静岡県三島市にあるJCHO三島総合病院は、三島市で唯一の公的病院として地域医療に幅広く貢献しています。病気の早期発見から治療、自宅での療養までをシームレスに支えたいという、同院の地域での役割や今後について、院長である赤倉 功一郎先生に伺いました。
JCHO三島総合病院の前身は、1946年に開設された三島社会保険病院です。名称のとおり、社団法人の全国社会保険協会連合会によって運営されてきました。
その後、2011年に行われた年金・健康保険福祉施設整理機構法の改正によって、2014年に新たに発足した独立行政法人の地域医療機能推進機構(JCHO)が社会保険病院、厚生年金病院、船員保険病院を統合して直接運営する形となり、当院もこのJCHO発足と同時に“JCHO三島総合病院”へと改称し、三島市の中心部から、箱根山西麓ののどかな環境に新築移転しました。
JCHOの理念は、“地域の住民、行政、関係機関と連携し、地域医療の改革を進め、安心して暮らせる地域づくりに貢献すること”です。当院もその理念のもとに、三島市唯一の公的医療機関として、地域住民の皆さんに良質で思いやりのある医療を提供するべく、日々努力を続けています。
当院の属する駿東田方医療圏には、基幹病院として沼津市立病院、順天堂大学医学部附属静岡病院がありますが、2施設とも富士市以東の静岡県東部全域の患者を受け入れている状態です。
その環境の中で当院が果たすべき役割は、患者さん一人ひとりに適切な治療を判断し、当院で治療を行う、しかるべき医療機関に紹介する、あるいは基幹病院からすぐに元の生活に戻るのが難しい患者さんを受け入れ、回復期リハビリテーションなどを行うことと考えています。いわば、基幹病院と地域のクリニックをつなぐ存在といえるでしょう。
そのため当院では、一般病床を2病棟109床、地域包括ケア病棟50床を備えているほか、予防医療に取り組んでいる“健康管理センター”、在宅療養に対応する“訪問看護ステーション りあん”、“介護老人保健施設”を併設。予防医療から急性期治療、在宅復帰までを一貫してサポートできる体制を整えています。
当院の透析センターでは、慢性腎不全に対する血液透析・腹膜透析導入、維持透析管理などを行っています。三島市や周辺地域では、腹膜透析を行っている医療機関があまりないため、多くの腹膜透析患者さんが通院しています。
全国的に高齢化が進んでいますが三島市も例外ではなく、当院の透析患者さんを見ると、高齢のために合併症を抱えた患者さんが多いという特徴があります。地域のクリニックで透析治療を受けていても、合併症などによりトラブルが起こることも少なくありません。
当院では、地域のクリニックからの紹介で入院した患者さんに維持透析を行いながら、地元に戻れるようリハビリテーションするといった、地域の透析治療全体に対するサポートも行っています。
近年では、白内障の手術を日帰りで実施しているクリニックも多くなっています。当院でも、白内障の日帰り手術を行っていますが、1泊2日での入院手術を選ぶ患者さんも少なくありません。
白内障の日帰り手術を受けた場合、翌日は再び受診する必要があります。しかし手術直後の見えづらい状態での帰宅や通院は、患者さんにとって大きな負担となることもあります。入院して白内障手術を受けることで、患者さんの負担も軽減できますし、翌日の診察も受けやすくなります。
白内障手術の件数は、三島市内でもかなり多いものとなっています。そのほか、緑内障や視神経疾患の治療にも力を入れています。
乳腺外科では、主に乳がんに対する治療を行っています。静岡県内には、2018年時点で34名の乳腺専門医(日本乳癌学会認定)がいますが、静岡県東部地区に限ると8名しかおりません。そのうちの1名が、当院の乳腺外科部長を務める永原 誠先生で、陣頭に立って積極的に検査・診療・手術を行っています。
永原先生は、静岡県立がんセンターの乳腺外科手術スタッフでもあります。そのため、がんセンターとの連携も密にとっており、高度な治療が必要な患者さんや、がんセンターでの受診を希望する患者さんは迅速に紹介を行っています。また、がんセンターから逆紹介を受けて、治療やケアを引き継ぐことも少なくありません。
乳腺外科は専門外来のため、基本的には完全予約制となっていますが、乳腺のトラブルを抱えて困っている患者さんに対しては、予約なしでも受診できるようにしています。
高齢化が進む現代の日本では、在宅で療養する患者さんの数も増え続けています。中にはがんと認知症といったように、複数の病気を抱える患者さんも少なくありません。
それでも多くの患者さんは、住み慣れた地域で療養したい、自宅で自分らしく過ごしたいと思うものです。その願いを実現するため、当院では“訪問看護ステーション りあん”を設置しました。
訪問対象地域は三島市、函南町、長泉町、清水町で、体調の確認や日常生活のサポート、医師の指示を受けての医療行為、介護相談などをご自宅へ訪問して行っています。場合によっては、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師、認知症認定看護師*などのスキルをもった当院の看護師も協力して、患者さんが安心して日常生活を送れるよう支援しています。
*脳卒中リハビリテーション看護認定看護師、認知症認定看護師……日本看護協会より認定
私は2024年4月に院長に就任しましたが、開院から80年弱という歴史の中で育まれてきた地域住民の皆さんからの信頼をひしひしと感じています。当院は山麓の静かな環境にありますが、決して交通の便がよい場所とはいえません。それでも多くの患者さんが来院されることからも、寄せられる期待の大きさが分かるでしょう。
当院は三島市内で唯一の公的病院です。その果たすべき役割は、基幹病院や地域のクリニックといった医療機関だけではなく、行政や周辺地域とも連携・協力し、ニーズに合わせた医療サービスを提供できるよう地域医療の改革を進めていくことだと考えています。
急速な高齢化によって増加する慢性的疾患の患者さんを幅広くサポートすること、災害拠点病院として万が一の災害に対応できるようスタッフを充実させることも大切ですが、同時に地域住民の皆さまの健康増進に寄与するためには予防医療の普及も欠かせないと感じています。
社会保険病院では健康管理センターが充実しているところが多く、当院でも以前から三島市の住民検診など、地域や企業の集団検診を行っていました。現在でもそれは続いていますし、がん検診、人間ドック、脳ドックといった個人向けの検診も積極的に行っています。
また私は、泌尿器科の専門医・指導医(泌尿器科学会認定)として、主婦の友社から刊行されている『よくわかる最新医療シリーズ「前立腺がん」』を執筆してきました。前立腺がんのPSA検査の大切さ、前立腺がんと診断されたときの治療法、治療時や退院後に気をつけたいことなどを分かりやすく解説しています。患者さん自身が正しい医療知識を身につけることで、検査や治療に対する不安を軽減できるのではないでしょうか。
当院の目指すところは、予防医療から急性期治療、回復期リハビリテーション、地域包括ケア病棟、介護老人保健施設、訪問看護ステーションと、病気を早期発見して治療し自宅に帰るまでを切れ目なくサポートすることです。その役割を担って、今後も地域医療に貢献していきたいと思っていますので、どうかご支援をよろしくお願いします。
*病床数や診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年9月時点のものです。