胃が重い:医師が考える原因と対処法|症状辞典
埼玉医科大学病院消化管内科 診療部長 教授
今枝 博之 先生【監修】
胃のあたりがなんとなく重い、胃の調子が優れないと感じたことのある人は多いのではないでしょうか。
こういったときに考えられる原因にはどのようなものがあるでしょうか。
日常生活が原因で胃の重さが現れる場合もあります。
食べ過ぎ飲み過ぎ、食事と同時に水分を飲み過ぎるといった習慣は胃に負担をかけます。また、脂っこい食べ物や寝る直前の食事も胃の負担となり、胃の重さの原因となることがあります。
昔からいわれていることですが、腹八分目でよく噛んで食べるのがよいでしょう。また、脂っこい食べ物や辛いものを好んで食べるような食習慣のある人は、一度見直してみる必要があります。
夕食は寝る時間の3時間前までには済ませるようにしましょう。
アルコールは食道や胃粘膜を傷つける原因となります。また、喫煙は胃粘膜の血流を低下させ、さまざまな症状の原因となります。
アルコールは適切な量にとどめましょう。また、アルコール度数の高いものはその分粘膜を傷つけやすいため注意しましょう。
喫煙は胃の症状を起こすだけでなく、さまざまな病気の原因となります。健康のためには禁煙することが好ましいでしょう。自力で禁煙することが難しい場合には、禁煙外来を受診することで禁煙補助薬の処方などを受けることができます。
自分でできる対処法を試しても症状がよくならない場合には、思いもよらぬ原因が潜んでいることもあります。一度医師に相談しましょう。
胃が重いという症状は痛みなどと比べて軽視されがちですが、中には、さまざまな病気が原因となっている場合もあります。
胃の重さは、胃腸や胆のう、膵臓などを含む消化器の病気で起こることがあります。
主に以下のような病気があります。
何らかの原因で胃の粘膜が炎症を起こした状態を胃炎といいます。中でも慢性胃炎は長引く胃の不調やもたれ、吐き気、ときには痛みなどの原因となることがあります。
胃液が食道のほうに逆流する状態を胃食道逆流症といい、逆流によって食道の粘膜が傷つき炎症を起こした状態を逆流性食道炎と呼びます。胃の重さやもたれ、げっぷ、痛み、酸っぱいものが込み上げてくるような感じや咳などの症状が現れます。
胃や十二指腸の粘膜に潰瘍という、えぐれたような傷ができた状態です。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているかどうかがこの病気の発症に大きく関与しているといわれています。また、消炎鎮痛剤の使いすぎなどが原因になることもあります。
症状として、空腹時の痛みや重い感じ、吐き気、胸焼けなどがあります。潰瘍によって血管が傷つくと吐血や血便の原因となることもあり、胃・十二指腸潰瘍による血便はタール便と呼ばれる黒いドロドロとした便となることが特徴です。
もし吐血やタール便が見られた場合には、すぐの受診が必要です。また、まれに深い潰瘍により穴があいて(穿孔)激しい痛みを伴う腹膜炎をおこすことがあります。このような場合も、緊急の対応が必要となります。
胃の重い感じ、痛み、胃もたれ、すぐ満腹になって食べられないなどの症状があるものの、胃カメラなどの検査を行ってもはっきりした病気がない状態です。
まずは胃炎や胃・十二指腸潰瘍などの病気が原因でないかどうかを確かめることが大切です。
胃がんでも、胃の重さやもたれ感などの症状が出ることがあります。
しかし、初期には無症状であることも多いといわれています。進行すると胃痛や、体重が減り痩せてくるといった症状が現れることもあります。
盲腸と呼ばれることも多い虫垂炎ですが、これは小腸と大腸のつなぎ目付近にある虫垂が炎症を起こし腫れたり、程度によっては破裂したりする病気です。
虫垂は右下腹部にありますが、虫垂炎の初期にはへその周りや胃のあたりの違和感や痛みが起こる場合も多いといわれています。時間の経過と共に痛みが右下腹部に集中していくのが特徴です。
症状として腹痛や吐き気、嘔吐などがありますが、進行して腹膜炎の状態となると高熱が現れることもあります。早期の治療が必要な病気のため注意が必要です。
胆石症、胆のう炎、膵炎などでも、みぞおちあたりの痛みや重い感じが起こる場合があります。
胆石症とは、胆のうや胆管、ときには肝臓に石ができた状態です。石があっても全く症状のない人も多いですが、症状が現れる場合には右上腹部の強い痛みが典型的といわれています。しかしこの痛みはしばしば胃や肩甲骨、腰が痛いように感じたり、痛みではなく違和感や肩こりのような感じとして現れたりすることもあります。
胆石などが原因となり、胆のうに炎症が起こった状態が胆のう炎です。胆石症の症状に加えて発熱が現れ、高熱となることもよくあります。
膵炎はアルコールの多飲などが原因となり、膵臓やその周辺に炎症が起こったり、膵臓の細胞が破壊されたりする病気です。急性膵炎では症状が激しいことが多く、背中やみぞおちの激痛などが見られますが、慢性膵炎ではみぞおち辺りの重さや違和感、吐き気、背中の重く鈍い痛みなどが主な症状となることもあります。
胃の重さは消化器以外の病気によって起こることもあります。
十二指腸から小腸へ続いている部分は、上腸間膜動脈や腹部大動脈といった血管に挟まれています。普通、上腸間膜動脈と十二指腸の間には脂肪組織があり、圧迫を受けないようにクッションの役割を果たしています。しかし、急激な痩せなどでクッションが少なくなると上腸間膜動脈によって十二指腸が圧迫を受け、食後の胃の重さや吐き気、腹痛、腹部膨満感などの症状が現れることがあります。また、仰向けで症状が悪くなり、うつぶせで症状がよくなるという特徴があります。
十二指腸そのものに病気があるわけではないため、胃カメラなどの検査では異常がみつかりません。他の画像検査などを行うことが必要な病気です。
狭心症・心筋梗塞は心臓を取り囲んでいる冠動脈が細くなったり、詰まったりして起こる病気ですが、胃のあたりや肩など離れた部位に放散痛という痛みをもたらすこともあります。
激しい胸の痛みが典型的な症状ですが、他の部位に痛みが現れることもあります。また高齢者などでは痛みを感じにくく、違和感程度の症状になることがあるため注意が必要です。
激しい痛みや発熱などの症状があるときには急いで受診が必要ですが、それ以外にも重い感じが続く場合や、食事のたびに繰り返しているような場合にも一度受診しておきましょう。
受診科目としては内科や消化器内科が適切です。
受診の際にはいつからの症状か、他にどんな症状があるかに加えて、飲酒や喫煙の習慣があるか、脂っこいもの・辛いものをよく食べるか、強いストレスはあるか、症状が強くなるタイミングはあるか、常用薬はあるかなどを伝えるようにしましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。