院長インタビュー

家族のように寄り添い、専門性の高い診療を提供する明石市立市民病院

家族のように寄り添い、専門性の高い診療を提供する明石市立市民病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
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地方独立行政法人 明石市立市民病院は、1950年の開院以来、地域のニーズに応えるために診療科や設備の充実などを図り、成長を続けてきました。

そんな同院の志や強みとしている分野、推進している取り組みなどについて、院長の久津見 弘(くつみ ひろむ)先生にお話を伺いました。

外観(提供)

当院は、1950年に病床数124床の病院として開院しました。その後、整形外科をはじめさまざまな診療科が新設され、1989年には新病棟竣工、さらに1991年には新病院竣工という形で少しずつ成長してきました。現在は、24の診療科目(標榜診療科)と329床の病床を有し、地域医療のニーズに幅広く応え続けています。

当院は、明石市をはじめとした地域全体をよく見渡し、この地域内であらゆる医療を受けられる体制づくりに貢献していくことが、大きな使命であると考えており、2011年には地方独立行政法人化を果たし、そのことにより迅速に対応できる体制作りに取り組んでいます。

また、地域医療を支えるため“断らない救急”にも力を入れています。年間3,000台前後の救急搬送を受け入れており、ご自身で来られる救急患者さんも含めると、当院での救急受け入れ件数は年間5,000件*を超える状況となっています。地域の皆さんに“明石市立市民病院があってよかった”と思っていただけるよう今後も体制の強化に努めてまいります。

*救急受け入れ実績……2020年/5,039件、2021年度/5,115件、2022年度/5,528件、2023年度/5,753件

内観

当院の消化器内科は、消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)だけでなく肝胆膵(肝臓、胆嚢・胆管、膵臓)も含め、消化器全般の幅広い病気に対応しております。低侵襲(ていしんしゅう)な内視鏡治療を得意としており、2012年からは早期の消化管がんに対して、内視鏡に取りつけた高周波ナイフで粘膜に広がったがんを切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)(ESD)を導入しました。

当科の最大の強みは、消化管・肝・胆・膵の全ての分野で専門医・指導医がそろっていることです。そのため、さまざまな消化器疾患に対して専門性の高い診断・治療ができる科であると自負しております。

整形外科は、骨折脱臼、関節変性疾患、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)椎間板(ついかんばん)ヘルニアなどの脊椎脊髄(せきついせきずい)疾患の患者さんを対象とした手術を多く手がけております。

中でも得意としているのは関節変性疾患に対する人工関節置換術で、2024年に導入した人工関節手術支援ロボット・Mako(メイコー)によって、より正確な骨切りや人工関節固定が行えるようになりました。

Makoを導入している病院は全国的に見てもまだ数少なく、現在、兵庫県内でMakoを導入している医療機関は当院を含め3院のみです(2025年1月時点)。

婦人科の最大の特徴は、ウロギネコロジー領域の疾患(骨盤臓器脱尿失禁過活動膀胱などの骨盤底疾患)に対する治療を行う“ウロギネセンター”を有していることです。骨盤臓器脱の治療を担当する医師は、婦人科の部長であり骨盤臓器脱の診療を30年以上も続けるベテラン医師です。ウロギネセンターにおける骨盤底疾患の手術件数は年間約200件*を超え、全国的にみても豊富な手術件数となっています。

また、当科は子宮筋腫卵巣腫瘍子宮外妊娠などの良性疾患に対する内視鏡手術も得意としています。2022年度には4K3D腹腔鏡(ふくくうきょう)システムを導入しており、より高精度な手術提供が可能となりました。

*骨盤臓器脱手術の治療実績……2022年度:246件、2023年度:243件

乳腺外科は、乳腺に関する幅広い疾患の診断および治療を行っており、特に乳がんに対しては早期診断と“患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療方法の提案”を心がけております。早期診断のため、乳腺エコー、マンモグラフィ、組織診断、乳腺MRI、CTと各種検査体制を整え、病理医や放射線科医、放射線科技師などとの連携によりスムーズな診断へつなげています。

また、乳腺外科を受診される患者さんの中には、男性医師による診察をためらう患者さんもいらっしゃるかと思いますが、当科には常勤の女性医師が在籍しており、さらにマンモグラフィも女性の放射線技師が担当していますので、気兼ねなく受診いただけます。

糖尿病内科は、糖尿病の早期発見、早期治療、適切な血糖コントロールによる合併症の予防や進展防止を目指しております。当院は総合病院ですので、合併症のある患者さんに対しても眼科、腎臓内科、循環器内科、皮膚科、整形外科など関連各科と連携しながら診療しております。

また、肥満症に対して最近保険適応となった薬剤があるので、当院でも対応できる体制を整えていく方針です。

私は院長兼内視鏡センター長として、特に胆膵領域を中心とした診療にあたっておりますが、日々の診療のなかで痛感させられるのが“数あるがんの中でも、特に膵がんは早期発見が大切”ということです。

膵がんは悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の中でも死亡率が高いものの代表格であり、手術をした場合でも5年生存率は20~40%と言われています。そのため私は、明石市における膵がん死亡率を減らし、膵がん完治の可能性を少しでも高めるために、『明石市膵がん早期診断プロジェクト』の代表となって“膵がん疑いのサインの早期発見”“10mm未満という早い段階での膵がん診断”などの実現を目指しております。

明石医療センターや兵庫県立がんセンターと協働し、さらに明石市医師会にも働きかけ“かかりつけの先生方のもとで、手軽に膵がんリスクチェックや検査の相談などをしていただける”という体制づくりを推進中です。

私が医師として大切にしている言葉に「抱樸(朴)含真(ほうぼくがんしん)」という中国の言葉があります。“樸”という字には「切り出したままの木」というような意味がありますが、それを“抱”つまり抱きしめるということは、枝が刺さり痛い思いをするかもしれないし、勇気のいることです。しかし、それでも抱きしめるというところに真実があると教えていてくれます。医療に置き換えて考えれば、たとえどんな患者さんであっても隔てなく手を差し伸べ、抱きかかえ診療を行う、その姿勢にこそ医療の本質・原点があると言えるのではないでしょうか。

当院のスタッフはみんな、患者さんからの相談を“身内からの相談”と考え、自分の身内ならどのように接するか、どのような治療を提案するかという目線で日々の診療にあたるよう心がけております。

市民病院である当院にとって、明石市民の皆さんは家族のような存在です。ぜひ皆さんも“ちょっと気になる症状があるので、医療に詳しい家族に聞いてみる”というような気持ちで、お気軽にご相談ください。

*写真提供……明石市立市民病院

*医師や提供している医療についての情報および本文中の数字は全て2025年1月時点のものです。

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