院長インタビュー

「醫霊」の理念で郡山市の医療を支える、星総合病院

「醫霊」の理念で郡山市の医療を支える、星総合病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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2025年に創立100周年を迎える星総合病院は、福島県郡山市東部の中核的な医療を担う総合病院です。多岐に渡るチーム医療を展開したり、低侵襲(体に負担が少ない)な治療ができるロボットを積極的に導入するなど、患者さんに寄り添う医療を展開する同院の役割や今後の展望について、病院長である渡辺 直彦(わたなべ なおひこ)先生にお話を伺いました。

創始者である星一郎先生が1925年(大正14年)に開設した当院は、以来約100年に渡って郡山の地で医療を提供してきました。2011年の東日本大震災では、当時東北本線の西側にあった旧病院が被災し、急遽プレハブの病棟を建てて医療を提供したこともありました。その後2013年には東北本線の東側に新築移転し、2019年には台風の被害を受けましたが、今も変わらずこの郡山で真摯に患者さんに向き合い、各患者さんに合わせた治療を行っています。

当院の強みは、急性期の患者さんを総合的に診ることができる環境が整っていることです。当院では年間で救急車の搬送台数が4,453台(2023年)となっており、多くの救急患者さんがいらっしゃっています。患者さんの多くはご高齢の方で、救急で運ばれるきっかけとなった病気以外にも複数の病気を併発されている方がたくさんいらっしゃいます。そのような患者さんに対し当院は、33の診療科を備える総合病院である強みを生かし、シームレスな治療を行うことができます。

また、患者さんの体の負担が少ない低侵襲治療を積極的に取り入れていることも当院の強みと言えるでしょう。当院の低侵襲な治療を象徴するのが、外科手術で活躍している内視鏡手術支援ロボット“ダヴィンチ”です。ロボットを使った手術は従来の手術比べて患者さんの体に開ける創が小さく、また手ブレがないためより精度の高い手術ができます。それにより患者さんの回復も早くなり、退院も早くなるため、メリットの大きな手術と言えるでしょう。当院では泌尿器科や消化器外科で、保険適用となる手術にダヴィンチを用いています。

さらに、整形外科では2022年に“メイコー”という手術支援ロボットを導入済みです。メイコーは人工関節置換術にて、従来の手術の1/5の誤差角度で人工関節を設置することができ、患者さんにとっては違和感の軽減や早い回復を期待できます。すでにメイコーによる症例数は200件を超えており、今後も増えていくでしょう。

当院は、患者さんによりよい医療を提供するため、積極的に新しい技術や機器を導入していることも特徴といえます。すでに述べたロボットもその一例ですが、もう1つ挙げるとすれば“ハイブリッド手術室”です。

ハイブリッド手術室とは、手術要のベッドとX線撮影装置を組み合わせた高機能な手術室のことで、この手術室では手術中に解像度が高い3Dの画像を見ることができ、外科的な手術と内科的な血管カテーテル治療を同時に行うことが可能となっています。ハイブリッド手術室を使った手術の例としては、ご高齢の方に多い大動脈弁狭窄症に対する”TAVI“や、大動脈瘤の治療に対する“ステントグラフト内挿術”などがあり、どちらも当院では心臓血管外科と循環器内科が共同で手術を行っています。

当院では、各診療科に優秀な医師が揃っています。

内科系では、伝統があり県内でも非常に多くの患者さんを集めている循環器内科や、当院でもっとも患者さんが多い診療科である消化器内科を始め、各診療科が優秀なスタッフを揃え、患者さんに対する診療を行っています。循環器の木島幹博先生は、当院の心臓カテーテル治療をリードし続けており、県外からも患者さんがいらっしゃる先生です。また、アレルギーの専門家である小児科の佐久間弘子先生は県内での講演活動にも熱心に取り組んでいます。

外科系でも優秀な先生が多く、たとえば乳腺外科の野水整先生は東北地方で大変多くの症例数を持っていることで有名です。他にも、心臓血管外科で緊急手術を一手に引き受けている高橋昌一先生、泌尿器科でのダヴィンチによる手術を積極的に行っている亀岡浩先生、整形外科で日進月歩のリウマチ医療を進めている遠藤康二郎先生、股関節・人工股関節センター長としてメイコーによる手術を行っている青田恵郎先生など、福島県や東北地方、あるいは各学会で名を知られた先生が揃っています。

ほかにも、精神科、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科など、すべての診療科に信頼できる先生がおり、患者さんを紹介していただく地域の先生方や患者さんとそのご家族から、昔から変わらぬ信頼を寄せていただいています。

我々は自分たちのみならず、他の医療機関との連携によってより良い医療を提供しています。

すでに当院は精神科や心療内科をもつ星ヶ丘病院のほか、たむら市民病院や三春町立三春病院の指定管理者にもなっており、これらの病院との強力な連携のもと、急性期から回復期、慢性期までの医療をスムーズに行うことが可能です。

さらに当院は、一次脳卒中センター(PSC)として地域の医療機関や救急隊からの要請に対して24時間365日、一刻を争う脳卒中の治療を受け入れることができる施設となっていますが、2024年4月からは福島医科大と連携し、より迅速に、よりよい治療を行える体制を作ることができています。

このような連携を進めていき、地域に住んでいる方がより質の高い医療を受けられるよう、今後も取り組んでいきたいと思います。

当院が近年注力していることとして、医療課題をチームで解決する“チーム医療”があります。当院のチーム医療としては感染対策チーム、褥瘡対策チームなどによるものなどがありますが、当院ならではの取り組みとして“ハートサポートチーム”を紹介させてください。

たとえば心不全になられた患者さんは、その後薬を中断してしまったり、塩分の取りすぎといった理由から再度心不全になったりして、再入院される方が多くいらっしゃいます。全国的に心不全の再入院率は約30%と言われていますが、当院では、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、社会福祉士といった多職種によるハートサポートチームを立ち上げ、この再入院率を下げる取り組みを始めました結果、当院での再入院率は22-23%と低く抑えることができるようになりました。

具体的な施策としては、患者さん一人ひとりの状況に合わせた対応をチームで検討し、生活習慣や栄養、服薬の指導を行ったり、心臓リハビリテーションを適切に受けていただくようにしています。

このような成果は当院だけで出せることではなく、かかりつけの先生や在宅での介護の方といった、地域の関係各位のご協力の賜物でもあります。この場を借りて感謝を申し上げるとともに、今後も“人生会議”とも呼ばれるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)で患者さんの希望する医療を提供する際の連携など、地域全体で進めるチーム医療を積極的に進めて行きたいと考えています。

当院の理念は“醫霊(いれい)”です。これは創始者の星一郎先生が作った語で、醫は「医」の旧字になります。この言葉には、「なくなった方をも癒やしたい」という意味が込められています。

我々が行っている医療はすべて醫霊を念頭に置いており、それが患者さんに寄り添った医療、地域全体を考えた医療につながっています。当院の星北斗理事長は近年、これをさらに進め、より地域と深くつながるためにこども事業を開始しました。その結果、小児難聴言語外来を立ち上げたり、認可保育園を開設したりと、当院は郡山の未来を作るこどもたちとそのご家族の支援を進めています。また、院内に併設している講堂で「キラリ☆ふれあい広場」という健康講座や認知症カフェを毎週実施しております。こちらはどなたでも参加できますので、お気軽にお越しください。

これからも我々は地域の皆さんのために、さまざまな取り組みを充実させてまいります。引き続きよろしくお願いいたします。

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