医療機関と企業、スタートアップ、支援機関などが集う「未来医療」の産業化拠点、「Nakanoshima Qross(中之島クロス)」が大阪市北区中之島に完成。2024年6月29日のグランドオープンを前に内覧会が6月12日に行われた。入居する企業や医療機関などが連携し、再生医療をベースにゲノム医療やAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット:あらゆるものをインターネットに接続する技術)活用など、医療技術の進歩に即応した「未来医療」の産業化を推進し、国内外の患者に提供することを通じて国際貢献を目指す。
「未来医療」はすでに提供されている最先端の医療よりもさらに先の「今はまだない」医療を意味する。Nakanoshima Qrossは、未来医療が社会実装されて「世界の当たり前」になるために乗り越えなければならない課題解決の場を提供する。2019年に民間企業など21社と大阪府で設立した「未来医療推進機構」が核となって運営。同機構は医療機関や大学・研究機関、企業、支援機関などが有機的に連携できるよう全体をまとめ、組織化する役割を担う。
▽拠点全体のオーガナイズ▽再生医療に関する企業・研究活動支援▽産学連携・起業家等育成▽国内外の医療機関とのネットワーク展開――などの事業を展開。特に細胞医療にかかわるサプライチェーン(供給網)のワンストップサービスは、未来医療の産業化加速に寄与すると期待される。また、スタートアップを含む企業や医療機関が再生医療事業に取り組む際に直面する困難や課題に対処するため「NQポータル」「NQコンシェルジュ」「NQセレクション」「NQまるっと&ロジ」の4つのサポートサービスを展開、市場探索から、製品化が進んで実際に再生医療など製品が購入され、治療に使われるまでの計10ステップを支える。
Nakanoshima Qrossは「中之島国際フォーラム」「未来医療 MED センター」「未来医療 R&D センター」の3つの施設(エリア)で構成され、それぞれ未来医療の「実践」「創造」「共有」の役割をもつ。1~2階の中之島国際フォーラムは、カンファレンスセンターや病院、交流・協創・発信の場となる「Qrossober Louge 夢」などが配置されている。3階以上は2棟に分かれ、11階建ての「未来医療MEDセンター」棟には高度健診センターや病院、クリニックなどが入り、未来医療を実践するための機能を有する。16階建ての「未来医療R&Dセンター」棟は産学医連携スモールオフィス・インキュベートスペースや企業が入居するリエゾンオフィスなどがあり、未来医療を創造する機能をもつ。
内覧会に先立つ説明会では、Nakanoshima Qrossでオープンイノベーションの中核を担う施設「三井リンクラボ中之島」を開設する「ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン:LINK-J」の三枝寛常務理事と、未来医療推進機構の澤芳樹理事長(大阪大学大学院医学系研究科名誉教授)が登壇。澤理事長は「かつて大阪大学医学部があった歴史のある中之島で構想から7年、Nakanoshima Qrossをオープンできたことをうれしく思っています。医学研究の社会実装を進め、ヘルスケアビジネスを普遍化し、グローバルに展開していきます。その中でアントレプレナーシップ教育にも力を入れていきます。一つ屋根の下に病院も入っており、R&Dから臨床応用の迅速化を進められる環境を整えることができました。産官学の共創からオープンイノベーションを推進していきます。今までは治療できなかった人を治すことのできる医療を展開すると共に、その産業化も実現していきたいと考えています」と述べた。
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