陰部の発疹(女性):医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
発疹とは、赤いブツブツや水疱などの皮膚にみられる病変(病気による変化がみられる箇所)を指します。体のあらゆる部位に起こりえますが、陰部にみられることも多く、原因にはさまざまなものが考えられます。原因の中には性感染症も含まれ、ほかの人(妊娠中なら赤ちゃんにも)に移してしまうこともあります。
こういった症状がみられる場合、考えられる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
女性の陰部にみられる発疹には、物理的な刺激によるもの、アレルギーによるもの、一般ウイルスによる感染、性感染症など、さまざまな原因が考えられます。
女性の陰部に発疹が起こる病気のうち、頻度の高いものとしては主に以下があります。
何らかの物質が皮膚に触れることで炎症を起こす病気で、一般的にかぶれと呼ばれるものです。陰部においては、生理中のナプキンやタンポンのヒモによる接触、経血によるむれなどが原因に挙げられます。
原因物質が触れた部分に赤みを帯びた発疹が現れます。発疹はブツブツしたものや盛り上がったもの、水疱などさまざまで、かゆみや痛みを伴うこともあります。
膨疹という膨らみのある発疹が現れる病気です。ウイルス感染や食べ物によるアレルギー、物理的な刺激など、原因にはさまざまなものが考えられます。
発症すると強いかゆみを伴う膨疹が急激に現れます。膨疹の見た目は蚊に刺された痕に似ていて、これが1mm程度の大きさのこともあれば、地図状に広がることもあります。通常、このような膨疹は数十分から数時間以内に消失します。ただし、中には1日程度続く場合や、次々と新たな膨疹が現れる場合もあります。
毛穴の奥の毛根を包むところを毛嚢または毛包と呼び、ここに炎症が起きた病気が毛嚢炎(毛包炎)です。炎症を起こすと、毛穴に一致して赤いブツブツや膿を持った発疹が現れます。発疹は1個だけのこともあれば、複数が集まってできることもあり、押すと痛みを感じる場合もあります。
乳頭状のいぼが膣前庭から小陰唇にかけて生じるものです。見た目は性感染症のひとつである尖圭コンジローマに似ています。しかし、真珠様小丘疹は生理的変化によって生じ、人に感染することのないいぼです。
女性の陰部にみられる発疹の原因が、性感染症であることも少なくありません。発疹が起こる性感染症には以下のようなものがあります。
単純ヘルペスウイルスを原因とする性感染症です。感染から2〜10日程度の潜伏期間を経て、陰部に多数の水疱やただれが現れ、肛門や太ももにまで及ぶこともあります。発熱を伴ったり、足の付け根のリンパ節が腫れたりする場合もあります。
ヒトパピローマウイルスに感染することで起こるいぼの一種です。感染から数週間~数か月を経て、陰部や肛門周辺にイボが現れます。いぼは先の尖った乳頭状の独特な形をしていて、カリフラワー状や鶏のトサカ状とも表現されます。痛みやかゆみを伴うことはほとんどありません。
トレポネーマ・パリダムという細菌を原因とする性感染症です。性行為による感染の場合、感染後の経過時間によって症状に違いがみられ、まず、感染してから3か月の間に感染部位にコリコリとした小さな赤いしこりが現れます。そして、感染から3か月以上経過すると、手のひらや足の裏、体幹を中心に発疹がみられるようになります。
伝染性軟属腫は、一般的にみずいぼと呼ばれる病気で、陰部に発症するものを性器伝染性軟属腫といいます。伝染性軟属腫ウイルスに感染することでいぼが生じます。
体のどの部位にも発生しますが、大人が性行為によって感染した場合には外陰部や下腹部にみられます。いぼが多発して広範囲に及ぶこともあります。
頻度としては稀ですが、以下のような注意が必要な病気も原因に挙げられます。
女性の外陰部に生じる皮膚がんの一種です。淡紅色や茶褐色のシミのような発疹が現れ、多くの場合かゆみや軽い痛みを感じます。進行すると病変の一部にただれやかさぶたが生じ、硬く盛り上がった発疹に変化していきます。陰部に加え、脇の下やへそ辺りに同様の病変がみられることもあります。
皮膚や粘膜を中心に急性の炎症を反復する全身性の病気です。主な症状として口内炎、外陰部の潰瘍(えぐれた状態)、皮膚症状、目の症状が挙げられ、ほぼ100%の確率で口内炎がみられます。
皮膚症状は赤い発疹が主に足に、ニキビに似た発疹が顔や首、背中などに現れます。目の症状においては痛みや充血、まぶしさを感じたりします。
陰部の発疹はさまざまな原因によって起こりますが、一般の人が発疹を見て何が原因かを判断することは難しいものです。ほかの人にうつす可能性のある性感染症、早期治療が大切な皮膚がんのこともあるため、発疹がみられた段階で受診を検討しましょう。
発疹がひどくなっている場合や発疹がほかの部位にも及んでいる場合、口や目などほかの部位に何らかの症状が現れている場合には早めの受診がすすめられます。
受診先としては婦人科が適していますが、皮膚科でもよいでしょう。診察のときには、発疹が現れ始めた時期や部位(陰部以外にあれば)、かゆみや痛みなどの症状、体の症状、性行為歴など、できるだけ詳しく伝えましょう。
パートナーが性感染症にかかっている、日常的に不特定多数の人と性行為をしているなど、性感染症が疑われる場合にはその旨も伝えると診察・検査がスムーズになります。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。