顔がかゆい:医師が考える原因と対処法|症状辞典

顔がかゆい

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • まぶたや唇の腫れ、息苦しさ、うまく声が出ない、腹痛、嘔吐、などの症状がある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 赤み、かゆみ、粉ふき、しこり、痛み、ヒリヒリした刺激感などがある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 保湿などですぐに改善する

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

顔は常に外気にさらされる部分であることから、肌トラブルが起きやすく、日常的にかゆみが生じることは比較的多いといえるでしょう。しかし、病気が原因となっている場合もあります。

  • ここ最近、顔の皮膚がカサカサするようになって、かゆみも出てきた
  • 顔の皮膚には特に異常がないのに、やけにかゆい
  • ある化粧品を使った後にかゆみとヒリヒリ感が出た

こういった場合、何が原因でかゆみが起こっているのでしょうか。

顔のかゆみを引き起こす病気は、主に以下のようなものが挙げられます。

皮脂欠乏症・老人性乾皮症

皮脂量や角質層の水分量の不足などによって皮膚が乾燥した状態を皮脂欠乏症、加齢に伴って皮膚が乾燥した状態を老人性乾皮症といいます。

主な症状はかゆみ鱗屑(りんせつ)(銀白色で皮膚に粉がふいたような状態)で、()くなどして悪化すると強いかゆみや赤み、湿疹などが伴うようになります。

接触皮膚炎

接触皮膚炎には一次刺激性とアレルギー性があります。

一次刺激性接触皮膚炎とは、刺激物質が肌に接触すること生じる、また誰にでも生じうる皮膚炎のことをいいます。強い酸・アルカリといった化学物質、毛虫の毛、昆虫の毒、金属など、原因となるものは多岐に渡り、多くは触れた部分にのみ症状が現れます。

一方、アレルギー性接触皮膚炎は、アレルギー物質に対して免疫反応を獲得した一部の方に生じます。初めて使用したものには生じませんが、使用しているうちに皮膚炎が生じます。

接触皮膚炎では湿疹が生じ、炎症反応によって赤みやかゆみ、痛みを伴うこともあります。

脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎とは、頭皮や顔、胸、背中、脇の下、股などの毛の生える部分に生じる慢性の皮膚炎を指し、マラセチアという真菌が発症に関与していると考えられています。

主な症状は炎症による赤みとかゆみで、皮膚がカサカサして細かく剥がれ落ちる状態になることも少なくありません。

顔であれば眉毛や眉間の周囲、鼻の周囲、耳の内側・後ろによく生じます。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹がよくなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気のことです。

乳児期(生後~1歳)では頭・顔、幼少時期(~小学生くらい)では首回り・肘の内側・膝の裏、思春期以降では顔・首など、年齢によって症状が現れやすい部位が異なります。

湿疹の種類は、赤く盛り上がる湿疹、ジクジクとした水分の多い湿疹、イボ状のしこりのような湿疹などさまざまで、掻くことによって皮膚が厚く硬くなる場合もあります。

皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)

皮膚掻痒症とは、かゆみの原因となる発疹がみられないにもかかわらず強いかゆみが生じる病態のことです。

ほぼ全身にかゆみが生じるものを汎発性皮膚掻痒症、限られた部位にかゆみが生じるものを限局性皮膚掻痒症といい、顔だけにかゆみが現れることもしばしばあります。

症状はかゆみだけですが、掻くことで二次的に湿疹が生じたり、皮膚が厚く硬くなったりすることもあります。

蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹とは、皮膚の一部に膨疹(ぼうしん)(赤く盛り上がる発疹)が一過性に現れ、跡形もなく消失する病気を指します。

急に膨疹を発症するのが特徴で、見た目は蚊に刺された痕に似ています。1cmほどの大きさの膨疹がポツポツと現れ、地図状に広がることもあります。

膨疹に強いかゆみを伴うのが一般的ですが、チクチクとしたかゆみに似た感じ、焼けるような感じを伴う場合もあります。

虫刺症(ちゅうししょう)

虫刺症とは、いわゆる「虫刺され」のことです。蚊やアブ、ブヨ、ダニ、蜂などの虫に刺されることで腫れが生じ、虫の種類によっては痛みやかゆみが伴います。

日常的によく虫に刺されるものですが、蚊では日本脳炎デング熱、ダニではツツガムシ病やリケッチア、重症性血小板減少症などの感染症を起こすこともあります。

また、ハチでは急速に呼吸困難や意識消失、血圧低下などが生じるアナフィラキシーショックに陥って、命を落とすケースも珍しくありません。

顔のかゆみが長く続く場合、日に日に悪化している場合、かゆみ以外に湿疹などの皮膚症状が伴う場合には、一度病院を受診することを検討しましょう。湿疹などで見た目を気にするせいでストレスがかかっているような場合にも受診するのがよいでしょう。

顔のかゆみが主な症状であれば、皮膚科への受診が適しています。受診時には、かゆみが出始めた時期、かゆみが出たキッカケ、皮膚疾患の既往歴などを医師に伝えましょう。

病気以外にも日常生活が原因となって、かゆみが起こっている場合もあります。原因としては主に以下が挙げられます。

洗顔をしすぎると皮脂や角質が必要以上に剥がれ落ちてしまい、乾燥して肌のバリア機能が低下し、かゆみやヒリヒリ感などの症状が出やすくなります。

また、洗顔後のそそぎが不十分で使用した石鹸カスが肌に残ることも、肌トラブルの原因になる場合があります。

正しい洗顔の方法

洗顔の準備として、まずは顔を十分に濡らします。そして洗顔料を手の平で泡立て、きめ細かな泡ができたらそれをクッションにし、肌を優しく包み込むように洗顔して汚れを落とします。最後にぬるま湯で洗顔料をしっかりと落とし、柔らかいタオルで優しく水気を拭き取ります。

洗顔の回数は多くても一日2回、洗顔は優しく短時間で終わらせるようにするのがポイントです。

洗顔をしない、化粧を落とさない、保湿をしないなど、スキンケア不足もかゆみなどの皮膚トラブルの原因になります。

正しいスキンケアの方法

洗顔後は肌が乾燥した状態になっているため、すぐに化粧水や乳液などを塗って保湿するようにしましょう。また、冷暖房を使用する際に直接風に当たらないようにすること、加湿器を使用することも大切です。

また、バランスのよい食事を心がける、ビタミンAが含まれる食品を取る、水分を多めに摂取するなど、飲食に関しても気を配るようにしましょう。

化粧品にはさまざまな成分が含まれていますが、その成分が肌に合わない場合にも、かゆみなどの肌トラブルを引き起こす場合があります。

また、皮膚が乾燥しているときなどには、刺激に対して敏感になるために、いつも使用している化粧品でもかゆみなどの症状が生じることもあります。

化粧品選びと使用上の注意点

どの化粧品が肌に合うかは使ってみないと分からない場合も多いですが、まずはある程度信頼できるメーカーの低刺激の化粧品を選び、使用してかゆみなどの異常が出ないか確認しましょう。

保管に際しては直射日光の当たる場所や高温多湿の場所、極端に温度の低い場所を避け、開封後はできるだけ早く使い切るようにしましょう。

また、使用後にかゆみなどの異常が生じた場合には使用を中止し、肌の調子が悪いときは使用を避けるようにしましょう。

上で挙げたような日常生活上の対策をとってもよくならないときには、病院への受診を考えましょう。思いもよらぬ原因が潜んでいることもあります。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。