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風疹への対策−先天性風疹症候群をなくすために自主的な風疹ワクチン接種を

風疹への対策−先天性風疹症候群をなくすために自主的な風疹ワクチン接種を
大曲 貴夫 先生

国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター センター長、AMR臨床リファレンスセンター ...

大曲 貴夫 先生

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この記事の最終更新は2019年04月09日です。

2018年から流行を続けている風疹。妊婦さんが風疹にかかると赤ちゃんが「先天性風疹症候群」という重い病気を持って生まれてくることがあります。先天性風疹症候群の赤ちゃんをゼロにするためには、風疹の免疫がない方を中心に風疹ワクチン接種を進めることが重要です。

今回は、国立国際医療研究センター病院 国立感染症センター・センター長の大曲貴夫先生に風疹についてお話を伺いました。

風疹とは、主に発熱やぶつぶつとした発疹(ほっしん)が生じる感染症です。一般的に高熱が出ることは少なく、発熱したあと、発疹が生じることが多いのが風疹の特徴です。

この症状の特徴から、「熱が出たので市販の解熱鎮痛薬を服用したら、副作用によって発疹が出た」と勘違いされることもあり、風疹にかかった自覚がない方もいらっしゃいます。

そのほかの症状として、発熱前に耳の後ろのリンパ節が腫れたりすることもあります。

風疹は、咳・くしゃみの飛沫(ひまつ)感染による感染症です。咳やくしゃみをすると、細かい水滴が口から飛び散ります。この水滴に風疹ウイルスが含まれている場合、その水滴を吸い込むことによって、風疹に感染します。

一般的には感染後、約2〜3週間の潜伏期間を経て風疹を発症し、先ほどお話ししたような症状が現れます。

寝ている赤ちゃん

通常、風疹によって合併症*が引き起こされることはほとんどありません。しかし、妊婦さんが風疹にかかると、お腹の赤ちゃんが「先天性風疹症候群」という重い合併症を持って生まれることがあります。

先天性風疹症候群の代表的な症状は、白内障**難聴心疾患などです。生まれつき視力や聴力が弱いために、成長段階において発達障害をきたすこともあります。

*合併症…ある病気が原因となって起こる別の症状

**白内障…水晶体(カメラでいうレンズ部分)が混濁することで視力の低下をきたす病気

先天性風疹症候群は、赤ちゃんの器官形成が進む妊娠初期(妊娠20週くらいまで)に、妊婦さんが風疹にかかった場合に起こりやすいといわれています。

風疹抗体検査の結果、抗体がないまたは少ないといわれた妊婦さんは、人混みを避けたり、人混みに出るときにはマスクをつけたりして、風疹にかからないようにしましょう。

先天性風疹症候群は、出生後に先天性風疹症候群を疑う症状がみられ、なおかつ赤ちゃんが風疹ウイルスに感染していることが確認された場合に診断されます。

先天性風疹症候群は、風疹が全国的に流行した2012〜2014年に計45例報告されて以降、発症報告はありませんでした。しかし2018年に再び風疹が大流行したことで、2019年1月、新たに1例の先天性風疹症候群が報告されています。

風疹対策のゴールは、先天性風疹症候群の赤ちゃんをゼロにすることです。そのためには、風疹に対する抗体がないまたは少ない方は風疹ワクチン接種を受けて、風疹の流行を防ぐ必要があります。

注射、ワクチン

風疹ワクチンは、風疹ウイルスそのものを弱毒化した(毒性を弱くした)もので、それを接種することで風疹ウイルスに対する免疫をほとんどの方が獲得することができるといわれています。

また2回接種することで、1回では免疫がつかなかった方に免疫を与えたり、接種後に徐々に免疫が少なくなっていった方の免疫を強固なものにしたりすることが可能です。そのため、風疹ワクチン接種は2回受けることが推奨されています。

しかし日本において、風疹ワクチンの定期接種を2回受ける機会があったのは、1990年(平成2年)4月2日以降に生まれた方だけです。それ以前に生まれた方は、定期接種が1回のみ、もしくは1回も受ける機会がありませんでした。

厚生労働省は、風疹対策を強化するべく、定期接種を1回も受ける機会がなかった、1962年(昭和37年)4月2日〜1979年(昭和54年)4月1日に生まれた39〜56歳(2019年3月時点)の男性に対し、2019年〜2021年度まで3年間、風疹ワクチン接種を原則無料で実施する予定です。

しかし定期接種の該当者であっても、「仕事があるため、病院に行く時間を作れない」などの理由から、風疹ワクチン接種がなかなか広まらないことも考えられます。このような方々が、定期接種を受けられるような環境をいかに作るかが、風疹対策を進めるうえでの大きな課題となるでしょう。

大曲貴夫先生

「先天性風疹症候群の赤ちゃんをゼロにする」というゴールを達成するためには、定期接種の対象者だけでなく、男女・年齢を問わず、すべての国民が風疹に対する意識を強く持つことが重要です。

これまで2回のワクチン接種を受けた記録が残っていない方は、一度病院に足を運び、風疹に対する免疫があるかどうかを調べてみてください。なかには、「過去に風疹にかかったことがあるから大丈夫」と思っている方もいらっしゃると思いますが、それらは思い込みであることがほとんどです。思い込みは捨て、一度検査を受けていただきたいと思います。

検査やワクチン接種のために時間を割いて病院に行くのは、確かに手間のかかることです。しかし、風疹の流行を防ぐためには、国民一人ひとりの協力が欠かせません。決して他人事とは思わず、風疹対策に協力していただきたいと思います。

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