手のひらがかゆい:医師が考える原因と対処法|症状辞典
聖マリアンナ医科大学 皮膚科 教授
門野 岳史 先生【監修】
手のひらには汗腺が多く発達し、皮脂腺がありません。このため、手のひらは湿りやすいものの皮脂が分泌されないため、物を滑らずに掴んだり持ち上げたりすることができます。
手のひらは日常の動作で常に使用される部位のため、摩擦や乾燥、外力などのダメージを受けてさまざまな症状が起こりやすく、かゆみを生じるケースも少なくありません。
このような症状がみられた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。
手のひらのかゆみの多くは生活習慣によって引き起こされていることがあります。主な原因とそれぞれの対処法は次の通りです。
手のひらは皮脂腺がないため、ほかの部位よりも乾燥しやすくなります。特に、冬場など空気が乾燥する季節は乾燥がひどくなることが多く、かゆみの原因になることがあります。
ハンドクリームなどのケア用品は保湿効果の高いものを選び、手の甲だけでなく、手のひらにも使用するようにしましょう。また、外出時には手袋をすることでも効果が期待できます。
手のひらは日常的な家事や仕事などで、洗剤や薬液の皮膚に刺激を与える物質が触れやすい部位です。このため、炎症を起こしてかゆみを生じたり、手湿疹を引き起したりすることがあります。
原因となる刺激物の使用を中止することがよいですが、難しい場合にはゴム手袋やビニール手袋を着用して刺激物に触れるようにしましょう。また、水分で手のひらが濡れた場合は、そのままにせず、こまめに拭き取るようにしましょう。
手のひらは汗や汚れが溜まりやすく、比較的不衛生になりやすい部位です。手のひらが不衛生な状態が続くと、皮膚に刺激が生じてかゆみを引き起こすことがあります。
手の衛生状態を維持するためだけでなく、感染症を防ぐためにも手はこまめに洗うように心がけましょう。また、洗浄後はしっかり水分を拭き取ることが大切です。
日常生活上の対処法を講じても症状がよくならない場合は、何らかの病気が潜んでいる可能性があります。早期から治療を始めることが望ましい場合もあるため、軽く考えずに早めに病院を受診するようにしましょう。
その際は、どのような症状が現れているのか見極め、それぞれに適した診療科を受診するようにしましょう。
手のひらは、以下のような病気が原因でかゆみを引き起こすことがあります。
手のひらにはさまざまな病気が生じる可能性がありますが、その中にはかゆみを引き起こすものもあります。かゆみの原因となる手のひらの病気には、以下のようなものが挙げられます。
洗剤などの薬液やアレルゲンに長期間触れることで、手のひらや手の甲に湿疹が生じる病気です。主婦や料理人、美容師など、水を使う機会の多い人が発症しやすいとされています。湿疹はかゆみや灼熱感を伴います。悪化すると、皮疹の破裂や皮膚にびらん(ただれ)を形成し、痛みや出血を生じることも少なくありません。
手のひらや足の裏に水疱(水ぶくれ)が多発する病気で、非常に強いかゆみを伴うのが特徴です。汗や洗剤、金属などの刺激が発症の引き金になると考えられています。悪化すると水疱が破裂して細菌感染を生じ、手のひらの痛みや熱感、発熱などの症状を生じることもあります。
手のひらや足の裏に水疱や膿疱(内部に膿が溜まった水疱)が多発し、かゆみや痛みなどを生じる病気です。爪の下や周辺に発症すると、爪の変形や脱落を引き起こすこともあります。
原因はさまざまであり、扁桃炎や虫歯、喫煙などが発症に関与していると考えられています。また、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すことも特徴のひとつです。
いわゆる、水虫と呼ばれる病気が手のひらに生じるものです。かゆみは強くありませんが、手のひらの皮膚が厚くなります。また、広い範囲で角質層が剥がれかかった状態となり、カサカサとした粉をふきやすくなることが特徴です。
手のひらのかゆみは、以下のような全身に生じる病気によって引き起こされることがあります。
肝臓の機能が低下すると、古くなった血液を分解する際につくられるビリルビンの処理ができなくなり、体内に過剰なビリルビンが溜まった状態となります。皮膚の黄染(黄疸)や倦怠感、発熱などの症状を引き起こし、手のひらや脛などに強いかゆみを生じることがあります。
子どもに流行する夏風邪の一種であり、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどに感染することで発症します。発熱や咽頭痛などの症状とともに、手のひらや足の裏、口の中に小さな皮疹が多発することが特徴です。皮疹は、かゆみや痛みを伴うことがあります。
汗の分泌量が過剰になる病気です。特に脇や手のひらの汗が多量になることが多く、皮膚を刺激してかゆみを引き起こすことがあります。ストレスや緊張感が高まったときに汗の量が増えることが特徴です。
手のひらは汗などが溜まりやすく、さまざまな刺激を受けることでかゆみが生じやすい部位です。このため、多少のかゆみが生じたとしても気にする人は少ないでしょう。しかし、中には思わぬ病気が潜んでいることもあるため注意が必要です。
特に、手のひらのかゆみとともに皮疹や表皮に変化などが見られる場合、発熱などの全身症状を伴う場合、皮膚が黄色っぽくなってかゆみが生じた場合などは、早めに病院を受診するようにしましょう。
受診する診療科は皮膚科がよいですが、肝機能障害や手足口病をはじめとする感染症が原因と考えられる場合には、内科や小児科などで診察してもらうことも可能です。
受診の際には、いつからかゆみが生じたのか、かゆみの程度、かゆみ以外の症状や現在患っている病気の有無などを詳しく医師に説明しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。