大阪府豊中市にある公益財団法人唐澤記念会 大阪脳神経外科病院(以下、大阪脳神経外科病院)は、脳血管障害や脊髄疾患などの脳神経疾患に対して、救急対応から急性期医療、回復期リハビリテーションまでをワンストップで担う専門病院です。救急診療では24時間365日体制で救急搬送を受け入れるとともに、豊能医療圏のほか大阪北部や兵庫県阪神地区など広域における脳神経疾患の患者さんにも対応しています。そんな同院の特長について、院長の谷口 理章先生にお話を伺いました。
当院は1985年に脳神経外科に特化した病院として開設して以来、脳神経疾患の診療と研究の2軸で地域医療に貢献してきました。開設当初は、指定難病の1つであるもやもや病(脳を栄養する血管が狭くなったり閉じたりしていく病気)の病態解明に注力し、しだいに脳腫瘍(のうしゅよう)の治療と研究に重点を置くようになりました。現在は脳血管疾患の患者さんの救命と治療、回復期リハビリテーション、脳ドック*などを通じ、予防から治療まで脳神経疾患に関する総合的なケアを提供しています。
*大阪脳神経外科病院で受けられる脳ドックは以下のとおりです。
・以下の項目に該当する方は、検査が施行できない場合があります。
当院は、大阪府から2次救急医療機関の指定を受け、24時間365日体制で救急医療に努めています。対応エリアは豊中市、池田市、吹田市を含む豊能医療圏を中心とし、隣接する大阪市からも救急搬送を受け入れ、緊急での検査や手術にも対応してきました。また地域の医療機関と連携し、必要に応じてより重症な3次救急の患者さんの対応にも尽力しています。
2020年には低侵襲内視鏡手術センターを設立し、鼻から手術を行う“経鼻内視鏡手術”を積極的に行ってきました。この治療法は、頭蓋底に発生する腫瘍に対し、鼻孔から内視鏡を挿入して手術を行うものです。従来の方法と異なり頭皮の切開や開頭をする必要がなく、脳への影響が最小限で済み術後の回復も早いため、体への負担が少ない治療です。
当院では、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、髄膜腫といった頭蓋内腫瘍に対して経鼻内視鏡手術を行っています。低侵襲内視鏡手術センターには、長年同手術を担当してきた医師が在籍し、慎重な診断と治療に注力しています。これまでの方法では治療が難しい、あるいは開頭手術はどうしても怖いという方に、経鼻内視鏡手術が適応となるかもしれません。ぜひ選択肢の1つとして検討していただければと思います。また当センターでは今後も経鼻内視鏡手術以外のあらゆる脳神経外科手術にも内視鏡を取り入れることで、患者さんの心身の負担を可能な限り軽減できるよう努める所存です。
当院は、2007年に脳血管内治療センターを開設し、脳梗塞やくも膜下出血といった脳卒中に対する急性期治療の専門性を高めてきました。脳血管内治療とは、カテーテル(細い管)を使って血管内部から脳や脊髄の病気を治す治療法です。脳血管内治療の登場により、従来の開頭手術では治療が難しかった症例に対しても、切開せずに治療を行える可能性が出てきました。設備面では、2021年時点に新たな脳血管造影装置を導入し、より微細な血管構造の描出や脳血管内治療の画像診断に役立てています。
脳卒中や脊髄疾患は治療後にさまざまな障害が残る可能性があり、患者さんの状態に応じてなるべく早期にリハビリテーションを始めることが肝要です。そのため当院では、リハビリテーション室と回復期リハビリテーション病棟というハード面、および医師や看護師をはじめ、薬剤師、理学療法士、言語聴覚士、栄養士など各分野のスペシャリストというソフト面を充実させ、急性期治療後の早期リハビリに尽力してきました。多職種が連携して定期的にカンファレンスを行うほか、それぞれの専門性を生かして、寝たきりの防止、栄養サポート、日常生活動作の自立支援などを積極的に行っています。
当院は、脳神経疾患に特化した病院として、経鼻内視鏡手術のような体への負担が少ない治療を積極的に取り入れながら患者さんの治療に尽力してきました。これまでも地域の医療機関などから患者さんを継続的にご紹介いただいていますが、今後は緊急手術に対するフットワークの軽さや層の厚い医療体制を活かして、さらに多くの患者さんに対応できるよう努めたいという決意です。
コロナ禍をへて、救急医療を取り巻く環境はますます厳しくなっています。当院は引き続き地域医療の要として救急搬送を積極的に受け入れるとともに、脳神経疾患のスペシャリストとして質の高い診療と研究にまい進して参ります。