インタビュー

弁膜症のダヴィンチ手術

弁膜症のダヴィンチ手術
渡邊 剛 先生

ニューハート・ワタナベ国際病院 総長

渡邊 剛 先生

弁膜症は、心臓にあり血液の流れをサポートする弁が異常をきたしてしまう病気です。とくに僧帽弁は左側に位置し、重要な役割を果たしています。この僧帽弁がうまく閉じず、血液が逆流してしまう状態を僧帽弁閉鎖不全症といいます。今回は僧帽弁閉鎖不全症に対する、僧帽弁形成術のダヴィンチ手術について、ニューハート・ワタナベ国際病院総長の渡邊剛先生にお伺いしました。

心臓には4つの部屋があり、それぞれ右心房・右心室・左心房・左心室という名前がついています。血液はこれら4つの部屋を一方通行に流れていきます。一方通行の流れを維持するために、心臓の部屋と部屋の間には「弁」という組織がひとつずつ、合計4つあります。弁膜症は、その弁に障害が起き、弁の開きが悪くなったり(狭窄)うまく閉じなくなったりする(閉鎖不全)病気です。これにより、血液が流れにくくなる・血液が逆流するなどの症状が現れます。

弁膜症のうち、手術が必要となる重大な病気は「僧帽弁膜症」および「大動脈弁膜症」です。僧帽弁と大動脈弁はどちらも心臓の左側に位置しており、僧帽弁は左心房から左心室への血液の流れをサポートし、血液の逆流が起こらないようにします。大動脈弁は左心室から大動脈に渡る血液の流れをサポートしています。

弁膜症の手術にあたっては、弁を取り換える(弁置換術)か、自分の弁を残してその弁を治す(弁形成)かのどちらかを適応することになります。弁を取り換える手術のほうは手術法が確立された手法であり、安全性が高いです。一方、弁形成術は手術の難易度が高く、熟練した医師でないとミスなく施行するのは容易ではありません。

僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)とは、左心室から全身に送り出されるはずの血液の一部が、僧帽弁がしっかりと閉じないために左心房へ逆流してしまっている状態です。血液の一部が逆流することによって体に送られる血液の絶対量が減少し、負担が大きくなった左心房は拡張し、胸部を圧迫します。

僧帽弁閉鎖不全症に対するダヴィンチ手術では、内視鏡を使い、数カ所の穴を開けるだけで手術を行うことができます。手術でつく傷が小さいため、術後の回復も非常に早く、約3~7日で退院することが可能です。

ダヴィンチ手術ではカメラによって術野を拡大させ、3次元画像で正確に術野を確保することができます。その結果、高度な技術を必要とする弁形成も容易に施すことができるようになりました。正確に手術が施せるため、術後の弁の機能も良好です。
ニューハート・ワタナベ国際病院では僧帽弁形成術の8割を弁形成の形で行っており、そのうち約4分の1をダヴィンチ手術適応としています。

僧帽弁形成術は、対象となる弁が大きいため、冠動脈バイパス手術よりも視野が確保しやすく細かい作業を必要としません。しかし、そのぶん失敗してしまうと術後の経過は良好ではありません。
ダヴィンチで僧帽弁形成術を行うと、術野が非常にきれいに見えるうえ、傷口も小さく患者さんの回復も早いです。ですから私は、今後もダヴィンチによる僧帽弁形成術を推進していきたいと考えています。

ダヴィンチによる心臓手術は、現在ではまだ自由診療(保険適応外)となりますが、ダヴィンチによる僧帽弁形成術は、やがて僧帽弁閉鎖不全症の治療として第一選択になるでしょう。それだけダヴィンチによる手術は、正確な弁形成を可能にしています。いずれは正中切開などの従来の手術に取って代わる日が訪れるでしょう。

ニューハート・ワタナベ国際病院のHPはこちら

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