肝硬変は現在、「治る」病気になりつつあると湘南藤沢徳洲会病院の岩渕省吾先生はおっしゃいます。肝硬変が進行するとさまざまな合併症が出現しますが、これらはどのようなもので、どのように治療を行うのでしょうか。また、食事療法においてはどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。引き続き岩渕先生にお話をうかがいました。
「肝硬変の原因に対する治療―肝硬変を「治す」ために(1)」で述べたとおり、非代償期になるとさまざまな合併症が出現します。そのため、合併症の治療が主に行われます。
肝硬変の代表的合併症を以下に挙げます。
など
これらの合併症は肝硬変の進行とともに現れる A:肝機能低下(低アルブミン血症、黄疸)、B:門脈圧亢進症、C:門脈大循環シャントなどが原因となって起こります。以下、順番に対策を挙げます。
血清アルブミンの低下(A)と門脈圧亢進(上昇)(B)が原因となります。まずは塩分制限、利尿薬の投与、アミノ酸製剤内服、アルブミン製剤の点滴投与を行います。
Bを原因として起こります。内視鏡を用いた静脈瘤硬化療法や血管カテーテルを用いた治療、手術的治療法や薬による補助療法も行われます。
Bが原因です。血管カテーテルを用いた脾臓の塞栓術により脾臓を小さくしたり、手術により脾臓を摘出し同時に静脈瘤を外科的に治療する場合もあります。
AやCが原因となります。抗糖尿病薬やインスリン治療を行います。血管カテーテル治療や手術により、異常な門脈の血流を変えることで糖尿病がよくなることもあります。
A、B、Cが原因となります。抗生剤やラクチロースの内服で腸内アンモニア生成を抑えたり、低タンパク食や分岐鎖アミノ酸製剤の投与も行われます。Cの血行異常で門脈血が肝臓に入らず、全身を空回りしている場合は、その異常短絡路をカテーテルで治療したり、外科的に治療することにより、著明に(はっきりと明らかに)改善することがあります。
何といっても早期の原因治療(抗ウイルス療法など)による肝炎の沈静化が重要です。
肝硬変症で亡くなる方の原因をみると、以前は食道静脈瘤の破裂や肝不全が多かったのですが、この10年は肝臓がんによる死亡が最も多くなっています。つまり、肝臓がんが克服できれば、肝硬変の予後は大きく変わります。この意味で、最近進歩の著しい抗ウイルス療法に大きな期待が持たれています。
肝硬変になると肝臓が硬くなるため、脾臓や胃腸、膵臓からの血流が肝臓に入り難くなり、門脈という太い血管の圧が上昇します(門脈圧亢進)。するとその流域の血管(静脈)の圧が上がり、食道周囲の静脈が腫れあがったり(食道静脈瘤)、脾臓の腫大を起こして機能が亢進し、血小板減少の原因になります。
肝硬変の患者さんには食事療法が必要となりますが、最近では治療薬などの進歩により、以前ほどの細かい食事制限は必要なくなりました。また代償期、非代償期それぞれで食事療法のポイントは異なります。
その昔、肝臓にはシジミが良いと言われてきましたが、貝類には鉄分が多く、過剰に摂ると肝機能に悪影響を及ぼします。肝臓病の患者さんでは血清鉄が高い方が多く、瀉血といって献血のように血液を抜く治療もあるほどです。鉄分の多い食材を調べ、貧血でない限り、過剰な鉄摂取は控えた方がよいでしょう。(貧血の場合は鉄の摂取を控えるとより貧血がひどくなる恐れがあります)
湘南藤沢徳洲会病院 肝胆膵消化器病センター センター長
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