高熱が続く:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
医療社団法人小磯診療所 理事長
磯崎 哲男 先生【監修】
私たちの体温はささいなことで上昇することがあります。そのため、発熱はよく見られる症状として軽く考えられがちです。しかし、感染症法によれば38℃以上の発熱は高熱と定義され、続く場合は思わぬ原因が背景にある可能性があります。
高熱が続く場合は次のような病気の可能性が考えられます。
病原体が感染することによって生じる次のような病気を発症すると高熱が続くことがあります。
肺に細菌やウイルスなどが感染することで炎症が生じる病気です。発症すると高熱、呼吸困難感、喘鳴、咳などの症状が現れます。
肺炎の経過や原因は多岐にわたり、高齢者では飲食物や唾液が食道ではなく気管に流れ込むことによって生じる“誤嚥性肺炎”がよく見られます。一方、若い世代の健康に問題がない方でも風邪などが悪化すると肺炎を併発することがあります。
膀胱、尿管、腎盂などに細菌やウイルスなどが侵入して炎症を引き起こす病気です。尿管結石を発症した後などに続発することもありますが、長期間寝たきりで膀胱カテーテルが挿入されているケースなどでも発症しやすいとされています。
発症すると、背中やわき腹の痛み、高熱、血尿、乏尿(尿が少ない)、倦怠感、悪寒などの症状が見られ、重症な場合には敗血症に進行することも少なくありません。
胆管や胆のうという臓器が細菌に感染することによって生じる病気です。多くは胆嚢結石、胆管結石などと合併して生じるといわれていますが、結石がなくても炎症が生じることがあります。
胆管炎・胆のう炎を発症すると、高熱のほかお腹の右上に痛みが生じ、黄疸などの症状がみられます。さらに悪化すると、敗血症などに発展することもあります。
脳や脊髄を包む髄膜に細菌やウイルスが感染して炎症を引き起こす病気です。多くは何らかの感染症にかかった後に髄膜に波及して発症しますが、頭のけがなどが原因で発症することもあります。
髄膜炎を発症すると、高熱、頭痛、吐き気・嘔吐などのほか、炎症が脳にまで及ぶとけいれんや意識障害などを引き起こすこともあります。全ての世代で発症する可能性はありますが、乳幼児では典型的な症状が見られないこともあるため注意が必要です。
体内に侵入した病原体を退治する免疫機能に異常が生じたり、免疫機能が著しく低下したりする病気により感染症にかかり高熱が続くことがあります。
免疫のはたらきに異常が生じ、自身の体の組織を攻撃してしまう“自己免疫疾患”の総称です。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ベーチェット病などさまざまな病気がありますが、なかには高熱が続くタイプのものもあります。多くは高熱とともに発疹、関節痛、筋肉痛、倦怠感、むくみなどの症状を伴いますが、これらの膠原病は悪くなったりよくなったりするのを繰り返すのが特徴です。
がんにはさまざまな種類のものがありますが、ときに高熱が続くこともあります。たとえば、白血病や悪性リンパ腫など血液中の白血球やリンパ球などの細胞ががん化する病気によって、高熱が続くことがあります。また、内臓に発生するがんは進行すると体温を上昇させる物質の産生が促されるようになるため高熱が続くことがあります。
感染性心内膜炎とは血液中に入り込んだ細菌が心臓に達し、心臓を包む心内膜などに炎症を引き起こす病気です。発症すると突然高熱が現れることもあり、倦怠感、食欲低下、体重減少などの全身症状が生じます。また進行すると心臓の弁がダメージを受け、はたらきが鈍くなるため心不全状態に陥り、息切れや動悸、息苦しさなどの症状がみられることもあります。さらに心臓内で血の塊ができやすくなるため、脳梗塞などを引き起こすことも少なくありません。
伝染性単核球症はエプスタイン・バーウイルス(EBV)に初感染することによって、発熱や喉の痛み、腫れ、リンパ節の腫れ、発疹などの症状が現れる病気です。なかでも発熱の症状はよくみられ、4〜6週間の潜伏期間のあと38℃以上の高熱が1〜2週間続くこともあります。主に感染者の唾液を介して感染する傾向があり、乳幼児期に初感染が生じた場合には症状が出にくい一方、思春期以降に発症すると症状が現れやすいという特徴があります。
発熱は日常的によく見られる症状のひとつです。しかし、38℃以上の高熱が3~4日以上続くときは思いもよらない病気が背景にある可能性もあるため注意しなければなりません。
とくに、高熱以外にも呼吸困難感や頭痛など別の症状を伴うとき、意識が朦朧としているとき、十分な水分が取れず脱水状態であると考えられるとき、体調の異変が数か月にわたって続いているときは軽く考えず病院を受診するようにしましょう。
受診の際は、いつから高熱が出ているのか、高熱のほかに症状があるのか、今まで病気を指摘されたことはあるか、などについて詳しく医師に伝えるようにしましょう。