院長インタビュー

地域の医療機関との連携で東京都の急性期医療を支える東邦大学医療センター大橋病院

地域の医療機関との連携で東京都の急性期医療を支える東邦大学医療センター大橋病院
岩渕 聡 先生

東邦大学医療センター大橋病院 病院長

岩渕 聡 先生

目次
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東邦大学医療センター大橋病院は、東京都目黒区・世田谷区を中心とした区西南部医療圏の患者さんに対して高度急性期医療の提供を行っております。また、地域の医療機関との連携に力を入れており、開業医の先生方との間でスムーズな医療連携が行えるように努めています。

今回は、地域における病院の役割や特徴ある診療、新築移転に伴う院内改革などについて、院長である岩渕(いわぶち ) ( さとし)先生にお話を伺いました。

東邦大学医療センター大橋病院 外観
東邦大学医療センター大橋病院 外観

当院は、1964年に東京都目黒区に開院した東邦大学の附属病院です。開院から50年以上にわたり地域の医療を支え続け、2018年に同じ目黒区に新築移転を行いました。

移転後の新病院では、敷地拡大と減床に伴って1床あたりのスペースを広くするなど、患者さんにゆったりと療養していただける環境を整えています。機能面でも、ICU(集中治療室)6床やHCU(高度治療室)12床、SCU(脳卒中集中治療室)6床を設置したほか、陰圧個室やハイブリッド手術室を備えるなど、より高度な医療を提供するための設備拡充を図っています。さらに、この移転に際して、病診連携室や病床管理部門などをワンフロアに集めた“患者サポートセンター”を開設したことも当院の転機のひとつといえます。

ハイブリッド手術室
ハイブリッド手術室

開院以来、当院は二次救急病院として地域の皆さんの健康を支えてまいりました。今回の新築移転を経て、さらなる医療の質向上はもちろん、今まで以上に患者サービスの充実と地域の医療連携の強化に力を入れていきたいと思っています。

当院の循環器内科は、“心血管カテーテル”や“不整脈”、“心臓核医学”、“心臓超音波”といった専門グループで、心臓のほかにも四肢の血管疾患の治療にも力を入れています。

具体的には、虚血性心疾患心筋梗塞狭心症)に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI:percutaneous coronary intervention)や心房細動に対するカテーテルアブレーションなどを行っています。さらに、心房中隔欠損症大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療も実施可能です。

また、高齢患者さんの場合は心疾患が原因で脳梗塞を引き起こす(心原性脳塞栓症)ことがあります。そうした病気に関しても、診療科間で連携を取りながら適切な治療を行っています。

脳卒中をはじめ、脳腫瘍や脊椎・脊髄疾患、頭部外傷水頭症など、幅広い脳・神経疾患に対応しています。特に脳卒中(脳梗塞、脳出血くも膜下出血)の治療に関しては、脳卒中センター、SCU(脳卒中集中治療室)を備えて毎週ブレインハートカンファレンスを行い、複数の診療科で治療にあたっています。

当院は、2009年3月に運用を開始した東京都脳卒中救急搬送体制*を支える東京都脳卒中急性期医療機関のひとつとして、積極的に脳卒中患者さんの救急搬送を受け入れています。くも膜下出血に対する開頭クリッピング術やカテーテル治療に加え、脳出血による血腫を取り除く開頭血腫除去術、内視鏡的血腫除去術も積極的に実施しています。

一方、発症して間もない脳梗塞に対してt-PAを投与する血栓溶解療法に加えて、t-PAでは解けなかった血栓、あるいはt-PAが使用できない患者さんに対して、カテーテルによって直接血栓を取り除く血栓回収療法を行うことができる医師が4名いることも当院の特徴です(2023年6月時点)。脳梗塞に対する血栓回収療法は、近年注目されている治療法です。この治療を一人でも多くの方が受けられるように、区西南部医療圏では当院が中心となって、脳卒中急性期治療機関13施設が輪番制を組んで本治療を行う体制を整えました。今後は、ICT(情報通信技術)を導入してこのような病々連携をより迅速に進めるシステムを構築していきたいと考えています。

*東京都脳卒中救急搬送体制:脳卒中を発症した患者さんの搬送先として独自の基準を満たした医療機関(東京都脳卒中急性期医療機関)を選定し、速やかな救命と後遺症の軽減を目指すシステム

手術の様子
手術の様子

眼科では、“緑内障外来”と“網膜硝子体外来”、“涙器外来”、“眼形成外来”の四つの専門外来を構えて、さまざまな眼科疾患に対する治療を行っています。

特に緑内障の外来手術に力を入れており、線維柱帯切除術や非穿孔性線維柱帯切除術の実施で地域の高齢患者さんの視覚障害改善に尽力しています。また、三次元画像解析検査による診断も取り入れ、病気の早期発見、早期対応に努めています。

当院では、病診連携室やソーシャルワーカー室など通じて地域の医療機関との連携体制強化を図ってまいりました。

さらに、新病院に移転してからは予約センターを開設し、紹介状(情報提供書)を持った患者さんご自身が直接当院に連絡して外来受診予約ができる体制を整えました。これにより、患者さんを当院にご紹介いただく際、開業医の先生方の負担軽減が図られ、利便性が向上しました。

この予約センターでは、平日は8時30分~16時30分(土曜日は、第3土曜日を除き13時まで)の間で、患者さんのご都合のよいときに電話で予約を取っていただけます(2023年6月時点)。また、受診いただいた患者さんは、治療後に紹介元の医療機関に逆紹介しているため、シームレスに治療を受け続けられます。

そうした取り組みを行うことで、急性期病院である当院と近隣の医療機関との機能分化を図り、しっかり情報共有することで、患者さんも安心して治療が続けられるよう心がけています。

脳卒中急性期医療機関連携カンファレンス
脳卒中急性期医療機関連携カンファレンス

限られた病床数で、なるべく多くの患者さんを受け入れるために、病院全体で効率的な病床管理に努めています。特に特徴的な取り組みとしては、手術を受ける前の入院患者さんを診療科別の病床に分けずに受け入れるシステムの導入が挙げられます。

このシステムでは、まず患者サポ―トセンターの看護師が、患者さんの入院前日にあらかじめ受け入れ病床を割り振っておきます。入院後は手術を終えた患者さんから各診療科の病棟に移っていただき、より専門性の高いケアを受けていただいています。

特別個室
特別個室

このシステムを支えるために、毎朝各病棟の看護師長が集まってカンファレンスを行い、患者さんの病状や今後の治療についてお互いに情報を共有し、ダブルブッキングや余計な空床が生まれないようにしています。さらに、患者さんがいつ頃退院できるかを正確に把握するために、医師にも情報共有の意識を持ってもらい、必ず退院の前日までには患者サポートセンターに報告することを徹底しました。看護部と患者サポートセンターを中心として、病院全体で病床の効率的な運用に努めることで、病床稼働率の維持に努めています。

岩渕 聡先生

患者さんに優しい、患者さんファーストな病院になるためには、同時に職員ファーストを目指す必要があると考えています。

新病院では、患者さんのための設備は整えたものの、職員の休憩スペースなどで少々窮屈な所があります。今後はそうした部分も含めて、よりよい職場環境づくりにも注力していかなくてはなりません。また、病院の管理者である私と職員たちの距離も近く、いつでも言葉を交わせるようにしています。たとえば、何かあったらいつでも相談に来てもらえるよう、院長室は職員なら誰でも入れるようになっています。

医療を提供するのは職員です。患者さんによりよい医療を提供するためにも、今後も職員の皆さんが気持ちよく働ける病院でありたいと思っています。

当院では、医療の質向上に努めることはもちろん、外来患者さんをできるだけお待たせせず受け入れたいと考えています。そのため、ご来院いただく際にはまず、お近くのかかりつけ医の先生にご相談ください。その後、予約センターや病診連携室などのサービスをご利用いただけますと、外来時にスムーズなご案内ができます。

当院は、これからも“優しい心、親切な心のこもった医療の実践に基づいて、人々の生命を尊重し、人間としての尊厳と権利を順守する”という理念の下、地域に根付いた急性期病院として皆さんの健康を支えていきたいと思っています。当院を信頼して患者さんをご紹介していただいた医療機関の方々の期待に応えるためにも、紹介状(情報提供書)を持って来院いただいた患者さんにきちんと満足してお戻りいただけるように努めてまいります。

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  • 東邦大学医療センター大橋病院 病院長

    岩渕 聡 先生

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