院長インタビュー

お母さんと赤ちゃんのため、質の高い周産期医療を提供する愛育病院

お母さんと赤ちゃんのため、質の高い周産期医療を提供する愛育病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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東京都港区芝浦にある愛育病院は、1938年に母子愛育会によって開設されました。周産期医療に特化した病院でありながら、出産前後のメンタルヘルスケアから産婦人科・小児科の救急外来まで、母子の健康を広範に見守っている同院の役割や今後について、院長である百枝 幹雄(ももえだ みきお)先生に伺いました。

当院は、昭和天皇が上皇陛下の御出産を記念して創立した母子愛育会により、小児科の医院として1938年に開設されました。当時は乳幼児やお母さんの分娩後の死亡率が高く、今と比べると状態の悪い環境にありました。そうした状況を改善させることが当院の役割で、1940年には産科部門を設置して、当初の目的だった小児と妊産婦の疾病の診療、助産、乳幼児の保育を始めました。その後、診療内容を充実させ、1999年には東京都の総合周産期母子医療センター*に指定されています。

患者さんは、港区を中心に周辺の中央区や千代田区の方が多く、小児科については品川区の方などが多く来院されます。日本では少子化が大きな問題になっていますが、港区や品川区などは小学校の数が不足するほど子どもの数が増えています。また、核家族化や働く女性の増加、出産年齢の上昇など、社会情勢も変化しており、それに伴って抱える課題や医療ニーズが変化しています。そうした変化に対応するため、当院では提供する医療サービスをさらに充実させているところです。

*総合周産期母子医療センター:母体胎児集中治療室を含む産科病棟および新生児集中治療管理室を備えた医療機関。母体や新生児の搬送を受け入れる体制を整えており、母体の救命救急やリスクの高い妊娠に対する医療、高度な新生児医療などを担う。

当院の最大の特徴は、周産期医療に特化した医療を提供していることです。産科の緊急手術やハイリスク妊娠・分娩、早産による低出生体重児の管理、出生後の新生児外科手術など、難しい症例についても産婦人科と小児科、新生児科が密に連携して対応しています。

また、当院の設備とスタッフを地域の診療所の医師の皆さんに開放して、共同で病院を利用する“セミオープンシステム”を導入しているのも特徴の1つです。通常の妊婦健診は近くの診療所で、妊娠34~36週以降は当院に受診いただき、分娩は入院していただいたうえで当院の医師が扱います。このシステムを利用することでそれぞれの特性を生かすことができ、分娩の安全性と妊産婦さんの利便性が高まるのではないかと思います。

そのほか、同グループの愛育クリニックや愛育産後ケア子育てステーションとも連携しています。また、愛育産後ケア子育てステーションに直接入所される場合の送迎サービスなど、シームレスにケアができるように体制を整えています。

最近では無痛分娩を選択する妊婦さんが増えており、当院では帝王切開の妊婦さんを除くと約8割を占めています。無痛分娩とは麻酔を使って痛みを緩和しながら行う分娩のことで、当院では産科に特化した麻酔科医*が、24時間365日、陣痛が始まった時点ですぐに分娩を始められる体制を整えています。こうした体制が取れるのは、当院が周産期医療に特化した医療機関だからです。ほかの病気も並行して診ている総合病院では、大きな手術に麻酔科医が時間を割かれてしまうため、当院のような体制を取ることが難しいケースがあるのではないでしょうか。

一方、妊婦さんの中には自然分娩を希望される方もいらっしゃることから、当院では自然分娩を追求するための“ナチュラルバースコース”も用意しています。妊娠15週以降から主に助産師が妊婦健診を行い、時間をかけて一人ひとりの妊婦さんに合わせたアドバイスやケアを行っています。自然分娩は事前にしっかりと準備をすれば、痛みを大きく超える充実感を感じることができるかと思います。希望される方はお気軽にご相談ください。

*麻酔科専門医:新原先生、伯水先生ほか

港区や品川区など、当院のエリア周辺は子どもの数が増えています。そこで地域の医療ニーズに合わせ、小児救命救急診療の拠点として小児科の救急を受け入れています。当院での受診歴を問わず、お子さんの急病に24時間365日対応しています。

新型コロナウイルス感染症が拡大した際には、もともとあった隔離病棟を活用し、新型コロナウイルスに感染したお子さんを多数受け入れました。また、通常の小児科外来ではプライマリケア(初期診療)的な診療に加え、周辺のクリニックから入院治療が必要なお子さんを受け入れて診療をするなど、地域の医療機関と連携してお子さんの健康を守っています。

当院が開設された当初は乳幼児やお母さんの分娩後の死亡率が高く、いかにして死亡率を引き下げるかということが、周産期医療に関わる医療施設の課題でした。しかし、今は提供できる医療体制・環境が大幅に改善し、日本の周産期医療は世界でトップクラスになりました。それに伴って、当院が解決しなければならない課題の中身が大きく変化しています。

当院が解決を目指すものの1つとして、女性のメンタルヘルスがあります。現在は核家族化が進む一方、女性の社会進出が進んだこともあり、出産後も早めに仕事復帰しなければならないお母さんが増えました。こうしたストレスから産後うつになる方も増え、医療の面でサポートが必要になっています。また、児童虐待やお母さんの愛着形成に問題があるケースもあり、妊娠中からサポートしなければなりません。そこで、当院では周産期メンタルヘルス外来を開設し、専門の医師が丁寧にお話を伺い、その方にあった適切なサポートを提供しています。

出産年齢の高齢化も大きな課題です。特に高齢出産は妊娠率の低下につながることから、今後は不妊治療などのニーズが高まっていくことが予想されます。

それに合わせて、女性特有の病気への対処方法も考えなければなりません。たとえば、子宮筋腫の治療では外科的な処置をしてから不妊治療に取りかかったほうがよいケースもあります。当院では院内の連携を強化するとともに、内視鏡手術センターを開設するなど、子宮筋腫や子宮内膜症など女性特有の病気を診療する体制を強化しています。医療を通して妊娠前~更年期、さらには閉経後まで、女性のトータルライフをサポートしていきます。

近年は、女性の社会進出が進んだことから出産後も働くお母さんが増えています。そのため、当院では働く女性に寄り添った医療を提供するため、母乳保育を希望するお母さんのサポートはもちろん、母乳保育が難しいと感じるお母さんもサポートしています。

また、当院は分娩だけでなくウィメンズヘルスや女性ドックなどにも注力し、女性のライフステージを思春期からケアすることを目指しています。今後も周産期から子育て期、さらには更年期まで、女性をきめ細やかに支援してまいりますので、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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