疾患啓発(スポンサード)

vNOTESはどのような手術?――新たな婦人科手術の仕組みと可能性

vNOTESはどのような手術?――新たな婦人科手術の仕組みと可能性
大石 元 先生

国立国際医療センター 産婦人科 診療科長

大石 元 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

vNOTESは近年注目を集めている新たな婦人科手術の方法で、腟から鉗子やカメラを挿入して行うため腹部に傷が残らないというメリットがあります。

今回は、国立国際医療センター 院長補佐であり、産婦人科診療科長、第一婦人科医長の大石 元(おおいし はじめ)先生に、vNOTESの仕組みや適応となる婦人科疾患についてお話を伺いました。

vNOTESには、お腹に傷が残らず体への負担を抑えられるという利点があります。

当院でvNOTESを実施する際は、腟に直径9.5cm(子宮全摘術の場合)または7cm(卵巣手術の場合)のジェル状のカバーがついた筒状の器具を装着し、そこから鉗子とカメラを挿入します。カバーはやわらかな素材で、鉗子やカメラを操作しやすいつくりになっています。鉗子の先に装着した電気メスで組織を切除するため、出血が抑えられます。さらに、カメラは広い範囲を見渡せる斜視鏡*を使用します。

鉗子やカメラの操作には技術を要しますが、こうした器具類の進歩によって手術がやりやすくなっています。

*斜視鏡:先端の斜めになった部分にカメラのレンズがついている内視鏡。

MN

患者さんには内診するときと同じ体勢を取っていただき、全身麻酔下で手術を行います。子宮を摘出する際には腟の奥の前側と後ろ側を、卵巣や卵管の病変を切除するときには後ろ側を切開し、ジェル状のカバーの奥側についているリングを子宮頸部に装着します。二酸化炭素を含むガスを送り込んで腹部を膨らませ、ジェル状のカバーにある口から2本の鉗子とカメラを挿入していきます。手術中、執刀医は2本の鉗子を、もう1人の医師はカメラを操作します。

子宮と直腸の間のダグラス窩や子宮と膀胱の間の子宮膀胱窩から慎重に術部を目指します。術部に到達したら、電気メスを使って子宮や卵巣の病変を切除していきます。切除した子宮や卵巣の病変は、尿管を傷つけないよう配慮しつつ腟の中に引き込んで取り出します。

vNOTESの対象となるのは、主に子宮や卵巣、卵管の良性疾患です。ここでは、どのような婦人科疾患に適応となるか紹介します。

子宮筋腫とは、子宮の筋層に生じるこぶ状の良性腫瘍(りょうせいしゅよう)です。妊娠を希望しない方にはvNOTESで子宮全摘術が可能です。

なお、子宮を温存して筋腫だけを取る子宮筋腫核出術はvNOTESでは限界があるため、当院では基本的に開腹手術か腹腔鏡下手術で行います。

子宮腺筋症は子宮内膜に似た組織が子宮筋の中にできる病気で、薬物療法での改善が難しければ子宮全摘術を検討することが一般的です。子宮頸部異形成や子宮内膜増殖症は、がん化のリスクが高いタイプの場合には手術を検討します。妊娠のご希望も伺いつつ、もし妊娠を希望しない場合にはvNOTESによる子宮全摘術を提案します。

PIXTA
写真:PIXTA

子宮脱とは、子宮の一部分または全体が腟から外へ出てきてしまう病気です。分娩歴が関係しており、体の大きな赤ちゃんを出産された方、吸引分娩や鉗子分娩だった方などは子宮脱になりやすいと考えられています。難産だった方が年齢を重ね、骨盤底筋が徐々に緩んで子宮を支えられなくなって起こるケースがよくみられます。

子宮脱の治療法には、ロボット手術などで子宮の上半分を切って子宮頸部にメッシュを縫い付け、仙骨の靱帯に固定する方法もありますが、メッシュに関わるトラブルや感染などが懸念されます。そこで、当院では体内に異物を入れずに子宮脱を修復するNTR(ネイティブティッシュリペア)という手術をvNOTESで実施しています。

卵巣嚢腫は袋状の病変で、子宮内膜症によって卵巣内に経血がたまるチョコレート嚢胞、髪の毛などの組織がたまってできる皮様嚢腫などに分類されます。種類や大きさなどに応じて薬物療法または手術を選択します。手術が必要な場合、卵巣嚢腫だけ摘出して卵巣を温存するケースと卵巣ごと摘出するケースがあり、当院では皮様嚢腫ではvNOTESで病変のみを切除できます。

異所性妊娠の多くは卵管での妊娠です。通常は腹腔鏡下手術で妊娠部位を切除しますが、位置がある程度把握できていればvNOTESでの手術が可能です。子宮の裏側から卵管にアプローチする方法を取れば、患者さんの体への負担を抑え早い回復が見込めます。

子宮の病気があっても子宮を失うことに抵抗感がある方が多く、特に30歳代など比較的若い方では、ほかの方法を希望される傾向があります。薬物療法や偽閉経療法*、子宮内に装着する避妊具などを使って月経をコントロールすることで、子宮の負担を軽減しながら閉経を迎える方もいますが、コントロールが難しい方には子宮全摘術をご提案します。しかしながら、お一人おひとり考え方が異なるため、患者さんの意思に反して手術をおすすめすることはありません。ご希望を尊重し、リスクも考慮しながらできる限りほかの選択肢を提示できるようにしています。

中にはそれでも症状の改善がみられず、ご自身で納得して子宮全摘術を決意される方もいます。vNOTESでの摘出であれば体への負担が少ないため、手術へのハードルを下げられるのではないかと思っています。ただし、子宮筋腫核出術、帝王切開術などの手術を経験されていると癒着があるケースが多く、vNOTESではリスクが高い可能性があります。そのような方には、ご自身の体の状態を丁寧に説明したうえで、腹腔鏡下手術やロボット手術を推奨します。

なお、子宮を全摘すると月経がなくなるため、50歳前後で体調が乱れてきても更年期によるものだと気付きにくくなるかもしれません。当院では、子宮を摘出された患者さんには月経不順以外の更年期のサインについても説明し、更年期を安心して過ごせるようフォローを行っています。

*偽閉経療法:女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑制して閉経後のような状態をつくり、月経に伴う症状を抑える治療法。繰り返し行うと骨がもろくなるリスクがある。

受診について相談する
  • 国立国際医療センター 産婦人科 診療科長

    大石 元 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

「子宮筋腫」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。
実績のある医師をチェック

子宮筋腫

Icon unfold more