「骨粗しょう症とは」の記事では、「健康長寿」の大敵となる骨粗しょう症という病気の概要について説明しました。それでは、この病気を自覚して治療するため、また予防するためにはどのようなことに気を付ければよいのでしょう。山王メディカルセンター・女性医療センター長の太田博明先生にわかりやすくご説明いただきました。
骨粗しょう症の治療目的は骨折の防止ですが、わが国では高齢者が急激に増加しており、治療が十分に行われていません。この背景には、骨検診の受診率が低いことがあります。また、椎体の骨折を起こした場合、その2/3のケースでは痛みなどの明らかな自覚症状がありません。そのため医療機関を受診せず、マッサージや鍼灸で対応する人が多く見られます。正しい診断と治療が行われなければ、症状は悪化していくばかりです。これは重大な問題です。このようなことを防ぐためにも、骨粗しょう症に対する正しい知識を持ち、自発的に受診することが大切です。
骨粗しょう症による椎体以外の骨折は痛みを伴うため、症状を自覚することができます。ところが、先に述べたとおり、椎体の圧迫骨折のうち2/3のケースは無症状です。そのうえ、残りの1/3のケースにおいても、「背中や腰が重い・違和感がある」程度にしか症状を自覚できません。このような症状の時には、椎体骨折の可能性があることを覚えておきましょう。
背中や腰が丸くなったり、折れ曲がったりしたら、椎体の圧迫骨折が必ずあります。この前触れとしては、年々の身長の低下があります。身長がどれぐらい低下したのかを自覚するためには、若い頃の身長を覚えておくことが必要です。昔の身長がわからなければ、両手を地面と水平に伸ばした長さ(両肢長)がほぼ身長に匹敵するとされていますので、そこからおおよその元々の身長を知ることが可能です。
ここで2cmの身長低下があった場合、椎体に1個の圧迫骨折がある可能性は50%とされています。また4cm以上の身長の低下があったならば、2個以上の椎体骨折の可能性があるとされています。このように、身長の低下から椎体骨折の可能性を知ることができます。ぜひ覚えておいてください。
ただし、時間が経過した古い椎体骨折は椎体の変形によりわかりますが、新しく起こった骨折は普通のX線撮影ではわからないことが多く、MRI撮影を要します。しかし、通常のクリニックではMRI装置が設置されていませんので、骨折はしばしば見逃されることがあることにも注意が必要です。それを回避するためには、より専門性の高い病院を受診することも1つの方法です。
骨折を確認できれば、あるいは、骨密度を測定して骨粗しょう症といえる程度にまで骨密度が低下していると認められれば、治療開始となります。医師・患者の多くはともに「薬物治療により骨折リスクを下げたい」、「長期間継続する必要性がある」と考えており、治療意識は共通であるとされています。しかし、治療を継続することは大変であり、1年経つと指示された通りに薬を服用し続けない患者さんが約半数を占めるのが現実です。そのためより高い治療継続率が期待できる薬剤が望まれています。また、どのような薬物治療にもいえることですが、効果的に治療をするためにも医師の指示通りに我慢強く薬を服用し続けるようにしましょう。
骨粗しょう症の予防としてすべきことは、年代によって各々異なります。20歳までは、骨の量をできるだけ多く貯えておく必要があります。骨がよく発育するのは、女子ではおおよそ10歳から14歳、男子では11歳半から15歳半までの期間です。この時期によく栄養を取り、同時によく運動をすることが大切です。
骨のために良い栄養素としては、カルシウムのみを連想する方が多いかもしれません。もちろんカルシウムは重要ですが、それだけではいけません。それ以外に骨を構成するリン、コラーゲン(タンパク質)も必要です。そしてビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンC、さらに葉酸など、幅広く摂取するようにしましょう。
45歳からは骨の健康に留意した生活を心がけ、せっかく貯えた骨の量を減らさないようにしましょう。その後は必要に応じて薬剤を使用し、特に65歳からは骨折を防ぎ、75歳からは2個以上の骨折を防止しなければなりません。複数の箇所を骨折すると、体のバランスが崩れることで別の部分に負担がかかり、別の骨折の原因となる(骨折連鎖・ドミノ骨折)ことがあります。また、こうした多発骨折は合併症を容易に引き起こします。
85歳からは、骨折の原因となるような転倒に細心の注意を払うことで、いつまでも自力で立ち上がり、歩ける体を保ちましょう。
また、骨粗しょう症には遺伝の影響があります。特に母親や母方の祖母などに骨粗しょう症の骨折や罹患がある場合、骨粗しょう症にかかる可能性は高いといえます。この点を自覚して、予防に努めましょう。
骨の健康を守る基本は適切な栄養素の摂取と運動の励行ですが、忘れてはならないのは骨検診を受けることです。これら3つの基本は各世代に共通な課題ですので、家族ぐるみで一緒に取り組みたいものです。正しい知識を身につけ、骨の健康を守っていきましょう。
関連の医療相談が13件あります
骨粗鬆症について
75歳の母の事で相談です 1ヶ月前に急に尾てい骨から腰、膝から太ももに激痛が走り痺れもでたため総合病院でMRI、レントゲン、骨密度検査をした結果、脊柱間狭窄症と骨粗鬆症が見つかりました。 脊柱間狭窄症はそこまで重症では無いそうですが骨粗鬆症は85歳の骨だと言われたそうです。 1つの病院では月に一回飲むボノテオ錠を処方され 別の病院では週一回飲むボナロン傾向ゼリーを処方されたそうです。 同じ状態ですが出された薬が違いいっぱんてきにはどちらの薬の方が効くのでしょうか? (人によって違うのは分かっているのでそう言ったご回答ではなく、メリットデメリットや、効果の傾向、副作用などを教えて頂けると選択する上で参考になりありがたいです) また、こう言った薬物治療の目的は進行を止めるためですか?それとも治していくためですか?それとも進行を遅らせるためですか? 75歳で85歳の骨とは相当不味いのでしょうか? よろしくお願いします!
骨粗鬆症の注射について
骨粗鬆症の治療薬、ビスホスネート剤を使うと顎骨壊死の副作用があるとのことですが、その発生頻度は何%でしょうか?特にボンビバについて教えて下さい。 エルシトニンという2週間に一回の注射薬についての詳しい副作用についても教えて下さい。宜しくお願いします。
骨密度の検査
昨年、母がつまずいて転んだ際に、右手首の骨折をしました。そのときに、先生から閉経すると骨粗しょう症になる可能性があり、ちょっと転んだんだけでも骨折しやすいと聞きました。昨年ぐらいから生理の量も少なり、ここ数ヶ月はきてないのでそろそろ私も閉経かなと思っています。そこで、現在の骨密度をキープして骨粗しょう症にならないようにしたいと思っているのですが、特に症状がなくても骨密度の検査は受けられるのでしょうか?どのような検査ですか?
生理不順。
生理が3ヶ月以上来ません。 ストレスとかはないです。 特に、何も無いのですが10代の時から生理が不順です。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「骨粗しょう症」を登録すると、新着の情報をお知らせします