院長インタビュー

今後50年を見据え、高度で先進的ながん医療に取り組む千葉県がんセンター

今後50年を見据え、高度で先進的ながん医療に取り組む千葉県がんセンター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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千葉県千葉市中央区にある千葉県がんセンターは、千葉県におけるがん診療の中心的役割を果たすため、1972年11月に設立されました。病院長の加藤(かとう) (あつし)先生に病院独自の取り組みや診療体制についてお話を伺いました。

当院は年々増加するがんの制圧と地域医療への貢献を掲げて、1972年11月に開院しました。2006年には都道府県内でがん医療の中心的な役割を担う病院として都道府県がん診療連携拠点病院に認定、2019年にはがんゲノム医療拠点病院と小児がん連携病院に指定されています。

当院は千葉市の東南部に位置し、市の中心部から約5.5キロメートル離れた緑豊かな台地にあります。付近には国立病院機構千葉東病院やJCHO千葉病院があり、少し離れた場所には千葉県こども病院や千葉県リハビリテーションセンターがあります。そのなかで当院はがん専門病院として、がん診療の中心となる手術療法・化学療法・放射線療法による集学的治療から、がん診療をささえる緩和医療まで、高度で専門性の高い医療サービスを提供しています。また、遺伝子診断の分野ではがんゲノム医療拠点病院として、県内で中心的な役割を担っています。

当院は2020年10月に地下1階・地上9階建ての新病棟がオープンし、診療体制がさらに充実しました。その1つが手術支援下ロボットであり、ダヴィンチサージカルシステムの2台体制で手術を行っています。ダヴィンチは患者さんの体内に内視鏡カメラとアームを挿入し、モニターに映し出された3次元画像を見ながら遠隔操作で手術を行う支援ロボットです。手術する部位を直接目で見てがんを取り除く開腹手術などに比べて、患者さんへの体の負担が少ない特徴があり、当院では前立腺がん、腎がんの他、大腸がん胃がん肺がん、などの手術で積極的に使用しています。そのほか、IMRT(強度変調放射線治療:放射線の強さに強弱をつけて腫瘍に集中的に照射を行う)など、様々な放射線治療の機材を導入し、先進的な放射線治療を可能にしています。

当院では、2020年から腫瘍を体外から電磁波で加温する“ハイパーサーミア(温熱療法)外来”を始めました。人のがん細胞が42.5度以上の温度になると死滅する作用を利用して、腫瘍を縮小させる効果が期待できます。また、40度前後の温度上昇であってもがん薬物療法や放射線治療の増感効果を得ることができると考えられています。この治療を受けられるのは、2024年7月現在、千葉県内では当院のみとなっています。

当院の遺伝子診療科では、患者さんのがんに起きている遺伝子の変化や、患者さん自身の遺伝子からみたがんになりやすい体質などを解析し、1人ひとりの遺伝子情報に合ったがんゲノム医療、遺伝医療を行っています。

標準治療が終了となった(あるいは終了が見込まれている)固形がんや標準治療のない希少がんの患者さんを対象に遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイル検査)を行います。100種類以上のがんの遺伝子を1回の検査で網羅的に解析して抗がん薬の選択に役立てます。また、がんの約5%は遺伝的な体質により発症する遺伝性腫瘍と言われています。若年発症、多発・重複性、家族集積性が特徴的で、遺伝的検査によりがんになりやすい遺伝的な体質についてカウンセリングなどを行う遺伝医療を行っています。患者さんご本人だけでなく、がんでない血縁者の方も受診することができ、将来にわたり気をつけるべきがんの対策を立てます。

当院ではがんゲノム医療推進のため、週1回、がんゲノム医療に関連する診療科の先生方、および県内の連携病院の多職種の方々に集まっていただき、がんの治療方針を検討するエキスパートパネルを開催しています。エキスパートパネルでは当院と連携病院の毎回5件から10件ほどの症例について、遺伝子変異の検査の結果をもとに期待される薬があるかを検討しています。

当院では緩和医療も重要ながん診療の柱の1つに据えています。緩和医療はがん治療に伴う痛みやつらさを和らげ、患者さんやご家族のQOL(生活の質)の向上を目指すものであり、当院では緩和医療科外来、緩和ケアチーム、緩和ケア病棟を設けて医療を提供しています。特に緩和ケア病棟の病床数は計53床あり、非常に多くの緩和ケア病床数を誇っています。病棟で入院される患者さんには緊張の緩和や疼痛の軽減を目的としたマッサージ療法、精神的緩和や改善をめざす音楽療法なども行っています。

また、早い段階から疼痛のコントロールなどの苦痛の軽減を目的に緩和医療科や精神腫瘍科の医師、看護師、薬剤師など複数の職種で構成されている緩和ケアチームが病室を訪問し、患者さんをサポートしています。

さらに、在宅の緩和ケアについては、地域の訪問医や訪問看護ステーションと連携して、ご自宅でも安心して過ごせる在宅緩和ケア移行支援を行います。在宅療養の継続が困難になった場合に備え、当院での入院受け入れ体制を整備しており、訪問医や訪問看護ステーションの要請を受け、緩和病棟等で入院をお受けしています。また、研修会などを通して地域の医療者への支援および普及啓発に努めています。

当院では臨床研究に積極的に取り組んでおり、病気の原因解明や予防、診断、治療の改善などのため、患者さんにご協力をいただきながら研究を実施します。

未承認および適応外の医薬品や医療機器などの承認を得る目的で実施する臨床試験を治験といい、当院では主に新しく開発された抗がん薬の治験などに積極的に取り組んでおり、治験臨床研究センターを設置して治験の実施支援と総括管理を行っています。治験への参加を希望される方は、主治医にご相談いただいたうえで当院までお問い合わせ下さい。当院で行われている治験・臨床研究についてはこちらをご覧下さい。

臨床研究(治験)について http://www.pref.chiba.lg.jp/gan/riyo/kanja/rinsyou/index.html

がん診療は日々進化しており、さまざまな診断法や治療法が開発されています。当院はがん診療連携拠点病院として高度で先進的な医療体制を整え、診療にあたっています。また、新しく開発された抗がん薬の治験に積極的に取り組んでおり、がん医療の進歩と先端的な医療を患者さんに届けるために努力をしています。今後も新しい技術や治療法を積極的に導入すると共に、多様化するがん医療に対応できる医師や職員の育成にも取り組んでまいります。

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