日本癌(がん)学会(理事長:佐谷秀行・藤田医科大学がん医療研究センター センター長)は「光を究め、光で診て、光で治す がんに対する光線医療の最前線」をテーマに、高知市の会場とウェブライブ配信のハイブリッドで5月22日に「第39回市民公開講座」を開催する。
今回の市民公開講座の主要なテーマは、新たながんの診断、治療法として注目が集まる「光線力学診療」。腫瘍組織に集積しやすく光に反応する性質がある物質を患者に投与し、レーザーや可視光を照射してがん細胞の発光を捉えて診断したり、光化学反応によってがん細胞を治療したりする。悪性脳腫瘍に対して2014年に初めて保険適用になるなど、がんに対する新たな“武器”として期待が集まっている。
東京工業大学生命理工学院の小倉俊一郎准教授が「光線力学診療の研究開発」の演題で講演する。がん細胞に蓄積しやすく光を当てると発光する性質がある物質を投与し、がんの診断に役立てる光線力学診療のメカニズムや展望について概観する。
浜松医科大学泌尿器科学講座の三宅秀明教授は、「光で診断する―泌尿器科領域―」として、従来の腹腔鏡(ふくくうきょう)やロボットなどによる体への負担が小さい手術に光線力学診断を併用することによる治療成績の向上や術後の機能温存成績の向上など、泌尿器科領域のがんに対する光線力学診断の現状を解説する。
次いで国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科の成田善孝科長が「脳腫瘍の診断と治療」の演題で、がん患者の少なくとも10%が発症すると報告されていながら診断が遅れることもある転移性脳腫瘍を含む脳の病気の診断と治療、光を用いた悪性腫瘍の診断や治療について講演する。
最後の講演として、京都大学大学院医学研究科乳腺外科学の戸井雅和教授が「光で診療する―光線医療のまとめ―」として、がん診断の正診率向上、がんに対する薬物治療の効果のモニタリングに加え、新しい医療の開発にも寄与すると注目されている「光超音波診断法」について解説する。
登壇者4人らによるパネルディスカッションでは、参加申し込み時と当日参加者からの質問に答え、光線医療の最前線について、より理解を深めてもらう。
市民公開講座は13時半~16時半に開催し、会場は高知市の高知県立県民文化ホールの予定。定員は250人で、事前に事務局(電話:086-463-5344)に問い合わせのうえ、空席があれば直接参加可能。オンラインの参加希望者は申し込みフォーム、電子メール、ファクスで。締め切りは22日。参加無料。詳細は日本癌学会のウェブサイトで。
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