アトピー性皮膚炎とは、皮膚の乾燥やバリア機能異常にさまざまな刺激やアレルギー反応が加わって発生すると考えられている皮膚炎です。一般に“アトピー”と呼ばれることがありますが、正式名称は“アトピー性皮膚炎”です。
かゆみを伴う慢性的な皮膚炎で、症状が軽い場合は皮膚がかさかさに乾燥するだけですが、症状が重くなると、紅斑(皮膚の赤み)や丘疹(盛り上がった湿疹)が見られるなど、皮膚の見た目の変化が多様であることが特徴です。
また、アトピー性皮膚炎は乳幼児~小児期に発症することが多く、半数程度は8~9歳頃に自然寛解する(自然に症状が落ち着く)とされています。そこでここでは、子どものアトピー性皮膚炎との向き合い方について詳しく解説します。
アトピー性皮膚炎は、遺伝的要素や環境的な要因など原因が多岐にわたる病気であり、病気そのものを完治させることは難しいことが多いです。そのため、治療の最終目標は皮膚の状態を苦にせず日常生活が送れるようになることです。具体的には症状がない、またはあっても日常生活に支障がなく薬物療法もあまり必要としない程度、または軽い症状が続くものの、急激に悪化することはまれで、悪化した場合も継続しない状態を目指します。また、治療を自己判断でやめると症状が再発することもあるため、治療は少し長い目で見て行う必要があります。
治療は主に薬物療法、悪化因子対策、スキンケアを行います。悪化因子にはダニ、ハウスダスト、ペットなど、食物アレルギー(牛乳、卵など)、汗、乾燥、ストレスなどがあり、場合によってはそれらを避けるような日常の工夫が必要になります。また、入浴などで皮膚を清潔にし、保湿剤などで保湿をすることも大切とされています。
アトピー性皮膚炎の薬物療法では、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬(タクロリムス軟膏)による外用療法が一般的です。
ステロイド外用薬には炎症を抑える効果が期待できます。
強さが5段階あるため、症状によって適切なものを選んで使用しますが、子どもの場合は、大人よりも効果が表れやすいので、ランクや使用期間に注意しながら使われます。炎症が治ったからといって急に使用を中止すると症状が悪化することがあるため、医師の指示に従ってランクや塗る回数を変えていきます。
タクロリムス軟膏は顔に使われることが多い薬で、ステロイド外用薬のミディアムクラス(下から2番目の強さ)以上の有用性があるとされています。
大人には0.1%成人用(16歳以上が対象)が処方されますが、子ども(2~15歳)の場合は0.03%小児用が処方されます。ただし、重症度が高いケースでは効果が不十分である場合があることに注意が必要です。
アトピー性皮膚炎の治療では、悪化因子への対策とスキンケアも同時に行います。医師の指示に従いながら、以下のような点に注意するとよいでしょう。
アトピー性皮膚炎の悪化因子として、ダニ、ペットなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)、汗、ストレスなどの可能性が考えられます。
ダニ対策としては、3日に1回以上部屋の換気や掃除をすること、週に1回以上寝具に掃除機をかける、または天日干しやシーツの洗濯をすることなどが挙げられます。さらに、ペットを飼っている場合は定期的に洗う、寝室には入れないなどの工夫をしてみましょう。
そのほか、皮膚に残った汗や、汗による高温多湿の環境が症状悪化の原因になることもあります。そのため、通気性が高い肌着を着る、汗をかいたら濡れタオルやシャワーで清潔にするといったことを心がけましょう。
また、ストレスは症状悪化の原因となるほか、ストレスを感じた際に引っかいてしまうことで症状が改善されていない可能性もあるため、十分な睡眠、体調管理などでストレスがたまらないように心がけるとよいでしょう。
アトピー性皮膚炎の改善のためには肌を清潔に保ち、保湿をすることも必要です。
まず、入浴時の注意点ですが、お湯の温度が高いとかゆみの原因となることがあるため、38~40℃程度がよいとされています。せっけんはよく泡立て、手で皮膚の汚れを落とします。
また、せっけんや汚れが残っていると肌への刺激となるため、十分にすすぎましょう。さらに入浴後は、乾燥防止のために早めに保湿剤を塗るとよいとされています。
アトピー性皮膚炎はよくなったり悪くなったりを繰り返す病気であるため、治療によって症状を安定させることが大切です。
そのためには、医療機関で処方される薬だけでなく、悪化因子への対策やスキンケアなど日常的なケアも重要となります。悪化因子としては、ダニやハウスダスト、ペット、汗、ストレスなどが挙げられるため、子どもの生活環境や皮膚の状態をよく観察し、ケアを心がけるとよいでしょう。気になることがあれば、かかりつけ医に相談する、専門医を紹介してもらうなどの対応を検討しましょう。
広島大学大学院 皮膚科学 教授
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