、直腸を大きめに切除することも必要なのです。その際、大きく切った直腸を無理に肛門につなぐと、長時間の外出ができなくなる排便障害を起こし、QOL(生活の質)が著しく低下します。それより、人工肛門を造設して精巧なパウチを装着すれば、便の臭いや洩れは皆無で、日常生活はもちろん、水泳などを楽しむことも可能です。
私は患者さんに、直腸がんの病状と患者さんの日常の生活しだいでは肛門温存より人工肛門の利点が高いことを丁寧に説明しています。
光仁会第一病院のすべての診療科には経験豊富な優れた常勤医と外勤医がいますから、大病院と遜色ない治療を提供しています。
特に消化器外科では、私以外の2名の常勤医は東京医科歯科大学腫瘍外科の医局員だった大ベテランで、手術はもちろん上部・下部消化管の内視鏡検査・処置の経験も豊富です。また、大腸内視鏡検査・処置では、東京医科歯科大の専門医も週3日、外勤しています。
さらに、2名の常勤医は胆道系検査・処置のERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やENBD(内視鏡的総胆管結石除去術)にも習熟し、高齢者にとっては命にかかわることもある総胆管結石症や急性胆嚢炎などの治療でも高い実績を上げています。
こうしたことから、私は当院の消化器外科が国内トップレベルにあると自負しています。
常に高度な先進的医療を提供することを目指して、光仁会第一病院は地理的にも至近な他の医療機関と緊密な連携を築いています。
光仁会第一病院は消化器がんなどの治療では、手術も抗がん剤治療も基本的に自院で完結するようにしています。ただ、肺転移については、手術適用と判断した患者さんは東京医科歯科大学附属病院に受け入れていただいています。また、抗がん剤治療においても、重篤な全身転移がみられる場合は受け入れをお願いしています。連携は緊密なので、患者さんには安心していただいています。
日本医科大学付属病院は当院の理事長・野村明子先生(循環器内科)の出身医局という深いつながりがあります。同大学の循環器科の専門医に週2回、当院の専門外来の循環器内科で診察をしていただいていて、脳梗塞や心不全を発症しやすいご高齢者にも安心していただける備えとなっています。
また、当院は2004年4月にロボットリハビリテーション外来をオープンし、日本医科大学付属病院出身の専門医師の直接指導によって実施しています。
これは、脳卒中や脊髄損傷などで四肢の麻痺に苦しむ患者さんの手や足にロボットアシストを装着し、皮膚からの電気刺激で筋肉を動かして機能回復を促す最先端のリハビリです。当院では、特にロボットリハビリの効果が高いとされる慢性期患者さんを中心に施行しています。
総合守谷第一病院は光仁会第一病院と同じ光仁会のグループ病院で、茨城県守谷市にあります。病床数200超の大型医療施設で、最新鋭のMRIやCTスキャン、アンギオグラフィー(血管造影)などの検査・診断機器も導入しています。
当院と総合守谷第一病院とを往復する専用車を運行(片道30〜40分)し、特に神経領域の患者さんには総合守谷第一病院で検査を受けてもらいます。検査画像はコンピュータで当院と総合守谷第一病院の専門医とが共有する緊密な連携が確立しています。
看護師不足は、当院のような中小規模の病院に共通する喫緊の課題です。 まだ働き始めて間もない若い看護師さんは、キャリアアップのために都心の大病院勤務を志望することも多いのですが、いま当院に勤務しているのは近隣在住の子育て世代のベテラン看護師さんたちです。
当院ではこうした看護師さんたちが働きやすいよう保育所を併設おり、また、個別の子育て事情などにも柔軟に対応する勤務システムを構築し、それを看護師不足解消と看護体制の充実につなげるべく取り組んでいます。
光仁会第一病院では現在、呼吸器内科医の不足が深刻な状況です。ご高齢者には誤嚥性肺炎を起こす方が多いことからも、呼吸器内科の専門医はぜひとも必要です。理想としては常勤医ですが、週1回の診察でもよいので、優れた専門医を一日も早く招く予定です。
光仁会第一病院は、志望者が減っている外科医の育成にも取り組み、外科医療をさらに充実させたいと思っています。若い外科医が年間700名しか誕生しない医療界の現状では、20年後には高度ながん手術などは大都市の一握りの大病院でしか実施できなくなるという予測もあります。
しかし、外科に意欲を燃やす若い医師は昔も今も少なからずいます。そんな外科医志望者にとって、当院はキャリアアップに絶好の環境です。
ベテラン医師が多く、診療レベルも高く、内視鏡の検査・処置から一般的なヘルニア、急性虫垂炎、胆石症の手術だけでなく、さらに難しい直腸がん、肝がん、膵がんの手術まで経験することができ、腹腔鏡手術も積極的に行っています。また、大学院で研究生活を送り、臨床現場への復帰を準備している外科医にとっても、当院は好適です。
私たちは若い意欲的な外科医と一緒に働き、患者さんたちの身近な病院で高度な医療を提供する優秀な外科医を育てたいと考えています。
光仁会第一病院では何より患者さんとの人間的ふれ合いを豊かに保とうと、医師、看護師、病院スタッフは常に心がけています。
病院や医師選びに悩む患者さんに望むのは、“神ワザ”を発揮する医師を探すよりも、まずあなたの目の前にいる医師に率直な疑問をぶつけて、的確に答えてくれるかどうかを見ていただきたいと思います。
そして、その医師が当たり前の(過不足ない)医療を当たり前に(誠実に)実践していることがわかれば、その医師こそが病気と闘うあなたの最高のパートナーになる、と私は確信しています。
光仁会 第一病院 院長、 東京科学大学(東京医科歯科大学) 名誉教授
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。