疾患ガイド

レビー小体型認知症の薬物療法:薬の種類や副作用

レビー小体型認知症の薬物療法:薬の種類や副作用
橋本 衛 先生

近畿大学医学部 精神神経科学教室 主任教授

橋本 衛 先生【監修】

目次
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レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies:DLB)の治療は、薬の量の調整が重要です。この記事では、主な治療薬であるドネペジルやゾニサミドの効果、注意すべき薬剤過敏性、そして薬物療法と併せて行いたい環境調整やケアについて解説します。

👉 このパートをまとめると
レビー小体型認知症ではさまざまな症状が現れるため、症状に応じた治療が行われます。薬物療法は薬の副作用が出やすいため、少量から慎重に投薬を開始します。

レビー小体型認知症は、脳の中にレビー小体が蓄積し、神経細胞のはたらきを阻害することで引き起こされる認知症です。レビー小体は、主に“α-シヌクレイン”というタンパク質が神経細胞内で凝集し、蓄積することによって生じます。

レビー小体型認知症では、頭がはっきりしたりぼんやりしたりする(認知機能の変動)、実際には存在していないものが見える(幻視)、寝ている間に大声を出したり暴れたりする(レム睡眠行動障害)などのさまざまな症状が現れるといわれています。筋肉が固くなって転びやすくなったり、手足が震えたりするなどのパーキンソン病でみられる運動症状も現れます。

レビー小体型認知症の多彩な症状は、脳内の特定の神経伝達物質(アセチルコリンやドパミンなど)が不足することで引き起こされると考えられています。アセチルコリンの欠乏は幻視に関与し、ドパミンの欠乏は運動症状に関与するといわれています。

レビー小体型認知症の治療目的は患者さんの生活の質(QOL)の向上です。2026年時点では、α-シヌクレインの蓄積を止める治療法は確立されていません。そのため、現れている症状に応じて非薬物療法も含めた複数の対症療法(症状を和らげる治療)を組み合わせ、患者さんが穏やかに過ごせる時間を増やすことが目標となります。

レビー小体型認知症の患者さんは、薬に対して敏感に反応する“薬剤過敏性”を有する場合があります。そのため、一般的な服薬量であっても副作用が現れやすく、意識障害や症状の悪化を招くリスクがあります。そのため、薬物療法を行う場合は少ない量から投薬を開始し、副作用の有無を確認しながら慎重に増量することが推奨されています。

👉 このパートをまとめると
日本国内において、レビー小体型認知症ではコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル)の保険適用が認められています(2026年時点)。

日本ではレビー小体型認知症の治療薬として、ドネペジルが承認されています。この薬は脳内のアセチルコリン濃度を高める作用を持ちます。レビー小体型認知症の患者さんはアセチルコリンの欠乏がみられるため、薬で補うことによって認知機能の改善や幻視の軽減などを目指します。

レビー小体型認知症への効果が期待できる一方で、副作用への注意も欠かせません。ドネペジルは通常、少量から投与を開始し、患者さんの状態を確認しながら薬の量を調節していきます。特に飲み始めや増量時には、吐き気や嘔吐などの消化器症状、頻尿、徐脈(脈が遅くなる)、運動症状の悪化などがみられないか、ご家族など周囲の方による観察が重要です。効果が十分に得られない場合や副作用が強い場合は、使用を中止する可能性があります。

👉 このパートをまとめると
レビー小体型認知症でみられる運動症状に対しては、パーキンソン病の治療に用いられている薬が選択肢となることがあります。

パーキンソン病では、欠乏したドパミンを補うための主な治療薬としてレボドパがあり、レビー小体型認知症の患者さんに対しても使用が検討されます。ただし、レビー小体型認知症の患者さんの場合、まれに幻視や妄想が誘発される可能性があります。そのため、運動機能の改善と精神症状の悪化のバランスを慎重に見極めながら、極めて少量から開始され、増量する場合も最少量での投与となります。

レボドパを含む薬を服用しても運動症状が続く場合、レボドパ賦活薬(ゾニサミド)が選択肢の1つになります。ゾニサミドはレボドパを含む薬と併用することで、運動機能を改善する可能性があります。

👉 このパートをまとめると
レビー小体型認知症の主な症状である幻視は、ドネペジルのほか、漢方薬や環境調整、ケアなどを組み合わせることで症状の緩和を図ります。

抑肝散や抑肝散加陳皮半夏は神経の興奮を鎮める作用があり、神経症や不眠症などで保険適用となっています。レビー小体型認知症の患者さんでは、幻視やイライラの緩和に用いられることがあります。抗精神病薬と比較して薬剤過敏性に関するリスクが低く、高齢者でも使いやすい薬ですが、副作用として低カリウム血症に注意が必要です。

幻視や錯視は夕方や夜間などの不安になりやすい時間帯に、室内の物を見間違えることで生じている可能性があります。そのため、部屋を明るくする、室内に洗濯物を干さないなどの環境調整や、患者さんの訴えを否定せず感情に寄り添うケアが有効な場合があります。また、日中に他者との交流を持つことで改善する可能性があります。

幻覚や妄想の症状が現れた場合、一般的には抗精神病薬が選択肢となります。しかし、レビー小体型認知症の患者さんでは、薬剤過敏性によって意識障害や転倒、誤嚥(ごえん)などを招く恐れがあります。そのため基本的には投与を避け、まずはドネペジルや漢方薬、環境調整、ケアなどを行ったうえで、症状が改善しない場合に極めて少量の抗精神病薬の投与が検討されます。

Q. レビー小体型認知症は薬で完治しますか?

A. 2026年時点では、レビー小体型認知症に対する根本的な治療薬はありません。対症療法によって症状を安定させ、穏やかな生活を長く維持することが治療の目標となります。

Q. アルツハイマー型認知症の治療薬(レカネマブ、ドナネマブ)は使えますか?

A.レカネマブやドナネマブといった抗アミロイドβ抗体薬は、アルツハイマー病の患者さんの脳内に蓄積したアミロイドβを除去する薬です。保険適用の対象は“アルツハイマー病による軽度認知障害・軽度認知症”であり、アルツハイマー型認知症の初期の段階で進行を抑えるために用いられます。したがって、2026年時点では、レビー小体型認知症は適応外となっています。

レビー小体型認知症の薬物療法は、症状に応じた適切な選択と、薬剤過敏性への細心の注意のうえで行われます。また、薬物療法だけでなく、ご家族による日々の観察と、環境調整などのケアを組み合わせることが、患者さんのQOLを支える力となります。

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