厚生中央病院は、急性期機能を持つ多機能型総合病院として、目黒区地域を中心に長年にわたり地域に根差した医療を提供している伝統ある病院です。高齢化が進む一方で、若い世代も多い地域の特性に合わせ、妊娠・出産といった周産期医療にも力を入れています。
総合病院として地域を支え続けている同院の特徴や取り組みについて、病院長の河島 尚志先生にお話を伺いました。
厚生中央病院は、1959年に設立された国民健康保険組合が運営する全国土木建築国民健康保険組合の直営病院です。急性期機能を持つ多機能型総合病院として、被保険者だけでなく、目黒区や渋谷区、品川区など幅広い地域の患者さんを受け入れています。
当院は、理念として「心の通った温もりを感じる医療を目指す」、「組合被保険者ならびに地域の人々の健康と福祉に貢献する」、「病院機能の充実を図り、サービス向上のための研鑽を積む」という3つを掲げています。一般病床257床、地域包括ケア病棟45床、人間ドック18床の合計320床を運営しており(2023年現在)、地域の皆さんに安心で安全な質の高い医療を提供するべく、機能充実を目指しています。また、臨床研修指定病院として若手医師の教育も積極的に行っています。
産婦人科では、子宮体がんや子宮頸がんといった悪性腫瘍の治療や、子宮筋腫などに対する腹腔鏡下手術を得意としています。また、妊娠や出産といった周産期医療に力を入れており、2023年9月にはLDR(陣痛室、分娩室、回復室が一体型となった部屋)2室と新生児室を改装しました。さらに、2022年6月より経産婦さんを対象とした無痛分娩*を開始し、2023年4月には初産婦さんにも対象を拡大しました。
当院では産後のケアも大切にしたいと考えており、ご希望に応じて産後の入院延長や産後ケア入院(産後3か月までの休息や授乳ケアなどを目的とした入院)も可能となっています。また、産後のボディケアといったサポートも行っています。
オプショナルスクリーニング検査**とは、“新生児マススクリーニング”の対象となっていない先天性の病気について調べる有料(自費)の検査です。新生児マススクリーニングは、先天性代謝異常症など20疾患を対象に調べる検査であり、厚生労働省指導の下で各自治体が主導して行っています。この新生児マススクリーニングの対象となっている病気以外にも、早期に発見して治療を開始することで、重い障害を防いだり症状を予防したりできる病気があります。当院では、そういった病気の早期発見や治療を目指し、希望によりオプショナルスクリーニング検査を受けることが可能です。
当院はこうした取り組みを含め、安心・安全にお産に臨める環境を整えることはもちろん、お母さんと赤ちゃんにやさしい病院でありたいと考えています。
*無痛分娩とは:分娩時に硬膜外麻酔を行うことにより鎮痛を図ることを目的としています。出産の恐怖心や痛みの軽減や、早期の体力回復が期待できます。(麻酔科標榜:長澤 実佳先生)
・費用: 当院で無痛分娩を行う場合、自然分娩の料金に130,000円程度(2023年12月時点)が加算されます(内訳:分娩費用+100,000円、無痛分娩外来・検査費用+25,000円)。
・リスク、副作用など:一般的に無痛分娩では陣痛が弱くなることがあり、吸引分娩などの処置の割合が高くなるとされています。また、頻度は高くないですが、麻酔を使用するため硬膜外血腫などの合併症や、陣痛促進薬による合併症が起こる可能性もあります。
**オプショナルスクリーニング検査とは:赤ちゃんのかかとから少量の血液を採取し、新生児マススクリーニングの対象となっていない早期診断・治療が有効な病気の有無について調べる検査です。
・費用:14,000円
当院では、内科と外科が協力し合いながらスムーズに診療にあたれるよう、消化器内科と消化器・一般外科を統合した消化器病センターを設立しています。
内科は日本消化器内視鏡学会認定指導施設であり、上下部内視鏡はもちろん、EUS(超音波内視鏡)検査やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)治療も行っています。また、肝胆膵領域の患者さんも多く、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)なども行っています。
外科は365日体制で待機しており、腹腔鏡下での手術を得意としています。また、胆石や胆嚢炎をさらに低侵襲で治療できるよう、単孔式腹腔鏡下手術(SILS)なども導入しています。
整形外科は、骨折治療や人工関節手術、脊椎手術、手外科、膝の外科、骨粗鬆症の検査や治療などを得意としており、手術やリハビリテーションを中心に行っています。当院は人工関節センターも有しており、人工関節手術を開始してから30年以上という歴史があります。2022年度の人工関節置換術の件数は、股関節が64件、膝関節が42件となっています。
整形外科では、ロボット手術を行えるよう機器の導入も検討しており、地域のニーズに合わせた医療を提供できるよう努めています。
当院では、目黒区で唯一、高気圧酸素治療装置を導入しています(2023年12月時点)。高気圧酸素治療とは、大気圧よりも高い気圧の環境下で酸素を吸入することにより、病気やけがの改善を図るものです。突発性難聴や脳梗塞、腸閉塞、スポーツ外傷などのさまざまな対象疾患があり、耳鼻咽喉科ではこれまで、突発性難聴の患者さんを他院へ紹介していましたが、高気圧酸素治療装置の導入により当院での治療が可能となりました。
これらの診療科に限らず、当院は総合病院として、カテーテル治療を専門とする循環器内科、脳神経外科、メンタルヘルス科、皮膚科、小児科(アレルギー・頭痛専門外来あり)、乳腺外科、形成外科などのさまざまな診療科を備え、一人ひとりに合わせた総合的な診療にあたっています。
当院の特徴の1つとして人間ドックが挙げられます。前述のとおり、320ある病床のうち18床を人間ドックで使用しており、1日ドックや2日ドックといったさまざまなオプションをそろえています。また、健康管理センターAnnexという新しい建物にて、女性向けの各種検診も行っています。
高齢化が進む地域の医療を支えていけるよう、当院では医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士などで構成された以下6つチームを作っています。
1.認知症サポートチーム
2.緩和・リビングウィルサポートチーム
3.嚥下・栄養サポートチーム
4.低侵襲手術サポートチーム
5.骨粗鬆症サポートチーム
6.皮膚・排泄ケアサポートチーム
それぞれ、患者さんの抱える悩みや困り事に寄り添い、一人ひとりに合わせたサポートを行うチームとなっています。地域包括ケア病棟に入院中の患者さんはもちろん、院内で困り事があればご相談いただければと思います。また、退院調整を専門で行うスタッフもおり、退院時期の説明や介護保険の手続き、ケアマネジャーへの相談など、きめ細かい支援を行っています。
当院は、近隣の大学病院などと密に連携を取っており、双方向のやり取りをほぼ毎日のように行っています。また、日本赤十字社医療センターなどのhigh careな治療が可能な病院とも連携しています。さらに、目黒区を中心に医師会や近隣のクリニックとも定期的な交流を行っており、当院の医療の案内を“さんま通信”として近隣の医療機関に送らせていただいています。
当院は組合直営の病院であり、20万近くの組合員の皆さんの健康をあずかっていると同時に、総合病院として地域医療にも貢献しています。地域の特性に合わせて高齢者医療を積極的に行い、また地域の周産期医療を担うだけでなく、各科が併設する総合病院として非常に大事な役割を果てしていると自負しています。今後も地域への貢献を大切にし、周産期のサポートも手厚く行っていきたいと考えています。
また当院の一番の誇りは、医師や看護師をはじめとするスタッフが、患者さんに対してやさしい病院であることです。これからも地域の総合病院として、安心・安全で患者さんに寄り添い温もりを感じられるような医療の提供を目指していきたいと思っています。
厚生中央病院 病院長、東京医科大学 兼任教授/名誉教授
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まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。