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インタビュー

子どもが嘔吐を繰り返すなどの場合、重症のサイン? ―重大な病気を疑うとき―

子どもが嘔吐を繰り返すなどの場合、重症のサイン? ―重大な病気を疑うとき―
井上 信明 先生

国立国際医療研究センター 国際医療協力局 人材開発部研修課

井上 信明 先生

子どもの嘔吐の原因はほとんどがウイルス性の胃腸炎であり、大きな心配はいりませんが、稀にとても重大な病気が原因となっていることがあります。『子どもの嘔吐―子どもが突然吐いてしまったとき どんなサインに注意する?』では、嘔吐している子どもにおいて注意すべきサインについてお話ししました。今回は子どもの嘔吐の原因となる重症疾患について、都立小児総合医療センター救命救急科医長の井上信明先生に具体的な病気を例にしたお話をお聞きしました。

子どもが嘔吐する原因となる重大な病気は、正直に申し上げるときりがありません。それほど嘔吐は難しい症状であり、慎重な判断が必要となります。嘔吐の場合、ほとんどのお子さんは心配ないのですが、万が一見逃してしまうと深刻なダメージを負ってしまう病気が陰に隠れているのです。

以下に具体的な病名とともに、その症状をご説明します。

吐いたものが緑色になったり、激しくお腹を痛がるなどの場合は注意しなければなりません。何らかの原因で腸の通り道が塞がってしまう病気・腸閉塞の可能性があるからです(年齢によって原因は様々)。腸閉塞は時間が経つと腸が壊死してしまい、最悪の場合は命に関わることもあります。直ちに外科的な治療をしなくてはならないこともあるため、すぐに病院を受診することが必要となります。

腸重積は腸の一部が重なり合ってしまう病気で、2歳くらいまでのお子さんに多く、進行すると腸組織の壊死を起こす可能性のある深刻な病気です。10~30分間隔で非常に激しい腹痛を訴え、血便が出ることもあります。一刻を争う状態もあるため、できるだけ早く医師の診察を受けることが必要です。

嘔吐に加え、発熱と頭痛を伴う場合は髄膜炎の可能性があります。これは頭蓋内に細菌またはウイルスが侵入し、炎症を起こすことで発症します。なお、赤ちゃんの場合は頭痛を言葉で訴えることができないため、不機嫌でなきやまない、意識が悪い、ぐったりして反応が鈍い、普段と明らかに様子が違うときなどの症状がみられる場合は注意が必要です。

細菌による髄膜炎は近年ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種の普及により減少傾向にあります。なお新生児期の髄膜炎の原因菌にはB群溶連菌などが考えられます。

虫垂炎は虫垂(盲腸)に起こる炎症のことをいいます。なんらかの原因によって虫垂内で細菌が増殖し炎症を起こした状態です。

虫垂炎は、一般的にはみぞおちの違和感や嘔気などの軽い症状ではじまり、次第に右下腹部の痛みを感じるようになります。食欲が減退し、微熱が出ることもあります。腹痛が徐々に強まり、みぞおちの辺りに感じていた痛みが右下腹部に動くときは虫垂炎の可能性を強く疑いますが、典型的ではない経過をたどることもあり、慎重な対応が必要とされます。

精巣捻転は精索(腹部と精巣をつなげているひも状の器官)がねじれてしまう疾患です。精索がねじれると精巣に血液が流れなくなってしまうため、精巣が壊死してしまう可能性があります。下腹部の激痛と嘔気および嘔吐、陰嚢部の腫脹などが主症状で、早急に捻転している部分をもとに戻さないと精巣の機能が障害を受ける可能性がありますので、至急病院(一般的には泌尿器科)を受診してください。

心臓の筋肉に炎症が起こることで、不整脈心不全を引き起こす病気を心筋炎といいます。ウイルスなどの感染症や膠原病が原因となるともいわれていますが、原因がわからないこともあります。発熱や咳など、かぜと間違えてしまいがちな症状で始まることもあるため、診断が遅れてしまう危険を考慮します。嘔吐、腹痛、下痢などの症状が、心不全を起こす数日前から現れます。病気が進行するにつれてショック状態となるため、ぐったり感が続いている場合は心筋炎を疑います。とても稀ですが、見逃すと命に関わる重大な病気です。

小児に多いⅠ型糖尿病の患者さんにみられる、重篤な合併症です。

インスリンが極度に体内に不足すると、糖をエネルギーとして利用できなくなります。そうすると体はエネルギー不足になり、糖の代わりに体内に貯蔵しているたんぱく質や脂肪を分解してエネルギーを産出しようとしますが、脂肪を分解する際、ケトン体という物質も同時に発生してしまいます。このケトン体は、吐き気、嘔吐などの症状を発現させます。糖が代謝できない状態が続くと、極度な高血糖状態となり、その結果電解質や脳の機能に影響を及ぼす状態になってしまうことがあります。

嘔吐をしている患者さんが受診された場合、まず医師はご本人の見た目や、脈拍、呼吸数などのサインから、状態が良いか悪いかを見極めます。悪いと判断した場合は、すぐに状態を安定させるための処置を開始します。具体的には、酸素投与や点滴を開始し、同時に嘔吐の原因を調べるための検査を行います。よく行われるのは、血液・尿検査やレントゲン検査、超音波検査などです。

診察や検査の結果治療が必要だと判断すると、医師や看護師は至急対応しますが、同時に不安を感じておられる保護者の方たちに、丁寧に病状を説明するよう心がけています。

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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