肛門の病気である痔には、大きく分けて“痔核”“痔瘻”“切れ痔”の3つがあり、それぞれ原因や症状が異なります。進行すると手術の対象になる痔もあるため、心配な症状があるときは、早めに受診して適切な診断を受けることが大切です。
本記事では、3つの痔についてそれぞれの特徴を述べるとともに、痔と間違えやすいほかの病気や、痔の診断方法について解説します。
お尻の代表的な病気である痔には、大きく分けて“痔核”“痔瘻”“切れ痔”の3つがあります。種類によって原因や症状が異なるため、それぞれに適した対処をする必要があります。
たとえば、“痔核”の多くは、お尻に力がかかることが原因で発症します。二足歩行そのものがお尻に負担をかける歩き方ですから、どのような方でも痔の原因を持っているといえます。それが症状として現れ、本人の負担になっているかどうかが、診断の基準となります。
患者さんの中には、お尻からいぼが大きく飛び出しているにもかかわらず、気にならないという方もいらっしゃいます。患者さんご本人が負担に感じていなければ、はっきりと症状が出ていても、手術を行わないことがあります。反対に、症状が少なくても患者さんが負担に感じているときは、軽い症状でも手術を行うこともあります。
ただし、患者さんがあまり負担に感じない痔であっても、放っておいてよい痔かどうかをご自身で判断することは難しいものです。気になる症状があれば、まずは医師に相談することが大切です。
肛門から何かが飛び出したり、肛門の一部がぽこっと盛り上がったりしているものを、“痔核(いぼ痔)”といいます。肛門の周囲の皮膚が伸びている状態(肛門皮垂)や、肛門の外側にできた血の塊や浮腫(外痔核)なども、いぼ痔に含まれます。
いぼ痔の中で手術を行うことがあるケースは、主に肛門の中からスポンジ状の組織が飛び出す“内痔核”といういぼ痔です。お尻の中でクッションの役割を担っている静脈叢という組織が、お尻に力がかかったり、血流が悪くなったりして、弱くなってたるみ、肛門から出てくるようになります。
痔瘻は、お尻の皮膚と腸の境目にあるくぼみに便が入り込み、肛門腺という部分に細菌感染を起こして、膿がたまる感染症です。“あな痔”とも呼ばれています。
肛門の周囲に膿がたまる“肛門周囲膿瘍”の状態が進行すると、膿を排出するために、“瘻管”と呼ばれる膿のトンネルのような管ができます。この状態を“痔瘻”と呼びます。いったんできてしまった瘻管は、膿を排出した後も体内に残るため、根本的な治療をするために手術が必要になります。
切れ痔は、肛門の皮膚部分である肛門上皮に傷がついて、痛みや出血などの症状が出る病気です。“裂肛”とも呼ばれています。便秘や下痢などの排便異常が原因で起こることが多く、便秘をしやすい女性に多く見られます。
切れ痔は、転んで膝を擦りむいたときのような状態であるため、発症してすぐに手術が必要になるというわけではありません。まずは、お尻を傷つける原因となった排便異常を知り、排便をコントロールすることが大切です。切れ痔の傷は、基本的には自然に治るものですが、薬を使っても治療が難しい難治性の切れ痔については、手術の対象になることがあります。
痔と間違えやすい皮膚の病気には、主に次のようなものがあります。
痔と間違えやすい腸の病気には、主に次のようなものがあります。
IBDや大腸がんは腸の病気ですが、お尻に症状が見られることから、最初に肛門科を受診する患者さんが多いです。
痔の診療では、初めに行う問診が重要です。症状、生活様式、食事、便の状態、排便にかかる時間や回数、これまでに受けた検査といった質問事項から、患者さんが抱えている病気についてさまざまなことが分かります。たとえば、痔核の症状をお持ちの患者さんであれば、痛みがなくて出血している場合は内痔核、痛みがあって出血している場合は外痔核など、ある程度予測することができます。これまで検査を受けたことのない患者さんについては、腸の病気の可能性を考えて、内視鏡などの検査が行われることもあります。
診察では、肛門の色や形を調べる視診を行います。外側から見ても分からない部分については、肛門鏡という筒状の器具を挿入して観察します。また、肛門の周囲に触れる触診や、肛門から指を入れて直接患部に触れる指診などを行います。
お尻の診察に抵抗のある患者さんは多いかと思いますが、お尻の状態を確認せずに診断することはできません。眼科で目を診たり、歯科で歯を診たりするのと同じように、肛門科でもお尻を診ることは必要不可欠です。
肛門エコー検査とは、超音波を発する細い器具を肛門から挿入し、内部の状態を調べる検査です。膿がたまっている様子などを画像にして観察できるため、視覚的に分かりやすい方法です。
痔瘻が疑われる場合は、基本的に肛門エコーを実施します。外痔核と痔瘻のように視診だけでは見分けることが難しい痔をしっかり見極めるため、肛門エコーを実施し、血の塊と膿のたまりを区別します。
痔の中には、症状が似ているものでも、手術が必要なものと不要なものがあります。自己判断せずに、病院で検査を受けることが大切です。
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)は、レンズのついた細い器具である内視鏡を肛門から挿入し、主に大腸や小腸の一部を観察する検査です。出血量が多い方や、お尻ではなく腸の病気の可能性が考えられる患者さんに対して行うことがあります。
お尻からの出血と腸からの出血は、外から見ただけでは違いが分かりにくい症状です。特に、指が届かないところに病気がある場合は、指診では発見できません。問診の内容にもよりますが、がんなどの腸の病気を見逃さないように、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を行ってがんなどの腸の病気ではないことを確かめてから、お尻の治療に進むこともあります。
肛門内圧検査は、お尻の筋肉である肛門括約筋のしまり具合を測定する検査です。便が漏れる方や、排便はコントロールできていても切れ痔になりやすい方などは、肛門内圧検査で、肛門括約筋の圧の測定を行っています。
また、痔瘻の手術を行う患者さんに対して手術の前後に肛門内圧検査を行い、術前術後の括約筋機能を確認することもあります。
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